今月21日米国の中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)は、0.75%幅の利上げを決めた。米国の物価高が収まる兆しがみえず、FRBは景気の減速を招く恐れがあっても、インフレの抑え込みを引き続き優先する方針だそうだ。
利上げとインフレ抑制の関係は直感的に分かりにくいが、利上げは投資を控えさせ金の動きを鈍化させ景気を冷え込ませ値上げを抑えると理解すれば良いのであろうか。
米国をはじめ欧州各国は金利を巡り動きが激しい。日本で物価上昇が激しいのは、米国の例からは金利がほぼゼロであるからであるが、ロシアのウクライナ侵攻の影響だと言う。もし、戦争が終了したならば、物価上昇が収まるのであろうか。そんなに簡単な話では無さそうだ。異次元金融緩和により市中には金が溢れており、国の借金は1千兆円を越える等の異常状態のため、物価が安定するとは考えられない。
米国に限らず日本でも最近物価の上昇は著しいが、日銀は今月20~21日に開かれた金融政策決定会議で大規模金融緩和を続行すると決めた。理由は、賃金の上昇を伴わない物価上昇は悪い上昇だとし、金融緩和を止めたら更に景気が悪化するからだそうだ。ゼロ金利政策を止めると、国債が暴落すると共に、中小企業の資金繰りが悪化し倒産が続出するとの恐ろしい予測もあり、日銀は怖くて実施出来ないが本音とのことだ。
異次元金融緩和のお陰で大企業の内部留保資金が増加したため、これに課税するとか、従業員の給与に振り向けるとの政策があってよさそうだ。岸田首相の新しい資本主義に大きな期待はあったが、最近の首相の言動からは全くの期待はずれであり、支持率の低下は当然である。
日銀が金融緩和を続ければ、日米の金利差が広がり、円安がいっそう進む可能性が強まる。東京外国為替市場は、アメリカが大幅な利上げを続けるという見方から円安が加速し、円相場は、1ドル=145円台後半まで下落した。これは24年ぶりの円安水準だとのことだ。22日、政府は慌てて為替介入を実施し、5円近く円高にふれるなど一時的な効果が現れた。ただ、政府が保有するドルには限りがあり、介入は何度も出来ないとの指摘や、日銀が金融緩和を続ける限り、アメリカとの金利差は一層広がるため円安の是正は難しいといった見方が支配的だ。
政府の為替介入は24年前の1998年に実施されたが、当時日本はバブル崩壊で日本経済は金融危機の最中であった。山一証券などの経営破たんが相次ぎ、市場では金融システムに対する不安から円安ドル高が進行していたのだ。政府・日銀は、円安に歯止めをかけるため、市場介入に踏み切ったが円安の流れは止まらなかった。市場介入はこのときを最後に実施されておらず、久々の介入だった。
従って今回市場介入に踏み切ったと言うことは、現在の円安は24年前の金融危機に匹敵す経済危機と政府は考えているようだが、経済を取り巻く環境は当時と全く異なるだろう。経済素人には支配要因が多すぎて何が何だか分からない状態だが、どうも経済通であっても今後の行方は分からないようだ。2022.09.24(犬賀 大好ー849)