世界の新型コロナウイルスの感染拡大は収まっておらず、ワクチンの開発競争は一段と激しくなっている。そんな中、中国は感染拡大を世界に先駆けて収束させ、しかもワクチン開発を成功させたと世界に発信している。
中国の感染者数は、3月の8.5万人程度から半年間余りほとんど変わっていないが、中国政府の見事な対応に感心すると言うより、逆に不自然で何か細工があると疑心暗鬼になる。これによらず、中国政府の一方的な発表は常に眉に唾をつけて聞く必要があると身構える。
兎も角中国の感染者数そのものは日本を始めとする外国には直接影響しない。しかし、今後中国製ワクチンが他国で使用されるようになり、その安全性に問題がを起きた場合、中国政府はどのように対処するであろうか興味津々である。
さて、ウォール・ストリート・ジャーナルは8月28日、中国の企業が開発中の新型コロナウイルス用ワクチンの大規模な治験を完了する前に複数の国で緊急承認を得るための協議を行っていると報じた。中国は開発競争に先んじようと、第3段階の臨床試験前に、軍事使用を承認し、しかも複数の外国の国にも、使用を承認するように協議をし始めたとのことだ。
中国製品はとかく問題が多いと言われながらも、感染者数が多いブラジル、インドネシアやインド等は、少しでも早くワクチンの入手を焦っており、中国ワクチンに限らず、各国の開発中ワクチンの臨床試験場となっているようだ。
9月9日、ブラジル・サンパウロ州のドリア知事は中国企業のシノバック・バイオテックが開発した新型コロナウイルス用ワクチンの第3段階臨床試験で有望な結果が示されたと明らかにした。早ければ12月にもブラジル国民が接種できるようになるかもしれないと述べたそうだ。
一方、英国アストラゼネカが開発したワクチンの第3段階臨床試験において、英国で被験者に想定外の症状が出たことを受け一時中断したそうだ。同社の臨床試験はブラジルでも実施されており、ブラジルにおける臨床試験には5000人が参加して問題なく進んでいたにもかかわらず、サンパウロなどでのワクチン接種は一時停止となったそうだ。
このように、臨床試験が細心の注意の下行われて居れば良いが、中国の場合ブラジルにおける臨床試験は開発メーカが担当していても後ろには政府が控えているため、情報公開が常に公平に行われているとは信じがたい。ブラジル当局も国内にウイルスが蔓延している状況であり、多少の副作用は目を瞑るだろう。
中国の習近平国家主席は9月8日の式典で、新型コロナウイルス感染症に対する貢献者を表彰し、中国の経済の回復力や、ウイルス抑制で共産党が果たした役割を称賛した。この勢いで中国製ワクチンが世界で席巻することを狙っている筈だ。中国製ワクチン投与で多少の犠牲が出たところで、大勢に効き目があったとなれば、大勝利と宣伝するだろう。
欧米の製薬会社は堅実に一歩づつ慎重に開発すると思うが、習近平主席は多少の犠牲を覚悟で突っ走るに違いない。トランプ大統領も恐らくこの中国の手法を採用したいと内心焦っているに違いない。2020.09.19(犬賀 大好-636)
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