政府が昨年12月に閣議決定した来年度予算案は一般会計の総額で102.7兆円と昨年度を1.2兆円上回って過去最大となった。本年度の予算総額が100兆円を超えた時にはついに大台を超えたと驚きがあったが、今回はまたかと驚きは半減した。慣れとは恐ろしいものだ。
さて肝心の歳入は税収が最も多く、19年度当初予算比1.6%増の63.5兆円を見込むが、税収だけでは賄いきれず赤字国債も発行する。税収の内訳は消費税を10%に引き上げた結果2.3兆円の増収予定で計21.7兆円、所得税は2.0%減の19.5兆円、法人税は6.2%減の12兆円の予想であるが、税収の前提となる20年度の政府経済見通しは国内総生産(GDP)の実質成長率1.4%と、民間エコノミスト予想実質0.5%を大幅に上回り、相変わらず能天気である。
日経新聞の統計では2018年度の実質GDP成長率は0.7%、2019年度は0.5%とのことで、何処から1.4%が出てくるのであろうか。単につじつま合わせの数値であろうが、首相官邸関係者の中には中国の経済が低迷したまま、国内は五輪後の落ち込みも懸念される、と解説する常識人もいるようでちょっとは安心できる。
歳出は社会保障費約36兆円で全体の35%だ。少子高齢化社会の真っただ中であり、高齢者対策費は黙っていても当面この額は増え続けるであろう。少子化対応では安倍政権の人気取りの目玉であり、低所得者世帯の高等教育の負担軽減、保育の受け皿整備、児童虐待の防止対策等、時代を反映した手当てが目を引く。
子供を社会全体で育てるとの理念はもっともであるが、大学入試の共通試験のように理念が先行して具体的な施策が伴わないことにならないだろうかと心配だ。更に予算執行にあたり”桜を見る会”同様に予算はあってなきが如しの無駄使い等のいい加減さも予想される。
さて、歳入において税収からの不足分を補うために今回も赤字国債を発行する。新規国債発行は32.6兆円で、これで国債発行残高は997.9兆円となるそうだ。この累積した借金分には当然利子等を払う必要があり、その額が23.3兆円となるようだ。何と新規発行の7割が過去のつけの為に費やされ、残りの3割しか有効に使用できず、自転車操業状態だ。
安倍首相は12月19日、歳出・歳入両面での改革努力を継続した結果、「来年度予算も経済再生と財政健全化両立する予算とすることができた」と胸を張る。確かに赤字国債の発行額が10年連続で減っているとはいえ、歳入の3割を新規国債発行で補い、債務残高が膨れ上がっており、どこが財政健全化達成であろうか。
財政改革はどこ吹く風の予算の大判振る舞いも現代貨幣理論(MMT)に悪乗りしているのであろうが、MMTは確立した理論では無く日本はMMTの単なる実験場であることを忘れてはならない。
今年は東京五輪の年だ。猛暑が懸念されるが約1ヶ月間の話だ。それより五輪後の経済落ち込みが懸念される。1964年の東京五輪後の経済立て直しは赤字国債の発行で凌いで来たが、60年後にはおおよそ1000兆円にまでなり、これ以上赤字国債発行は続けられないだろう。
黒田日銀総裁の異次元緩和でGDPの格別な上昇変化はなく、国内に金だけが溢れてインフレの下地が出来上がっており、五輪後に始まる日本の将来が危ぶまれる。2020.01.01(犬賀 大好-562)
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