日本は少子高齢化が激しく、人口は2008年の1億2,808万人をピークに減少に転じており、2060年には総人口が9000万人を割り込み、高齢化率は40%近い水準になると推計されている。一方で、東京への一極集中、中でも若年層の人口集中が進んでおり、地方は限界集落は言うに及ばず地方の都市であっても消滅すると囁かれる。
このような状況を改善すべく、菅首相の今年1月の施政方針演説の中で農業を成長産業として”地方への人の流れをつくる”と語ったが、この言葉は初めてではない。2014年の第2次安倍内閣発足時に、東京一極集中に歯止めをかけ地方を活性化させることを目的に政府が”地域創生”というスローガンを掲げ、その中で、”地方への新しいひとの流れをつくる”等のキャッチフレーズを掲げたのだ。
菅首相の施政方針では未だに地方への人の流れが実現しない為再度掲げた格好だが、的を絞っている点でこれまでとは少々違う。すなわち、我が国の農産品は牛肉やいちごをはじめアジアを中心に諸外国で大変人気がある故、農産品の輸出額を、2025年2兆円、2030年5兆円の目標を達成するべく、産地を支援するとしている。
これはこれで大変結構であるが、東京一極集中の弊害に対する対策は進んでいない。東日本大震災から10年近くが経ち、自然災害の怖さがどんどん忘れ去られようとしている。東京直下型地震は今後30年以内に発生する確率は70%と言われ、また富士山も最後の噴火から約300年経過しており、いつ噴火してもおかしくはない状況にあるそうだ。
そこで安倍内閣は2015年中央省庁の地方移転を打ち出し、道府県が政府機関の誘致に名乗りを上げた。文化庁の京都移転、消費者庁の徳島移転、総務省統計局の和歌山移転等候補に挙がったが、その後の進展は見るも無残である。
文化庁が京都に移転する時期が当初予定していたのは今年2021年度であったが、移転先となる京都府警本部本館の改修工事と新庁舎建設が遅れ、完成は早くても2022年と見込まれるそうだ。消費者庁の徳島県移転は見送られ、代わりに常設の調査研究拠点を設置したことでお茶を濁したようだ。統計局の和歌山移転は話題にもなっていない。
中央省庁の地方移転は官僚の抵抗に合い、絵に描いた餅に終わった格好である。菅首相の人事に対する辣腕は有名であるが、影響力の強い総務省でも力が及ばなかったほど、集団的抵抗が強かったのであろう。
目下、コロナ騒動でテレワーク、リモートワークの働き方が注目され、片や菅首相がデジタル庁を押し進めており、地方への人の流れが現実となりそうな感じもするが、人の生活は仕事だけではないため、東京一極集中はますます進みそうな感じもする。
また、東日本大震災の際の東電福島第1原発事故の責任が当時の東電幹部に問われた。その訴訟において事故を予測できたかが焦点であったが、万が一首都圏が大自然災害を受けた場合、予測はされても責任を誰も取らないであろう。菅首相よここで強いリーダシップを発揮して欲しい。
2021.02.24(犬賀 大好ー680)
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