菅首相の今年始めの施政方針演説において2050年地球温暖化効果ガス排出実質ゼロ宣言をしたが、その具体化案に関しては触れなかった。さて、経産省の2019エネルギー白書によれば、日本の電源構成は2016年から2030年までに再生可能エネルギーの利用を16%から22~24%と増加、原子力も3%から20~22%と増加を予定し、石炭火力発電は35%から26%と減少を目指している。
この白書の最終目標である2030年から実質ゼロとする2050年まで20年もあるので、現時点では両者間に矛盾する所はないが、化石燃料発電が全体の2/3を占めている現状を見ると、2030年目標の実現でさえ困難であると懸念される。
実質ゼロ作戦には自然エネルギーの活用が分かり易いが、自然の不安定さをカバーする方策が確立されておらず、その点原子力発電が有望であり、菅首相も安全最優先で原子力政策を進め、安定的なエネルギー供給を確立するとしている。
しかし、原発事業に対する国民の不信感が依然として強い。その不信感の原因は、・東日本大震災時の原発事故の後始末が出来ていない、・原発事故の責任の所在が不明、・核のゴミの処分法が未だ決められない、・核燃料サイクルの破綻に対する反省や今後の方針が不明、等であろう。
これらは、不信感の直接の原因であるが、最近の国会における政府の答弁に対する不信感も追い打ちをかける。口では丁寧に説明すると言ってはいるが、少しも納得できる説明を聞かされていないからだ。
これらの不信材料を放って置いて、原発再開の動きだけは活発である。運転開始から40年を超える関西電力の高浜原子力発電所1号機と2号機について、地元の福井県高浜町は2月1日、再稼働に同意することを表明し、今後は福井県の同意が焦点となるそうだ。
福井県は同意の判断の前提として、原発から出る使用済み核燃料の搬出先となる”中間貯蔵施設”の候補地を県外に示すよう求めているが、これまで関西電力は具体的な候補地を示すことが出来ないでいる。これは問題を先送りしてきた国の責任でもあり、更にその基には国に対する国民の不信感がある。
また、東京電力は柏崎刈羽原発7号機で、安全対策などの工事を今年1月12日終了したと発表した。6月には営業運転に入る計画を示しているが、実際に7号機を再稼働するためには、福井県同様に地元自治体の同意が必要で再稼働の具体的な見通しは立っていないようだ。
さらにここに来て同原発で不祥事が相次いでいるそうだ。社員による中央制御室への不正入室や、終了したと発表した安全対策工事の一部未完了が発覚する等、社員の気の緩みが噴出し、地元の不信感を招いている。
原発関係者は、”お金をかけているし、安全審査も進んでいる。動かさないままにすることは出来ない”、と相変わらず経済最優先で国民の意識変化を感じ取っていない。2021.02.27(犬賀 大好ー681)
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