国連環境計画(UNEP)は11月26日、地球の気温上昇を産業革命から1.5℃以内に抑えるには、温暖化ガスの排出量を2020年から30年の間に前年比で年7.6%減らす必要があるとの報告書を公表した。そして各国が現在掲げる目標では3.2度上昇すると警告し第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)を前に各国に目標の引き上げを促していたが、結果的には逆の引下げの方向になってしまった。
世界の年平均気温は、この100 年あたり 0.85℃の割合で上昇し、日本では、1.1℃の割合で上昇しているのだそうだ。しかもこの傾向は年々加速されているとの見方が主流だ。
僅か1.1℃の平均値の上昇であるが、平均気温の上昇は気候の大変動を招き、今年も日本に大災害をもたらした。特に今年は台風15号、19号等の自然災害で大きな被害を被り、地球温暖化は暴走を始めたと思われ、今更手を打ったところでこのような大災害は毎年やって来ると懸念されるが、何も手を打たなければ更に大きな被害を被ることになろう。
12月11日、COP25は閣僚級会合を開き、そこで小泉環境相は日本は日本なりに努力をしていることをアピールをした。ただ、石炭火力発電の廃止など脱炭素に向けた具体策や現状の温暖化ガス削減目標の上積みも見送った。
16歳のスウェーデン人の環境保護活動家のグレタさんは、「政治家や企業家たちは、ほとんど何もしていないのに、ずるがしこい説明と想像力豊かなPRで、本当の行動をしていると見せかけている」、と事ある毎に言っている。
日本では、二酸化炭素を排出する石炭火力発電所の建設計画が現在も10基以上ある。そのうえ、途上国へ石炭火力発電所の輸出を行っていることで国際的な批判を受けており、環境派を自任する小泉氏にも言いたいことは沢山あるだろうが、グレタさんの指摘通りになってしまった。
しかし、小泉大臣も安倍内閣の一員であるため、政府内の調整がギリギリまで行われていたとの話であるが、どのような話し合いか全く漏れてこない。恐らく経済面での他省とのすり合わせであろう。
先月の国連気候行動サミットの時の共同記者会見で、「気候変動問題に取り組むことはクールでセクシー」との発言がかなりの反響を呼び、COP25でどのような具体策が提案されるか注目の的であったが、肩透かしを食らった。
炭酸ガスの排出量は現状中国がダントツ1位であるが、グレタさんの言動や国際会議の席での中国批判はほとんど聞かれない。温暖化対策は経済面では足を引っ張る方向であり、中国に限らず排出量の多い国は世界の経済をけん引している国であるところにジレンマがある。
グレタさんは先月、米ニューヨークで開かれた国連気候行動サミットで、各国首脳は気候変動問題について行動を起こしていないと非難した。豊かな国は公平性のために、排出ゼロを素早く達成し、貧しい国がそれを達成するのを手伝う必要があるのだとの主張は全くの正論だ。
現状の経済的な豊かさを享受するか、将来の子供たちの為に多少の我慢を強いるか、大人たちは問われているが、安倍政権に限らずどの国の政権も概して経済最優先だ。
地球温暖化で日本は既に莫大な経済的被害を被っており対策は喫緊の課題ではあるが、対策は経済的な後退を伴い、小泉大臣の言うように温暖化対策をセクシーにできるなどと思ったらとんでもない話だ。2019.12.18(犬賀 大好-558)
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