日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

異次元金融緩和は止めるに止められない

2017年09月23日 11時24分50秒 | 日々雑感
 安倍首相の突然の解散宣言には驚いた。自民党の選挙公約の素案に上げられた項目の一つにアベノミクスの総仕上げがあるようだ。アベノミクスの一番の目玉は異次元緩和であろう。

 政府と日銀の異次元緩和の目的は景気好循環の実現であった。銀行の保有する国債を日銀が買い取り、市場に現金を大量に流通させ、企業活動を活発化させ、従業員の所得を増やし、消費を増やし、更に企業活動を活発化させる、との筋書きであった。

 その好循環を表す指標が物価上昇率であるとして、物価上昇率2%を目標に進めてきた。消費が増えれば、供給より需要が増し、諸物価が値上がりする筈であるとの読みである。また、同時に国の借金1000兆円越を懸念し、財政健全化を約束した政府と日銀の共同声明は4年半たっても実現できていない。物価上昇率2%の達成時期は何度か先延ばしにされ、2020年目標の財政健全化も先延ばしされた。

 また、ちょうど1年前、物価2%の実現のためには大胆な変更が必要だと判断し、緩和の枠組みをこれまでの量重視から金利重視へと大きくかじを切った。日銀は利回りを指定して国債を買い入れる新たな国債買い入れに乗りだし、10年物国債利回りを0%程度に誘導する政策を採用したのだ。

 また、株価指数連動型上場投資信託(ETF)の年間買い入れペースを、6兆円とほぼ倍増させることを決めた。2017年3月末時点で、日銀のETF保有額は1年前と比べて1.8倍の約16兆円に達した。現在、「量」、「質」、「金利」の3次元で金融緩和を驀進させている。

 この異次元緩和のお蔭で、失業率や有効求人倍率はバブル期以来の水準になり、企業は潤い、税収が増えたと評価する経済学者やエコニミストは結構いる。しかし、問題は負の遺産、すなわち緩和政策の副作用だ。これらの問題が何事も無く解消されれば、異次元緩和は成功であったと始めて評価されるべきである。

 さて、一方では日銀の異次元緩和等の副作用の懸念が次第に大きくなってきているようだ。日銀が銀行から買い取った国債などの資産が巨額になり、将来の金利上昇局面で日銀の財務が悪化する可能性や、ETFを買うことによる株式市場のゆがみである。

 日銀が国債を買えなくなる限界に達すると流動性が極度に下がり、少しの売り買いで金利が乱高下する局面になるのだそうだ。そうなると為替や株に打撃を与え、金融市場の大混乱を引き起こす恐れがあるそうだ。このあたりの経済の因果関係はよく理解できないが、今でも民間銀行の国際保有率が低下し、国債市場は閑古鳥が鳴いていると聞けば、恐ろしいことが待ち受けている感もする。

 しかし、今金融緩和を止めると、それはそれで恐ろしいことになりそうである。某エコノミストは物価上昇率が未達だからと言って緩和を弱めると金利上昇となり、経済は悪化すると予想する。日銀が民間銀行に払う利息が増え赤字となる心配、更に国の財政が悪化するとのことである。

 そこで、緩和策を更に続ければ、賃金上昇が加速し、物価上昇は必ず起こる、と主張する。名目GDPを2020年までに600兆円とすることを政府と日銀の共同目標にすべきと主張する。これほどの金融緩和をしており、2000年~2016年度の名目GDPは、500兆円~540兆円の間、これを600兆円するとまだ夢を見ているのだ。

 市場に必要以上のお金を流通させるのは物の価値を相対的に下げることであり、当然インフレ基調となる。これまで物価上昇率2%が達成できなかったのは、高齢化と人口減による消費の減少、流通革命による経済の効率化、企業の内部留保の増大等、様々な要因があったが、それらはいずれ限界が訪れ、物価上昇率2%は達成されるであろうが、膨大な負の遺産は残る。

 異次元緩和は麻薬と同じだ。麻薬に酔いしれている人は大勢いる。麻薬の効き目が悪くなるとより一層効果の高い麻薬に手を出し、ますます麻薬から抜け出せなくなる。麻薬から抜け出すのは容易でない。2017.09.23(犬賀 大好-375)

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