日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

温室効果ガス削減でも原子力発電は勢いを取り戻せない

2020年12月23日 08時55分48秒 | 日々雑感
 菅首相は、2050年までに温暖化ガスを実質ゼロにする目標を宣言した。我が国の経団連も、政府が目指すこの目標に向けて、革新技術の開発・普及に産学官の総力を挙げるべきと指摘しており、全く同感であるが、中身を聞くと首を傾げる面もある。

 すなわち、再生可能エネルギーへの重点支援はもっともであるが、原子力発電に関しては2030年までに新型炉の建設に着手すること等も掲げており、これまでの核燃料サイクルの腐れ縁から抜け出せない状況となっていることを感じさせる。温暖化ガス実質ゼロでも世界の流れは脱原発であるが、日本は核燃料サイクルの破綻に直面して、その後の振舞いに右往左往しているのが現状だ。

 青森県六ケ所村の再処理工場の建設がその最たるものだ。この工場は全国の原発で使い終わった使用済核燃料からプルトニウムとウランを取り出して再利用する為の施設だ。核燃料サイクルの主要な施設として、1993年4月に着工し、1997年の完成予定だったが,トラブルが相次ぎ24回も延期され、未完のまま現在に至っている。

 2006年に試験運転が始まったが配管から高レベル廃液が漏れるなどのトラブルが続き、対応に追われている間に2011年東日本大震災が発生、再処理工場は一度も本格稼働できないまま、安全面を考慮した新基準で再設計を迫られていた。

 ようやく今年7月、原子力規制委員会が新規制基準に適合すると了承したため、同工場を運営する日本原燃は2021年度上期までに完成させ稼働させたい意向だが、例え順調に稼働が出来たとしても核燃料サイクルが破綻した今となっては、取り出したプルトニウムの行き先が無いのだ。そうかと言って、この工場を中止するには余りにもこれまでの投資額が大き過ぎ、後に引けないのだ。行くも地獄、戻るも地獄とはこのことだ。

 一方大手電力会社でつくる電気事業連合会が、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを原発で再利用するプルサーマル発電について、導入目標数を、2030年度までに少なくとも12基へと、従来の目標16~18基を下方修正した新たな計画案をまとめた。これは、電力需要動向等の分析結果からではなく、上述の再処理工場で生産されるプルトニウムを消費するのに必要な原発の数なのだそうだ。泥縄の最たるものであろう。しかも、プルサーマルは現在4基が稼働しているだけで、新たな稼働は地元の反対が強く全く見通せないようだ。

 また、同電気事業連合会は、原発の使用済み核燃料を一時保管する”リサイクル燃料貯蔵”の施設について、原発を有する各社による共同利用を検討し始めたようだ。これは、使用済み核燃料の一時退避場所を電力各社が独自で建設するのが困難であるため共同利用を可能とするものであるが、実現は地元の反対等で簡単ではない。

 そこでは、現時点で最長50年間の一時保管を前提としているが、その後の行き先が無くなれば最終保管場所に転用されることは容易に想像される。この点でも地元むつ市の反対は大きいのであろう。経団連も、原発新型炉の建設を提言する前に破綻した核燃料サイクルの安らかな終息法、あればの話であるが、提言すべきであろう。2020.12.23(犬賀 大好-663)


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