米国の債務残高が昨年1月末時点で30兆ドルに達したことが明らかになった。日本円に換算すれば約4200兆円となり、日本の約1200兆円に比べてその額の大きさに驚く。しかし、その大きさは名目GDPの約1.3倍の規模であり、日本の約2.6倍からすれば驚くに値しない。
今年5月頃、米国政府債務が31兆4,000億ドルの法定上限に達し、議会で上限の引き上げや適用停止を決めなければ、政府が債務不履行(デフォルト)に陥ると、マスコミは大騒ぎであった。しかし、バイデン米大統領は6月3日、米政府の債務上限法の適用を2025年1月まで停止する”財政責任法”に署名し、米国債が史上初めてデフォルトに陥る事態は回避された。
大統領が署名に至るまでには米議会の承認が必要であり、与党民主党と野党共和党の激しい論争があったようであるが、果てしなく借金を増やし続ける日本においてこのような上限を巡る論争は聞いた事が無い。この問題は財政健全化に関連するが、2025年度以降の中長期的な経済財政の枠組みについては、2024年度に改めて検証すると骨太の方針で示されている。これは問題先送り以外の何物でもなく、何をどうしてよいか分からない八方塞がり状態に陥っているのだ。
岸田首相は政権発足当時、新しい資本主義と称し法人税率や所得税率等の引き上げに触れていたが、途中で有耶無耶となってしまった。バイデン政権も発足当初は同様な税の引き上げに触れていたが、同様にどこかに消えてしまったようだ。税率は経済に直結するため引き上げが難しいと思われるが、それより選挙に及ぼす国民の反発を恐れているからであろう。
米国では加えて、連邦準備制度理事会(FRB)がそれまでの歴史的低水準に抑えられていた金融緩和策を高インフレ等の理由により中止した為、国債等の金利上昇で利払い費の増加を通じて債務残高が膨らみ、それがまた利払い費を増加させるという悪循環に陥る可能性が懸念される。
日本はインフレ進行中に拘わらず低金利政策を続けているが、米国と同じ懸念があり金利を上げられない状態に陥っているのだろう。黒田前日銀総裁に代わる新しい植田総裁は学者出身の理論派だそうだ。そもそも経済学は学問と称してはいるが、経済は理論通りには行かない複雑さがある。前総裁の異次元金融緩和を軟着陸させることを新総裁に期待しているが、心許ない。
物価高騰、景気減速リスク、さらに銀行不安に直面している米国金融市場に、仮に米国政府がひとたびデフォルトに陥れば、世界の金融市場を大きく揺るがす事態となることは必至である。日本の財政状態は米国より酷い状況であるが、日本の経済が世界に及ぼす影響は米国ほど大きくは無いだろう。日本が経済的に破綻した場合、世界は日本を支援してくれるであろうか。2023.07.12(犬賀 大好ー929)
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