日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

秋風が吹き始めた銀行

2017年11月11日 09時00分00秒 | 日々雑感
 メガバンク3行がいよいよ大リストラ時代に突入するのだそうだ。みずほ銀行は、今後約10年間で、全従業員の約3割である1.9万人分程度の業務量を減らす方向で検討、三菱東京UFJ銀行では今後10年で全従業員の1/3にあたる9500人分の業務量を減らす予定、三井住友銀行では2020年度までに4000人分の業務量を減らす予定だという。人員削減ではなく、業務量の削減と曖昧な表現しているところは組合対策であろうが、定年退職だけの自然減で間に合うのであろうか。

 長年就職希望のトップを占めてきたメガバンクにも秋風が吹き始めて来た、いや冬の時代に入ったのかも知れない。この原因は、直接的には政府と日銀が押し進める異次元金融緩和の影響との説明であるが、30~40年前からの自助努力の欠乏体質が災いしていると感ずる。

 これまでの異次元緩和により、銀行には運転資金は十分あるが、有望な融資先が無いとのことだ。日本全体として新しい産業が興りにくい環境にあるのかも知れないが、銀行自身の新しい融資先の開拓努力が無かったことも事実であろう。

 お客様が融資を求めて銀行に頭を下げに来るのが常識であり、銀行員は机に座り交通整理をしていればよい、との小説は数多ある。銀行は長らく殿様商売であり、自ら新しい企業を開拓する必要は無かった。新しい融資先を開拓するためには、様々な知識が必要であるが、それらを有する人材を育てていなかったのだ。

 人材不足の典型例を新銀行東京に見ることが出来る。この銀行は、資金調達に悩む中小企業の救済を理念として、石原慎太郎元都知事の音頭で2004年4月に設立された。審査の甘さや野放図な融資により膨大な不良債権を抱えることになり、2008年4月には東京都が400億円の追加出資を行ったが、来年5月には、東京都民銀行とともに八千代銀行に吸収合併され解散予定だと言われている。

 現在の銀行には、業務量の削減と業務の効率化が必要とされる訳であるが、サービスの電子化は歴史的には結構古い。1971年は各銀行支店が中央コンピュータとつながり、オンライン化を利用した個人向けサービスがスタートした。最近の銀行窓口は中年の女性がほとんどであるが、当時は若い女性ばかりであり、銀行に行く楽しみでもあった。独身時代に、これからはお金の出し入れはATMでお願いしますと言われ、これで銀行に来る楽しみが無くなったと、窓口でぼやいたことを思い出す。

 昨年5月には、りそなホールディングスは3年後を目途に、住宅ローンや口座開設などの手続きで印鑑を押すことを原則やめるとの報道があった。印鑑使用の原則廃止を含めて業務全体を見直すことで、今後4年間に事務作業を2割ほど減らせると見込んでいるようだ。

 印鑑の利用そのものが形骸化しつつあることに加え、生体認証など、本人確認のためのITが進化したことも背景にあるそうだ。ようやく、気が付いたのかと思っていたが、印鑑の使用は長い歴史があるためか廃止は簡単では無いようだ。

 2017年も終わりになろうとしているのに、最近某銀行での送金手続きで押印を要求された。更に振り込みは、コンビニで行った方が便利であると銀行窓口で教えられたのには驚いた。確かに、送金手続きはコンビニの方がはるかに簡単であり、銀行は客離れを指を加えて見ているだけの様子だ。それともこれは業務削減の一環であろうか。

 宅配の受け取りにもサインで済む等、民間企業は印鑑なしの取り組みが広がりつつあるが、お役所は銀行以上に印鑑至上主義であろう。百円ショップでも入手できる赤い印鑑が今なお有効とは世界の7不思議の一つに入れてもおかしくないだろう。

 最近人工知能の発達が著しく、人間が行う仕事の約半分が機械に奪われると予測されている。銀行における人間が携わる業務もどんどん縮小されていくであろう。しかし、競争の無いお役所仕事は、この予測は当てはまらないだろう。
2017.11.11(犬賀 大好ー389)

日本の大学の魅力の低下

2017年11月08日 11時09分10秒 | 日々雑感
 Nature 2017年3月の特別企画冊子「Nature Index 2017 Japan」は、日本の近年の研究実績に関する情報を紹介している。Nature Indexとは、世界トップクラスの研究成果を国・機関別に特長付けするデータベースである。

 これによると、日本の科学成果発表の水準は低下しており、ここ10年間で他の科学先進国に後れを取っているとのことである。 例えばNature Indexに収録されている高品質の科学論文に占める日本からの論文の割合は、2012年から2016年にかけて6%下落しておるのだそうだ。中国の急速な成長の影響により、米国などの科学先進国が占める割合は相対的に低下している面もあるが、日本からの論文発表は、絶対数も減少している、とのことだ。

 政府主導の新たな取り組みによって、この低下傾向を逆転させることができなければ、科学の世界におけるエリートとしての座を追われることになりかねないと、警告を発している。政府主導の取り組みとは、大学への援助資金の増額が第1歩であろう。

 日本の大学の独立法人化により、国からの資金が減額され、自分の研究費は自分で稼ぐよう、すなわち研究資金を企業から得るよう方向付けされた。このため企業に即役に立つ研究が取り上げられる傾向が強く、2,3年で成果が出るよう、リスクを避ける研究となっている。これはこれで地域の活性化等に役立っているとの話であるが、国際的に評価される研究とはなり難い。

 また東大での修士から博士課程の進学率が2001年は42%だったのが2016年には26%まで低下したそうだ。この背景は若手研究者の雇用の不安定化である。大学教員のうち任期付きが東大全体の6割超にも上がるそうだ。3~5年の任期が終了すれば次の就職先を探さなければならず、奥深い研究などしておられない。これも政府からの資金削減の結果だ。

 しかし、原因は資金削減だけではない。大学を取り巻く社会環境も変化している。日本経済は平成に入ってバブル経済の絶頂を迎え、その破綻後、大手金融機関や大手企業の経営破綻が相次ぎ、失われた20年といわれる長期停滞に苦しんでいる。また、技術の変化の流れが速く、グローバル化と相まって、シャープや東芝等の一流企業もかっての輝きは失われている。高校、大学で一生懸命勉強して一流企業に就職できたとしても、それが報いられるとは限らない。

 すなわち日本の大学に入る魅力が薄れてきているのだ。また魅力の低下が水準低下につながる悪循環となっている。最近トップクラスの学生は日本の大学に見切りをつけ海外の大学に留学する希望が、確実に増えているらしい。欧米のトップクラスの大学は入学すること自体も難しいが、また学費も高いため学生であることを維持することも困難であるようだ。しかし、敢えて挑戦する若者が増えているようであり、このような若者が将来の日本を背負っていくことになるのであろう。

 日本の大学が日本の若者に見放されているのは自業自得であるが、海外の若者にも見放されつつあるのは何とも嘆かわしいことだ。記憶は定かではないが、東南アジアの某国の若者が、日本の大学に行っても何の役にも立たないと言っていたことが今でも印象に残っている。

 有能な若者が、日本の大学より海外の大学に進学するのは、まだ全体から見ればごく少数であろう。OECD等の2014年統計による日本人の海外留学者数を集計したところ、53,197人(対前年度比2,153人減)であり、2014年をピークに減少傾向にあるようだ。この点若者の内向き志向が嘆かれているが、一方では挑戦的な若者がいることは喜ばしい。

 一口に留学と言っても、大学・大学院留学やMBA留学などのアカデミックなものから、美容や映画などの専門技術を学ぶもの、語学の習得を目的とするものがあり、多種多様だ。

 独立行政法人日本学生支援機構の調査によると、日本人学生の海外留学状況は、2015年度で、84,456人(対前年度比3,237人増)となり、増加傾向にあるとのことだ。

 OECDの調査はアカデミックな留学を対象としているのに対し、支援機構の調査は専門技術や語学留学も対象にしているのであろう。この方面での若者の増加は頼もしいが、裏を返せば、日本の大学を卒業するだけでは、何の役に立たないことを物語っているのであろう。2017.11.08(犬賀 大好-388)

法人税の減収と内部留保の拡大

2017年11月04日 09時29分49秒 | 日々雑感
 2011年度の法人実効税率は約40%であり各国に比べ高いため、2012年9月に返り咲いた安倍首相は20%台に引き下げることを、成長戦略の目玉に据えた。法人税の引き下げにより、企業活動が活発になり、特に海外競争力が増し、企業が儲かり、その結果税収が増えるとの成長戦略である。この引下げは、2012年度から開始され、その効果はその後3年間は発揮された。

 財務省による2016年度の決算概要では、税収総額は55兆4686億円で7年ぶりに前年を下回ったとのことである。税収総額が前年割れした主な要因は法人税収の低迷だそうだ。すなわち法人税収は4.6%減の10兆3289億円と2年連続で減少したそうだ。前年度から約5千億円減少し、2012年度以来の低水準にとどまったようだ。

 アベノミクスの影響を受けた円安で企業業績が回復し、法人税収は2014年度まで増加が続いてきた。しかし、翌年度に減少に転じ、昨年度も自動車や金融など大企業からの税収が伸び悩んだ。政府は今年度の法人税収を12兆3910億円と見込むがハードルは高いとのことだ。安倍政権が取り組んできた成長頼みの税収増は息切れしつつあるが、今回の総選挙での大勝利を背景に、二匹目の泥鰌、異次元緩和を引き続き推し進めるようである。

 法人税収は景気回復の初期に増加しやすいそうだ。現在企業業績は庶民には実感の無いアベノミクス景気で悪くないが、日本企業のグローバル化で海外子会社が利益をあげても現地で納税するため、国内の税収に反映されにくくなっている側面もあるとの事である。従ってこれまでと同じ異次元緩和を続けたところで、税収の増加となるのであろうか。

 安倍政権は消費税10%化を2019年10月から実施することを前提にその使用目的変更を今回の総選挙の焦点の一つに据えた。てっきり10%化の再三延期を言い出すのではないかと心配していたが、野党各党が先手を打って凍結等と主張したため、言い出せなかったのではないかと思われる。

 政府としたら税収が落ち込む中、消費税の10%化による税収の増加は願うところであろう。しかし、増税により消費そのものが低下したのでは税収は増えないと、これまでの増税見送りの際の言い訳であるが、安倍政権は何とか理屈をつけて、再三延期を言い出す懸念は残る。

 さて政府が進める各種政策にいずれも財源不足が指摘される。教育無償化、社会保障費の自然増、介護職員の処遇改善等であり、身を切る改革は何処かに消えてしまった。

 一方企業の内部留保は400兆円を超えたらしい。今回の総選挙で内部留保の多さを指摘したのは、共産党と希望の党であった。この内部留保に1%の税金を掛ければ、4兆円の税収になると素人は考えるが、税の2重取り等の問題があるらしい。

 兎も角、異次元緩和による景気好循環の淀みの主たる原因はここにあると思われるが、安倍政権もようやく気が付いたのであろうか。

 政府の経済財政諮問会議が11月26日開かれ、安倍首相は来年の春闘で3%の賃上げをするように経済界に要請したそうだ。春闘の賃上げ闘争は労働組合の役目であった筈だが時代は変わった。

 また、安倍首相が衆院選で公約した待機児童対策など年2兆円規模の政策の財源に充てるため、政府は企業に対し、新たに計約3千億円の負担を求める方向で調整に入った。消費増税による税収増分だけでは足りないためだが、経済界の反発も予想され、調整は難航すると思われたが、経済界は受け入れる検討に入ったらしい。

 この2つの動きは、内部留保の多さに目を付けた結果であろうが、経済界としても儲け過ぎの後ろめたさはあるのだろう。しかし、まだ400兆円のごく一部と思われるので、財政難の政府の要求は続くであろう。2017.11.04(犬賀 大好-387)

世界大学ランキングの下落とノーベル賞

2017年11月01日 09時17分02秒 | 日々雑感
 英タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)は、9月始め”THE世界大学ランキング2018” を発表した。教育力、研究力、研究の影響力、国際性、産業界からの収入、の5領域についてデータを収集し、総合力を評価、分析したうえで世界の大学をランキング化しているとのことだ。これらの評価項目の中で、客観的に評価できるのは論文の引用数や収入等と思われるが、教育力などはどうやって評価しているのか不明であるが、THEの評価となると影響力は大きい。

 日本の大学のうち、総合ランキングで順位が最も高かったのは例により東京大学であるが、昨年の39位から46位と下がってしまった。これは主に大学、研究面での収入が減少したことが原因だそうだ。日本の大学の年間収入は半分以上が政府資金であり、国家財政難の折、04~15年にかけ大学・大学院への政府資金は12%も減少してしまったようだ。今後もこの傾向は続くであろう。

 原因がはっきりして居れば、対処法も分かるので、まだ心配も少ない。収入減は知恵で対処するしかない。昔、理論物理学の分野で、湯川秀樹博士らがノーベル賞を受けた。金が無くても頭で勝負することは出来る。

 日本の大学の活動不活発の原因は収入減の他色々指摘されている。まず教える側の閉鎖性がある。教授陣は自大学出身の教授が多数を占めている。教授間の競争を強めるのも一策かもしれない。しかし、各分野での専門性が高いため、なかなか他の教授の業績を評価できないとのことであり、一度教授になると余程の不祥事でも起こさない限り、首になることは無いようだ。知らず知らずのうち、現状に胡坐をかくことになるのだろう。

 教員の半数は他大学の出身者で占めなければならない等の規則の他、海外からの教員の積極的な採用も不可欠となろう。英語教育の必要性も叫ばれているが、英語はあくまでも道具であることを認識すべきである。研究活動が活発になれば、自ずから海外に出る必要性も高まり、英語に接する機会も増える。

 一方、大学教員の多忙さも指摘されている。自ら研究できるのはせいぜい准教授までで、教授ともなれば大学運営等の研究以外に時間が割かれてしまい、研究どころではないそうだ。最近の大学生は親離れしない者も多く、生活指導もしなければならないとの嘆き節を聞けば、さもありなんと納得する。

 しかし、これらの原因は分かっていても現大学システムの長い伝統がある為、簡単には解決できないらしい。少しづつ改善の方向にある様ではあるが、活動不活発化の速度の方が早い気がする。

 さて10月に入り、ノーベル賞の医学・生理学賞、物理学賞、化学賞の発表が相次いだ。自然科学系のノーベル賞については、昨年まで3年連続で日本人が受賞し、日本の科学研究のレベルの高さを世界に誇ってきたが、残念ながら今年は対象者はいなかった。

 一昨年ノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章さんは、日本の大学などの研究現場では、論文の数を左右する研究者の数、研究時間、予算の3つの要素がいずれも減っていて、特に研究時間の減少が顕著だと指摘している。

 去年、ノーベル医学・生理学賞を受賞した大隅良典さんも、”日本の大学の状況は危機的でこのままいくと10年後、20年後にはノーベル賞受賞者が出なくなると思う”、と強い危機感を訴えている。今年誰も受賞しなかったことは、たまたまであればよいが、早くも影響が出始めたのではないかとの懸念も残る。

 自然科学系の4年連続受賞はならなかったが、日本には、実用面で役に立つノーベル賞級の発明が沢山あるようだ。カーボンナノチューブ、リチウムイオン二次電池、抗がん剤のオプジーボなどである。今年、物理学賞を受けた重力波の検出は天文学や物理学にとって画期的ではあるが、当面実生活にほとんど影響しない。しかし日本のこれらの発明は既に実生活で役に立っていることは、自慢してもよい。2017.11.01(犬賀 大好-386)