ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

なかがわちひろ 天使のかいかた 理論社

2015-06-11 00:45:14 | エッセイ

 こないだ、妻と一関に行く用事があって、少し時間があったので、図書館1階のカフェに立ち寄った。カフェ・ジャーナル。それからもう少し時間があったので、2階の図書館に上がって、同級生の館長に声を掛けてみたが、不在だった。児童コーナーを覗くと、本棚の上に飾ってある一冊の本が目についた。

 こちらを向いた表紙は薄いピンクで、タイトルは「天使のかいかた」、作者はなかがわちひろ。

 あ、なかがわちひろさん。

 ふと、手にとってみた。

 立ったまま読みはじめ、それから近くの椅子に腰かけて読みきってしまった。

 

 「ようちゃんはイヌを、

  かなちゃんはネコを、

  たかしくんはハトを、

  のんちゃんはチャボを、

  かずのりくんはカメを、かっています。」

 

と右のページにあって、左のページに、

 

「でも、さちは……」

 

 その下に、なかがわさん自身の絵で、5人の子どもと、それぞれの動物たちが描かれ、いちばん左に、ひとりぼっちの女の子が正面を見て立っている姿が描かれている。

 で、ページを開くと、

 

「なにも、かっていませんでした」

 

 このかう、は、もちろん、購入の買うではない。飼育の飼う、である。しかし、さちさん以外の5人のペットは、どれも買うことのできるもの、一般的には買ったに違いないものだ。

 

 左のページには、ポイントを落とした小さな活字で、

 

 「だーめよ

  うちはマンションだし

 (中略)

  しんじゃうとかなしいし……」

 

 と、向こうをむいて洗たく機に向って、頭部は後半分だけ、目も鼻もなしに描かれたお母さんと、その背中を後から仁王立ちで睨むように見つめているさちさんの絵。

 うちでは買えませんよ、というお母さんの宣告。

 こういう小さな活字のセリフのような独白のような扱いは、そうだな、昔よく少女マンガで観た。今ふうに言う「カワイイ」に迎合し過ぎない、でも十分に適切にかわいい良き空気感を表現したようなマンガ。(倉田江美とか高野文子とかいたな、記憶をたどれば。絵柄はずいぶん違うけど。)

 ということで、さちさんは、ペットを買ってもらうことができない。

 しかし、さちさんは、ある日、のはらでペットをひろう。

 ひろったペット、それは…

 秘密。

 読んでのお楽しみ。

 なんて、もったいつけてもしょうがないんで、タイトルにある通り、「天使」をひろってしまう。

 

 「ひゃあ

  なにこれ?」

 

  左のページに

 

 「もしかして、天使?」

 「ウン」

 

  と、ここはもちろん、ずべて小さな活字。

  「ウン」の字の下に、カワイイ天使君が描かれる。

 

  で、ここからいろいろさちさんの試行錯誤。

  天使のごはんのこと。ウンチのこと。

  それが何か、ということは、それこそ、読んでのお楽しみ。

  なんというか、これ、読むことがほんとうに楽しみ、であるようなおはなし。

  小さな子どもを(大人も)勇気づけてくれるようなお話でもある。

  最後は、やはり小さな活字で、さちさんがこっそりと教えてくれる。

 

 「あのね

  ひろわれたがっている天使は

  まだいっぱい

  いるんだって

  さがしてごらん」

 

 そこで、小さな天使が

 

 「ウン」

 

とうなづいている。

 みなさん、なかがわ先生と一緒に、さちさんみたいに、あなたの「天使」を探して飼ってみませんか?子どもたち、だけでなくて、おとなの皆さん、もちろん、おじさんたちも。

 どこで?

 もちろん、図書館で、に決まっています。

 

 と、あまあ、こんなことまで書きたくなってしまうような本だ。

 写真は、本吉図書館の蔵書。明日には、返却しておきます。


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