宮城県図書館だより「ことばのうみ」ナンバー46 2013年12月号に掲載いただいたもの。
今の気仙沼図書館は、昭和四十四年にオープンしているので、私が小学生の間は、気仙沼小学校正門の脇の木立の中にあった小さな洋風の趣の木造建築であったことに間違いはない。木立といって、風通しのよいまばらな雑木林ではなく、深い森のように、なにかうっそうとした昼でも薄暗い場所だった。
中に入ると、壁面は高いところまですべて本棚で、北向きの天窓から入る光はあっても、明るすぎるものではなく、落ち着いた風情であり、その奥には、何度か建て増した建物が続き、中2階があったり、迷路のように隠し部屋が出てきたように思う。
その図書館の主が、白髪何千丈かというような、ひげも伸ばした老人で、眼光鋭く、何を言われたわけではないが、子どもには、怖い存在であった。それが、気仙沼図書館の初代仙人、いや、専任館長菅野青顔(かんのせいがん)であったことは言うまでもない。
震災を経て、新しく再建する図書館が、昔のような薄暗く小さな建築、というわけには行かないが、明るく快適ななかに、深い本の森に迷い込んだような、どこか謎めいた魅力、一種の魔法めいた歴史、それは、気仙沼のと限定されるものではなく、どこの図書館であってもそうなのだと思うが、そういう歴史に連なるものとなれば、なお、有り難いことだ。
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