図書館というところは、なにかとてつもない不思議な魔力を持つ場所なのではないか、と最近思い始めている。
司書の資格を持つわけでもなんでもないのだが、たまたま、市役所に採用されて始めが図書館で4年、館外奉仕を中心に担当し、そのあとは、全く別の部署に配属され、もう2度と図書館で仕事するなどということはないのだろうなかどと思っていたところ、市役所生活の最後のところ、53歳で、図書館長を務めよという辞令が下りた。
4年後、つまり、この4月、もう一館の図書館に異動ということで、通算9年目ということになった。
専門的なことは司書に任せておけばよい、ま、数年で、他の行政部門に異動であろうとたかを括っていたところだったが、これは、ひょっとすると、市役所生活を図書館で終えるということも、あながち、夢物語とも決めつけられないと少し考えを変えたところもある。
図書館自体の魅力、ということは言うまでもないことであろうが、もうひとつは、図書館に関わるひとびとの魅力、ということもあるのではないだろうか、と思い始めているところもある。このことについては、そのうちに改めてまとめて書くこともあるだろう。
この本は、宮城県図書館の熊谷氏が、ツイッターで、これは良い、みたいなことをつぶやいていたので、お、それは、と目にとまり、読んでみようと思ったところである。
著者の内野安彦氏は、「だから図書館廻りはやめられない」、「図書館はラビリンス」の2冊の著作が評判の図書館情報学博士。
まだお会いしたことはない。
もともとは、行政職員、図書館員。茨城県鹿嶋市の図書館長、その後、長野県塩尻市に転職、図書館長を務める。この本は、その経験に基づく実践的な館長論ということになる。
1956年生まれだから、私と同年である。現在、常磐大学、熊本学園大学、松本大学松商短期大学部で、非常勤講師を務められている。現場で経験を積み、その後、筑波大学の大学院で図書館情報学について研鑽を積まれた。
「数年前から文部科学省と筑波大学が共催で行っている新任図書館長研修や、各県立図書館が主催する新任図書館員研修や館長研修の講師を務める度に痛感したのが、図書館長の仕事をわかりやすく解説した本の必要性でした。…(中略)…図書館長に焦点を絞り、その使命、職責などを論じた新任館長向きの本は僅少」(はじめに 4ページ)だと。
確かに、この手の本は、読んだことがない。
正直に申し上げて、図書館についての本は、これまで、ほとんど読んだことがない。あまり深く学ぶ気もなかった。最近、多少、読み始めたところではある。しかし、関係する本の背表紙を見た記憶の中でも、館長論というのは目にしたことがないような気がする。
私自身、図書館長という立場で、読んでいて、あ、これは耳が痛い(文字を読んでいるのだから、目が痛い、というべきか。)ところが多々あると同時に、ふむ、ここは、できているかも…というところもそれなりにはあった。有難いことである。総じて、コンパクトによくまとまった役に立つ本だといえる。
「体験を通じてのノウハウを伝える」(5ページ)本であることは間違いないが、表面的な技術のみ書いているわけでなく、しっかりした哲学に裏打ちされているものと思う。
第Ⅱ部「図書館長経験者に聞く」では、8人の館長を紹介している。
「Ⅱ部は、図書館長として活躍されている現職者、もしくは退職者の方に協力していただき、読者の参考となるような実践例や図書館長としての矜持を語ってもらいました。」(8ページ)
秋元敏元埼玉県ふじみ野市立図書館長、熊谷雅子多治見市立図書館長、下吹越かおる鹿児島県指宿市立指宿図書館長、豊田高広愛知県田原市立図書館長、名倉利棟栃木県栃木市太平図書館長、船見康之茨城県潮来市立図書館長、棟田聖子長野県松川村図書館長、吉田真弓前北海道帯広市図書館長の8名。
自治体の正規職員に限らず、嘱託、また、指定管理管理者の職員である方も含めて、広い観点から紹介されている。
この本は、先の2冊と同様、「現場の図書館員に元気を与える本というコンセプトは踏襲しています。」(8ページ)ということで、そういうことであれば、「だから図書館廻りはやめられない」、「図書館はラビリンス」の2冊も、遡って読んでみようかと思っている。
ところで、図書館界に限らず、全国の自治体には優れた魅力ある人物がこれまた沢山いて、その中では、自治体学会などという組織に参加しているひとも多いのであるが、日本図書館協会というところは、ずいぶんと先行して存在してきた組織であることは言うまでもない。自治体の職員の全国的な横のネットワークという意味で、図書館の世界は、ずいぶんと先行してきたものであることは間違いがない。学ぶべき先例であったのだな、と発見した思いである。
図書館界に骨をうずめる覚悟、みたいなセリフが口をついて出そうになって、その魔力のようなものに、歓喜とともに慄く、みたいな恐ろしい話になりかねないところである。
もしかしたらご存知かもしれませんが、内野さんはコミュニティーFMのFMかしまで本と図書館と音楽の番組「Dr.ルイス 本のひととき」のメインパーソナリティーをなさっています。
毎週月曜19:30~(再放送金曜20:30~)の放送です。
インターネットでも http://www.jcbasimul.com/program/area10_a06.html から聞くことができます。
毎週全国の図書館関係者が電話ゲスト出演され、各地の図書館の様子がわかって楽しいです^^
ちなみに今日のゲストは川崎市立宮前図書館の方です。(聞きながら書いています^^)
良ろしければ是非お聞き下さい。.
それは失礼しました。
千田さんのお声もラジオでお聴きできる日をお待ちしています。^^