イコンのもとに


在宅介護16年が終了後、やっと自分のために生きられる。イコンも描いてます。ブログは書いたり書かなかったり、気分で。

負担

2016年06月26日 | イコン
イコン画家の夫というのが悪態ばかりつく陶芸家で、
民俗調の焼き物を作っていたが、
分厚く重く、中に入れたものの色が暗くなり、コーヒーなのか紅茶なのかわからなかった。

「岡山の人間は芸術なんかわからないだろう。私にまかせたらいいんだよ」と言って
ギャラリーの手洗いの水盤を作っていたが、
デザインや精神性を優先するから深さの浅い焼き物の水盤で、
手を洗うたびにまわりに水が跳ねて、
雑巾をいつも必要としていた。
あれでは、手洗いの水盤とはとても言えない。
湿気を振りまく陶器だ。

「私が死んだら焼いたコップをみんなに1個ずつやろう。
私の作品だから高いぞ、欲しいだろう」
と言われたが、
岡山の人間はバカだと罵しられてきた上に香典を出し、
重くて中身のわからないコップまで押しつけられるのかと思ったらゾッとした。
幸い母が本当のことを
妻のイコン画家に手紙を書いて、
イコン画家から「ほしかったでしょ」と言いながら
渡された失敗作のコップやら、
歪んだ花瓶やら、
違う聖人を描いて渡されたイコンやらを送り返してくれた。
バブル時代に勘違いしたのがずっとなおらない夫婦だったなと思う。
死ぬまで自分たちほどすばらしい芸術家はいないと思い込んでいるに違いない。

今はどうしているかは知らないが、
香典と引き換えに、あの暗〜い、重〜いコップを渡されなくてよかったと思う。
作った自分でも、
コーヒーか紅茶か見分けがつかず、
重くて困るんじゃないだろうか。
デザイン優先、精神性優先というのは、年をとってきたら二の次になる。
まずは、身体に負担のないものがいい。


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