すまぬ。許してほしい。
君がコロナに感染したと知った時、見舞いの言葉一つかけなかった。
たとえ、直接伝えることができなくとも、胸の内ででも
「大変だろうけど頑張ってくれ。早く良くなることを願っているよ」
などと見舞うべきだった。
だが、僕は君の身を案じるより先に
「よもや自分も」との思いにばかりとらわれてしまったのだ。
思い至らず……薄情の奴と罵られても仕方ない。
年齢は30以上も違う。それだけ違えば、濃厚接触する機会は少ない。
週に2、3度顔を合わせ、たまに言葉を交わす。その程度の距離感ではある。
それでも君がコロナに感染したと聞けば、やはり心はおののく。
それは恐怖心と言ってもよく、的確な判断力さえ奪われてしまう。
おろおろするばかりで、「自分はどう対処しなければならないのか」
そんなことさえ容易には出てこないのだ。
深く息を吸い込み、そして吐き出した。
ようやく、「やはりPCR検査を受けるべきだろう」と思い至った。
だが、どこに、どう話をすればよいのか分からない。
思い余って、かかりつけの先生に電話して助けを求めた。
そして、なんとか別の病院でPCR検査を受けることができたのだった。
だが、結果が出るまで一日半かかった。
その間の苦痛は言いようがない。「仮に陽性だったらどうしよう」
そんな不安にさいなまれ、ひどく疲れてしまう。
もちろん、妻も友人との約束はすべてキャンセルし
再度の外出自粛策をとるなど、緊張感をひどく募らせた。
また同じ市内に住む二人の娘にも連絡、行き来を当分控えることにした。
「陰性でした」との連絡で何とか緊張感から解き放たれたのだが、
コロナ感染による恐怖心をたっぷり味合わされた2日間だった。
「ああ疲れた」とため息をつきながら、自らの身の安全が確認できた途端、
君のことに思いが至ったのである。
これは僕に限ったことかもしれない。
人は何と薄情で、現金な生き物であることか。
再度、君に許しを請う。
幸い、症状は軽いと聞いた。早期の快癒を心から願う。