Toshiが行く

日記や趣味、エッセイなどで描く日々

白日夢

2021年02月09日 10時22分04秒 | エッセイ
        もしも私が家を建てたなら
        小さな家を建てたでしょう
        大きな窓と小さなドアーと
        部屋には古い暖炉があるのよ
        真赤なバラと白いパンジー
        子犬の横にはあなた あなた
        あなたがいてほしい
        それが私の夢だったのよ
        いとしいあなたは今どこに


小坂明子の「あなた」という歌だ。
「一億総中流」と言った頃、1973(昭和48)年に発売されている。
まさに「総中流」を象徴するような歌詞。
あの頃の日本は1960年代の高度経済成長下、
68年にはGDPは世界第2位となり、
所得倍増計画が打ち出されたこともあり、国民の間に
「自分は中流階級だ」との意識が急速に強まっていた。
70年の国民意識調査では約9割、要するに
ほぼすべての国民がそう思っていたという。

    実は、専門家によると国民の間にはそうした
    「中流」意識がいまだに残っているのだそうだ。
    ただ、かつてのように「総」というわけではなさそうで、
    一方では80年代以降所得格差は急速に拡大し続けており、
    いまや「格差社会」とまで言われている。
    これに新型コロナウイルスの蔓延が追い打ちをかけている。
    解雇、雇い止めといった深刻な事態が頻発しており、
    それが格差拡大に拍車をかけているのである。

8日の日経平均株価は、90年8月以来30年6カ月ぶりに
2万9000円を突破し、2万9388円とバブル経済崩壊後の最高値をつけた。
喜ぶべきなのかどうか──このコロナ禍ではとてもそんな気にはなれない。
つい、かつてのバブル崩壊を連想してしまうのである。

    このところ、70年代の歌がカバーされ、
    テレビなどで盛んに歌われている。
    「あなた」もそうだし、「喝采」(72年、ちあきなおみ)
    「ロマンス」(75年、岩崎宏美)
    「木綿のハンカチーフ」(同、太田裕美)
    「化粧」(78年、中島みゆき)
    「異邦人」(79年、久保田早紀)……。
    
    やはり、「総中流」と思っていたあの頃が懐かしいのであろうか。