Toshiが行く

日記や趣味、エッセイなどで描く日々

たまにはこんな時間が……

2021年07月03日 15時24分05秒 | エッセイ


     2人の娘は、幾つになったろうか。
     長女には今春晴れて社会人となった女の子と、
     大学4年生の男の子がいる。
     次女の方には大学生になり立ての一人娘。
     何歳と言わなくとも、2人とも立派なおばちゃんである。

          
    
     それほどの年齢だから、もうとっくに「親離れ」しており、
     自分たちの世界を築いている。
     対する親の方はなかなか「子離れ」できず、
     そんな親心に任せて子どもの世界に迂闊に立ち入ろうものなら
     鬱陶しがられ、時には冷たくあしらわれて寂しい思いをさせられる。


     特に男親は哀れなもので、
     そんな年齢になった娘に対する術を見つけきれないのが常だ。
     2人とも福岡市内に在住しており、
     車だと30、40分で行き来できるのだが、
     格別な用事がなければ会うことはほとんどない。

           
     対して母親。
     「親離れ」している娘に対し、「女同士」という武器を使う。
     たとえば、買い物へ行くと、野菜や肉、魚といった総菜類を
     「えらく多く買うな」と思ったら、
     何のことはない娘たちの分まで買っているのだ。
     そして、「○○があるよ。いるなら持って行こうか」と電話する。
     娘たちも主婦なのだから、
     少しでも家計の足しになるとあれば、むげには断らない。
     娘たちに会いたいがための母親なりの手口に違いなく、
     男親は内心にやにやしながら、
     妻と食材を乗せ、娘宅へ急ぐことになる。


     この日も同様の手口で野菜類、
     それに乃が美の高級食パンを長女宅へ届けた。
     長女は自宅でネット通販会社を営んでおり、
     妹である次女がそれを手伝っている。
     親にすると、姉妹が仲良く一緒に
     仕事をしている姿を見るのは何よりのことである。
     ちょうど昼時、久し振りに親娘4人が買ってきたパンをかじり、
     コーヒーを飲みがら談笑した。

           
     
     会話はやはり家計のこと、子どものことになる。
     利殖の話になると、母親がちょっとした指南役となり、
     何かとアドバイスする。
     女3人の会話に男親はなかなか割り込めない。
     「まあ、いいか」
     娘たちがつつがなく暮らしてくれれば言うことはない。
     1時間半ほど──何物にも代えがたい心和む時であった。
     もう一度、「まあ、いいか」