Toshiが行く

日記や趣味、エッセイなどで描く日々

今見る2度目の東京オリンピック

2021年07月23日 06時00分00秒 | エッセイ


   僕の側にベラ・チャスラフスカさんが立っていた。
   美人で優雅なその姿に体は硬直し、胸はそれこそ高鳴った。
   ご存じの方もおられると思うが、
   旧チェコスロバキア・プラハ出身の体操選手だ。
   1964年の東京オリンピックで個人総合、
   平均台、跳馬で金メダルを獲得し、
   ついでに言えば次のメキシコ大会でも個人総合を連覇している。

        

   オリンピック後に模範演技を披露するため各地を回り、
   僕がいた長崎にもやって来た。
   当時、僕は大学3年生で器械体操部に入っていたから、
   チャスラフスカさんの模範演技会場で、
   器具や用具の準備のための
   補助要員として駆り出されていた。
   そして、その優美な演技によって「オリンピックの花」とまで
   称えられた人が触れ合わんばかりの近さに立っていたのだ。
   生涯2度とはないであろう、なんと好運なことであったか。

        

   その64年の東京オリンピック開会式。
   10月10日の東京の空はまさに秋晴れ。
   そこに自衛隊機が五輪のマークを描き、
   そして聖火リレーの最終ランナー・坂井義則さんによって
   聖火が赤々と灯された。
   〝日の丸色〟の赤のブレザー、白のパンツ、スカート姿の
   日本選手団が整然と入場行進した、あの光景。
   講義を特別に休講にしてもらい、
   同級生たちとテレビに釘付けとなった、あの日。
   脳裏に鮮明に焼き付いている。

                

   あれから57年後の7月23日。
   再び東京の空に五輪のマークが描かれ、聖火が灯る。
   コロナ禍により1年延期され、また「中止すべき」との声も多い中、
   何とか開催にこぎつけることができた。
   8月8日まで各競技に熱戦が繰り広げられ、
   その後にはパラリンピックが控えている。
   すべてが無事に進み、終了することを願うばかりだ。

   そして、僕はこの日79歳の誕生日を迎えた。
   実は、60歳半ば頃から、「オリンピックを見るため、
   あと4年は生きるぞ」と自らに言い聞かせながら生きてきた。
   今もそれは変わらない。
   この東京オリンピックを存分に楽しんだ後は、
   「2024年のパリ五輪も絶対に見てやる」と思っている。
   そうやって4年刻みに年齢を重ねてきたし、
   これからもそうしようと思っている。

   あと何度オリンピックを楽しむことができようか。