Toshiが行く

日記や趣味、エッセイなどで描く日々

男たるものが……

2021年07月18日 06時00分00秒 | エッセイ


      おい、おい、おい。
      待て、待て、待て。
      なに!男が化粧をするだと。
      ファンデーションを塗り、眉を書き、
      アイラインを入れるだと。
      「待て」と言ったら待て。
      化粧は女がするものだろうが。
      男たるものが、たいがいにしろ。
      俺の祖父や父の時代だったら、
      たちまち「打ち首ものだ!」と声を荒げたに違いなく、
      この俺だって「ああ、なんて世だ」と嘆きたくなる。

          

      何気なく押したテレビのチャンネル。
      何と若い男性が眉を書いている場面が映し出されていた。
      ぎょっとして、妻に「今時の若い男連中は眉を書いとるぞ」
      そう聞いてみたら「珍しくもありませんよ」
      なんて言うではないか。
      少々の憤りを込めて、見続ける。
      画面の右上には『ビジネスマン専門のメイク塾』とある。
      メイク術を教えている女性がこんなことを言っていた。
      「営業マンは、眉をきりっとしていた方が、
       相手に好印象を与えます。それで商談を
      うまく進めることが出来るはずです」
      そして、もっときりっとした印象となるため
      「アイラインを入れろ」というのである。
      精悍な顔色とするには、ファンデーションも欠かせない。


      馬鹿者! 見かけで仕事をするのか。
      いの一番に大事なのは内面にある人柄ではないのか。
      それに加えて、たゆまぬ勉学で身につけた
      知識、知恵ではないか。
      容姿を武器にするなんぞ、男の風上にもおけない奴らだ。


      ちょっと待てよ。
      記憶の中に、引っかかることがある。
      急いで調べてみたら、やはりそうだった。
     
                 

      あの雅な平安時代、貴族は権威を見せつけるため
      おしろいを塗っていた。
      当時、おしろいは広く普及しておらず、
      高貴さの象徴だったらしい。
      そして勇猛果敢な戦国武士もそうだったという。
      戦いに敗れた時、敵に醜い姿を見せないよう
      顔を白くしていたというのだ。

      平安貴族にしろ戦国武士にしろ、
      おしゃれが目的ではないにしても、
      これらが男性化粧のルーツとされている。
      何ともまあ、男性の美意識、〝化粧男子〟は
      今に始まったことではなかったのである。

      何だか気合いが抜けてきた。
      好きにやってくれ。
      男が化粧しても国が亡びることはあるまい。
      中島みゆきの、あの悲しい「化粧」を聞くとするか。