おい、おい、おい。
待て、待て、待て。
なに!男が化粧をするだと。
ファンデーションを塗り、眉を書き、
アイラインを入れるだと。
「待て」と言ったら待て。
化粧は女がするものだろうが。
男たるものが、たいがいにしろ。
俺の祖父や父の時代だったら、
たちまち「打ち首ものだ!」と声を荒げたに違いなく、
この俺だって「ああ、なんて世だ」と嘆きたくなる。
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何気なく押したテレビのチャンネル。
何と若い男性が眉を書いている場面が映し出されていた。
ぎょっとして、妻に「今時の若い男連中は眉を書いとるぞ」
そう聞いてみたら「珍しくもありませんよ」
なんて言うではないか。
少々の憤りを込めて、見続ける。
画面の右上には『ビジネスマン専門のメイク塾』とある。
メイク術を教えている女性がこんなことを言っていた。
「営業マンは、眉をきりっとしていた方が、
相手に好印象を与えます。それで商談を
うまく進めることが出来るはずです」
そして、もっときりっとした印象となるため
「アイラインを入れろ」というのである。
精悍な顔色とするには、ファンデーションも欠かせない。
馬鹿者! 見かけで仕事をするのか。
いの一番に大事なのは内面にある人柄ではないのか。
それに加えて、たゆまぬ勉学で身につけた
知識、知恵ではないか。
容姿を武器にするなんぞ、男の風上にもおけない奴らだ。
ちょっと待てよ。
記憶の中に、引っかかることがある。
急いで調べてみたら、やはりそうだった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/fd/a57a964fcebbcf54b2e1a5ddb3bf20ff.jpg)
あの雅な平安時代、貴族は権威を見せつけるため
おしろいを塗っていた。
当時、おしろいは広く普及しておらず、
高貴さの象徴だったらしい。
そして勇猛果敢な戦国武士もそうだったという。
戦いに敗れた時、敵に醜い姿を見せないよう
顔を白くしていたというのだ。
平安貴族にしろ戦国武士にしろ、
おしゃれが目的ではないにしても、
これらが男性化粧のルーツとされている。
何ともまあ、男性の美意識、〝化粧男子〟は
今に始まったことではなかったのである。
何だか気合いが抜けてきた。
好きにやってくれ。
男が化粧しても国が亡びることはあるまい。
中島みゆきの、あの悲しい「化粧」を聞くとするか。