「私の一票はあなたの半分の価値しかない」というのはあまり気分がよいものではありません。だからと言って「私の一票はあなたの倍の価値がある」と言われてもあまり気分が良くなるものでもありませんが。
ただあまりに露骨な較差(格差?)があるのも問題ですから、このさい過激な“解決法”はどうでしょう。「議決の時に、その議員が投じる票は、係数としてその人の選挙での獲得票数を乗じる」というものです。要するに「選挙でたくさんの有権者の支持を得た人は、議会で声がでかい」ということ。単純に獲得票数に比例にすると、田舎が不利かもしれませんから、どちらかの院はこれまでと同じにするとか、あるいは、ある程度は基礎点というか固定点としてそれに票数比例部分をプラスする、という手もあるでしょう。
こうしたら、「その地域で一番になること」だけではなくて「できるだけ多くの支持者を集めること」が必要になるし、選挙での投票率も候補者は気になるようですから、これからの選挙が激変するかもしれません。
【ただいま読書中】『スピード開票実践マニュアル ──コンマ1秒の改革から始まる自治体業務改善』北川正恭 監修、早稲田大学マニフェスト研究所 編著、ぎょうせい、2010年、1905円(税別)
北川さんは三重県知事時代に行政改革に取り組んでいたそうですが、どうしても変えられなかったことの一つが「選挙管理委員会」の名称変更とその業務の変革だったそうです。「権力構造」が安定していて、そこに手を入れることが困難だった、とのこと。
国・都道府県の選挙業務は市町村の選挙管理委員会に委託されます。委託費は人口などで一定額が配分され、時間短縮などで経費節減をしても“差額”を返却する必要はありません(返却する制度がありませんし、もし返却したら叱られた上に来年度予算の削減になります)。さらに「迅速性と正確性は両立しない」ことから業務内容の見直しもされません。著者らはそのへんを疑うことから話を始めます。「現場で開票作業のスピードアップに取り組むことは、「現場からの民主政治への課題」も浮き彫りにできるのではないか」と。それは単に技術的な問題の話ではないのです。
開票作業改革の“先駆者”として、東京都府中市が登場します。ここではさまざまな工夫をすることで開票時間を短縮し、1000万円以上の経費節減をしています。「経営」の視点を取り入れ、情報を公開します。それは職員の意識を変えることになっていきました。それまでは「自分の担当」だけをのんびりやっていれば良かったのが、どの人も全体を見ながら役割を流動的に分担して動き、改善するべき点が見つかったらそれをどう改善するか提案するようになったのです。面白いのは、機械を入れればいいとか人を増やせばいい、ではないこと。機械は使い方次第ですし、動線など作業内容を検討したらかえって人数は減らせるそうです。
もしも全国で1時間開票時間が短縮されると、節約効果は11億円だそうです。お金がすべてではありませんが、やはりでかいですねえ。
最初に戻りますが、著者は「管理」では日本は良くならない、と主張します。あるべき姿は「経営」だと。そして、何度も強調されるのが「中央集権ではなくて地方分権。自分たちに最適な方法は、中央の指示や人まねではだめ。自分たちで現状を分析し改善策を考えなければならない」ことです。こういった場合に公務員がよく言う「今までと同じでよい」「どうせ自分たちには無理だ」は著者にあっさり却下されています。著者が求めるのは「地域からの民主主義」です。そしてそこで重要なのは、職員が自発的に自分たちの仕事に取り組む姿勢です。そういった姿勢は意識改革をしない限り出てこないのですから。