【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

地球

2012-04-17 18:14:35 | Weblog

 地球が丸いことは古代ギリシアですでに証明され、その大きさを測定したのは紀元前195年のエラトステネスですが、そういった“予備知識”なしで「地球が丸いこと」や「その大きさの測定法」を示せ、と言われたら、それができる現代人はどのくらいいるのでしょう? できなかったら古代人より知性で劣る、と言われたみたいでとっても口惜しいのですが。

【ただいま読書中】『西洋古版 世界地圖集』天理圖書館 発行、1968年
 
 ダーティ「ラ・スフェラ」(1450年)は、「天球」の概念図とヨーロッパのご近所の地図とが組み合わされた感じで、ちょっと不思議な「地図」です。中世の人にとって「地球(とその周囲)」は“そういった感じの世界”だったのでしょう。
 プトレマイオス「地理書」は3種類収載されていますが、1480年のはユーラシア大陸だけで、しかもアフリカが異様に痩せているのが、1515年刊になるとユーラシア大陸とアフリカ大陸は精密に描写され、さらに「新大陸(南米の東海岸だけですが)」が登場します。重要なもの・自分が興味を持つものは大きく描写する、といった態度もあったのでしょうか。
 アグネス「稿本ポルトラノ」(1542年)では、南米北部と中米と北米の東海岸も出てきます。当時のヨーロッパ人にとって「世界」がどのように見えていたのか、地図を見るだけでよくわかります。
 面白いのは、ド・モンジュネ「地球儀ゴア」(1552年)です。12枚の連続した舟形紙片に「地球」が印刷されていて、それを切り抜いて木製の球(直系9cm)に貼り付けたら「地球儀」が完成する、というものです。まだ不正確なものですが(太平洋がインド洋より小さい)、それでも当時の人にとって自分の手で「地球」を作れるのは知的な興奮を伴う作業だったでしょうね。
 コロネリ「地球儀ゴア」(1700頃)になると、太平洋はきちんと大きくなり、日本列島も(ちょうど切れ目なのでわかりにくいのですが)登場します。
 メルカトール「小地圖帳」(1634年)では、東半球と西半球がそれぞれ別の円の中に描写されます。このあたりから「何を地図に書き込むか」から「どのような技法で地図を作成するか」が問題になってきたらしいことが見て取れます。ただ、南極大陸はまだ手つかずです。
 こうして地図が少しずつ充実してきたら、探検家がその「空白」に目を向けるのは、当然のことでしょうね。「自然は真空を嫌う」でしょうが、「人間は地図の空白を嫌う」ものなのですから。