検察官の定年延長の理由は「社会が変わったから」で、その例として「震災で検察官が真っ先に逃げた」が森法相によって挙げられ、結局「それは事実に反する」と答弁撤回と謝罪になったわけです。で、「定年延長」の理由の「社会が変わったから」の例は、何なんです?
【ただいま読書中】『黙示の島』佐藤大輔 著、 角川書店、2002年、1600円(税別)
迫り来る少子高齢社会と経済停滞に対して、日本政府は長寿計画(ロングライフ→L2計画)を特区で試行することにしました。本土から船で2日半離れた孤島、鼎島がその特区です。
「マイクロTAS」という、ナノテクノロジーを使った人体埋め込み型の検査・診断装置が登場しますが、本書はSFではありません。描写されるのは、孤島の生活、日本社会の人間関係の濃厚さ、男社会(アメリカの大学でさえ、有名研究所のボスはみな「彼」で「彼女」ではないこと)など、つまりは現代小説です。
マイクロTASとDDSキット(やはり埋め込み型の薬剤投与システム)によって、島の老人たちは病気が早期に予防でき元気になりました。その結果、島唯一の診療所の医者は、暇を持てあますことになります。「医者が暇な社会」は「軍人が暇な社会」と同じく、「良い社会」だと私は思いますが……
妙な事件が起きます。島でただ一人の駐在が、砂浜で寝っ転がっているまま、虫や鳥に食い殺されてしまったのです。生きたまま衰弱をしたかのように、まったく抵抗をせずに。島は騒然としますが、島民自体がどうも様子が変です。まるで無気力無関心になっている人もいれば、異常に元気になっている人もいます。変死者が出たためにパニックになっているのかもしれませんが。さらに、殺人、強姦……そして、爆発。
ゾンビ映画の要素が濃厚なパニック映画の展開となり、主人公たちは危機一髪を次々乗り越えていきます。しかし……
いやいや、本当に「しかし……」です。最後の三行、ひどすぎます。たしかにこれは高齢社会の問題点の「解決」とはなっていますけれどね。日本の政治のあり方や社会学をおちょくったところもありますが、もっと色々深読みはできそうです。おちょくる点を一つ見つけて満足しない方が良さそうな複雑な本かもしれません。私が深読みが好きなだけかもしれませんが。