大阪府に住む40歳代男性のAさんは、大学卒業後、大手企業の技術職として勤めていた。
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しかし、リーマンショックの頃に、上司との人間関係が原因で会社を退職。その後、なかなか再就職先が見つからないため、ここ数年は自宅ですることもなく、引きこもらざるを得ない状態に陥っている。
学高校時代は人気者で、クラスメートを笑わせるのが好きだった。そんな明るいキャラクターゆえ、同窓会にもこれまでは欠かさず出席していた。
それが会社を辞めてから、同窓会の誘いがあったとき「仕事もしていなくてみじめだから、行きたくない」と断った。
「何言ってんだ。おまえが来なきゃ盛り上がらないだろ」
何も知らない同窓生から無理やり引っ張り出されて、余計に落ち込むことになり、人脈も閉ざした。
● 仕事が欲しいだけなのに 勧められるのは「精神科の受診」
そんなAさんがとくに憤慨するのは、「ハローワークの真実」に対してだ。
「最初の頃、相談に行くと、中には気のいいおじさんとかいて、いろいろ話すんですが、気合論しか言わない。なかなか効果的な話につながっていかないんです」
Aさんによれば、ハローワークでよく言われるのは、主に次の3点だという。
「とにかく履歴書を出しなさい」
「めげない」
「しんどくなったら、精神科医へ通いなさい」
とはいえ、正規社員の仕事さえ決まれば、元気になって精神科へ行く必要もないと、Aさんは言う。
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「仕事が決まらない人に、精神科へ行かせたがるんです。メールでも“こころの相談室”にいろいろ書いて出すと、やはりまず“精神科医を紹介しますから”と返って来る。会社を辞めるときも“うつの疑いがあるから”などと言われ、精神科医(への受診)を勧められた。“心の安定を図ってください”が決まり文句なんですよ」
仕事が欲しいのに、どこへ行っても精神科医につながっていく。仕事は紹介されないのに、病院への入り口はあちこちにある社会。これでは、ハローワークではなくハローホスピタルだ。
Aさんは、「しんどいです」という言葉を、精神論や根性論に対して「難儀です」というような意味で使っている。にもかかわらず、窓口のスタッフは、ネガティブな意味に受け取る。
「職歴がなくなると、採用率がものすごく下がるんですよ。“この期間、何やってたのか? ”と問われるたびに、繕ろうのが大変なんです。そう聞いてくれたらまだいい方ですけど、結局は履歴書を送っても“お祈り”の返事がくるだけです」
● 探しても出てくるのは同じ求人 40歳を超えればサポートすらない
ハローワークにはずっと通い続けてきた。しかし、正規社員はおろか、アルバイトにも採用されなかった。
自立相談窓口を謳う社会福祉協議会に行っても、Aさんの住む自治体ではハローワークの求人を紹介されるだけで、とっくに見ているような情報ばかり。その社協には、支援メニューの厚みやノウハウがなく、セーフティーネットとして機能していない。
Aさんの自治体では、大手派遣企業も窓口に入っている。でも出てくるのは、ハローワークの求人で、60歳代くらいの担当者は、同じ情報を一生懸命見ているだけという。
「その人も一生懸命探してくれる。でも、パイがない。担当者もイライラしたように困っている状況でした」
40代の再就職難民を増殖させるハローワークの不都合な真実