「荒地の恋」ーねじめ正一著ー
ねじめさんの作品は初体験。書評を読んでいて[53才・新聞社の校閲部・田村隆一の妻]という言葉に引っかかり手にしてみた。
北村太郎(53才)は新聞社に勤務しながら寡作ではあるが詩を書いている。ある日、北村は親友田村隆一の妻(明子)と所用で会い話し込んでいるうちに「恋」に落ちた(三角関係というヤツですが)その後の展開がさすが常人とはちょっと違ってくるんである。
半端な恋ではない。
53という初老に足が掛かろうかという年齢で、穏やかで平和な家庭と安定した職業を捨てる。発覚してから家を出るまでの北村の妻の葛藤は凄まじかった
そこまでの過程を丁寧に抑制して追う。
ここまでは、北村に対する反感の感情を否めなかったが、その後の保身を考えない北村の生き方にどんどん惹かれていく。果敢だ。恋する気持ちは心を潤す。それが方向を外していてもやはり恋は恋なんだ。
嫉妬や高揚を繰り返し鍛えられめりはりある感情の層を厚くしていく。
寡作だった詩は明子と暮らし始めてからどんどん書けるようになってくる。
やがて明子とは破綻(やはり!)していくのだが、北村はまた・・(おぉ)いつだって北村はあれこれ画策しない。
吐露する言葉が考える言葉が力が抜けて自然だ。その自然に達するまでの経験が過酷だが、過酷を経た人はやさしい。
田村隆一の威容な個性。その妻明子もまた負けてないこれは異様な個性。
素晴らしい詩を世に出した詩人たちの恋に落ちた気持ちの動きを丁寧に飄々と綴った長編評伝小説である。
ラスト4行に「え?え!」と息を飲む。女はしたたかだなぁ、と。
ねじめさんの作品は初体験。書評を読んでいて[53才・新聞社の校閲部・田村隆一の妻]という言葉に引っかかり手にしてみた。
北村太郎(53才)は新聞社に勤務しながら寡作ではあるが詩を書いている。ある日、北村は親友田村隆一の妻(明子)と所用で会い話し込んでいるうちに「恋」に落ちた(三角関係というヤツですが)その後の展開がさすが常人とはちょっと違ってくるんである。
半端な恋ではない。
53という初老に足が掛かろうかという年齢で、穏やかで平和な家庭と安定した職業を捨てる。発覚してから家を出るまでの北村の妻の葛藤は凄まじかった

ここまでは、北村に対する反感の感情を否めなかったが、その後の保身を考えない北村の生き方にどんどん惹かれていく。果敢だ。恋する気持ちは心を潤す。それが方向を外していてもやはり恋は恋なんだ。
嫉妬や高揚を繰り返し鍛えられめりはりある感情の層を厚くしていく。
寡作だった詩は明子と暮らし始めてからどんどん書けるようになってくる。
やがて明子とは破綻(やはり!)していくのだが、北村はまた・・(おぉ)いつだって北村はあれこれ画策しない。
吐露する言葉が考える言葉が力が抜けて自然だ。その自然に達するまでの経験が過酷だが、過酷を経た人はやさしい。
田村隆一の威容な個性。その妻明子もまた負けてないこれは異様な個性。
素晴らしい詩を世に出した詩人たちの恋に落ちた気持ちの動きを丁寧に飄々と綴った長編評伝小説である。
ラスト4行に「え?え!」と息を飲む。女はしたたかだなぁ、と。