思い出したくないことなど

成人向き。二十歳未満の閲覧禁止。家庭の事情でクラスメイトの女子の家に居候することになった僕の性的いじめ体験。

鉱石採り

2007-06-14 16:54:31 | 4.とんだ災難
 終業のチャイムが校内に鳴り響いた。いつものように小走りで学校を出ると、後ろからY美が声を掛けてきた。一緒に帰ろうと言う。放課後の約束が反故になったから、珍しく早く帰ることにしたそうだ。Y美はにっこり微笑んで、そんなに急いで帰らなくても今日は許す、と僕に請合った。

 この二三日、Y美は僕に対してすっかり優しくなった。もちろん、家ではパンツ一枚の裸生活を強いられていたが、肉体的な負担が大きい用事を言いつけられることはなかった。また、パンツを脱がされることもなかった。夕飯の食卓はY美とおば様と僕の三人で囲む日が続いた。僕だけパンツ一枚の裸だったが、二人と同じ食事をさせてもらったし、そればかりか、Y美は自分用に買い溜めしていた食後のデザートを僕にも分けてくれるのだった。
 Y美とおば様でテレビドラマを見ている時は、彼女たちがくつろいでいるソファの横で待機を命ぜられた。待機の間は正座が原則だった。しかし、用件を言いつられることはなかった。僕は正座したまま、最後までテレビドラマを見ることができた。
 
 こんな風に最近のY美が僕に優しいのは、僕が回覧板を届けに行ったまま、みなみ川教の老人たちに全裸でいじめられてからだった。
 あの日、僕はみなみ川教信者の家で、素っ裸のまま雑巾掛けや配膳、窓拭きをさせられ、池に突き落とされた。また、20人の老人たちが僕の四肢を床に押さえつけて、体を広げた。蛍光灯が何本も輝いている明るい部屋だった。僕は、お婆さんたちの冷たい手でおちんちんの皮や袋をぐいぐい引っ張られた。信者たちと神の仲立ちをする一人が、第二次成長が始まる前の男の子の性器をつかんだり、肛門に指を入れるとご利益がある、などと告げたらしかった。
 仰向けに四肢を広げた形で押さえつけられた僕のおちんちんは垂直に引っ張られ、腰が浮いたところで、肛門に指を差し込まれた。「第二関節まで入れるの」という声が響いた。数えきれないくらいの指が入れ替わり肛門に入ってきた。何十回もおちんちんや袋を引っ張られた。僕は声の限り、「やめて、やめて」と泣き叫んでいた。
 突然、僕の四肢を押さえつけていた人たちが引いた。Y美とおば様がその部屋に入ってきたのだった。回覧板を届けに行ったまま帰ってこない僕を心配して、見に来てくれたのだった。おば様もY美も激怒していて、猛然とごま塩頭の老人に抗議していた。おば様が議員にこの出来事を報告すると言うと、ごま塩頭の老人は、それだけは勘弁して欲しいと嘆願するのだった。ごま塩頭の老人が僕に浴衣を差し出してくれたが、おば様が「要りません、そんなものと」と言って、ぴしゃりと床に叩き落すと、僕の手首をつかんで、「さ、早くうちに帰りましょ」と促すのだった。
 十一時を過ぎた時刻だったが、人や車の通りはまだまだある。僕は素っ裸のまま、おば様とY美に前後を挟まれて、家に戻った。道中も僕はずっと泣いていたので、Y美が後ろから「もう大丈夫だから泣かないで」と声を掛けてくれた。「お尻が、お尻が痛いんです」と訴えると、前を歩いていたおば様が振り返り、「どうして」と聞いた。その場で立ち止まり、僕がどんなことをされたのか、訊ねるのだった。早く家に帰ってパンツを身に付けたかったが、おば様は真剣な眼差しで僕を見つめたまま、動こうとしない。僕は桑畑の横で一糸まとわぬ裸をもじもじさせながら、先ほど受けた仕打ちの話をした。途中、何台かの車がヘッドライトを照らして通り過ぎた。

「チャコ」と、前を歩いていたY美が呼んだ。僕が老人たちに囲まれて虐待を受けた翌日、Y美が僕のことをそう呼ぶことにすると宣言した。僕が老人たちから受けた性的ないじめの内容を聞いたおば様が怒りでテーブルをこつこつ叩きながら、「まったくなんて仕打ちをするのかしら。この子はうちの大事なペットみたいなものなのに」と洩らしたのがきっかけだった。「ペット」の一語に反応したY美が、
「ベットか。ねえお母さん、この子のこと、これからチャコって呼ばない? お母さんが子供の頃、そういう名前の犬を飼ってたって言ってたじゃない」と、提案したのだった。
「チャコ」と呼ばれた僕はすぐさまY美の前に出て、立ち止まり、Y美の言葉を待った。
「今日は少し回り道して帰ろうよ。みなみ川沿いの散歩道を通って」と、Y美が言った。
 僕はその道を知らないので、Y美に従って、いつもとは反対の方角へ歩き出した。
 みなみ川はこの村の端を東から西に山沿いに流れる渓流で、その土手に最近、舗装された散歩道が作られた。散歩道からこんもりと茂った青葉の下を流れるみなみ川が見える。梅雨の晴れ間で、むし暑い日だった。散歩道を小さな子どもを連れた母親たちが歩いている。ズボンをまくって川で水遊びをしている少年たちがいた。Y美は川に下りられる脇道を選んだ。川岸は岩がごろごろしていて、歩き易いとはいえない。Y美は身軽に岩と岩の間をジャンプしながら、進んだ。と、Y美の姿が岩の上に現れなくなった。僕が探しながら進むと、岩の間から、川岸にいる小学生らしい二人の女の子と話をしているY美の姿が見えた。話を聞きながら、Y美はふんふんと頷いている。
 ようやく追いついた僕を見て、Y美が女の子たちに言った。
「この子はね、うちに居候しているの。同じクラスの男の子なんだけど、チャコって言うんだよ」
「おもしろい。チャコって言うんだ」背の高いほうの女の子が繰り返した。
「近所に住むF田さんちの姉妹だよ。上は小学六年生の雪ちゃん、下は小学四年生の幸ちゃん」と、Y美は僕に紹介すると、さっそく本題に入ると言わんばかりに話を続けた。
「幸ちゃんがね、理科の宿題で、きれいな鉱石を集めているんだって。エメラルドのきれいな鉱石はいっぱい見つかったけど、みんな深い川の中にあるから、採れないんだって」
「浅瀬にもあるんじゃないかな」と、僕が言うと、すでに他の子たちが占拠していて浅瀬では採らせてもらえない事情を幸ちゃんが話した。
「どうしよう。このままじゃ一つも集められないよ」と、幸ちゃんが項垂れると、Y美が
「大丈夫よ、幸ちゃん。チャコが川に入って採ってくれるから」と言った。そして、僕のほうを見て、「ね、採って。川に潜って」と、命じるのだった。
「え、でも水着持ってるんですか」雪ちゃんがお姉さんらしい気遣いを示してY美に問うと、「心配しなくても平気。パンツ一枚になるから」と、Y美があっさり答える。
 気が進まなかったが、Y美の口調は、断ることを許さない強い気迫がこもっていた。やむを得ず、岩陰で服を脱ぎ、彼女たちが見ていない処で川に入ってしまおうと、この場を移動しようとすると、Y美が「どこへ行くつもり? 早くこの場で脱ぎなさいよ」と、指示した。その調子は、この二三日の優しいY美とは別の、それ以前のY美のものだった。僕は観念して靴を脱ぎ、シャツとズボンと靴下とアンダーシャツを脱いだ。姉妹は固唾を飲んで僕がパンツ一枚になるのを見守っていた。
 恐る恐る川の中に入る。冷たい。岸の近くは膝の辺りまでの深さで、川底は砂だった。幸ちゃんが棒切れで川の真ん中を指している。その辺りにきれいなエメラルドがいっぱいあると言う。その方角に進むと、突然深くなり、一気に顎まで水に浸かった。流れは緩やかに感じられたが、気を抜くと、どんどん流されてしまうだろう。僕は川の中央の、水面下にある大きな丸い岩にしがみ付いた。そして、岩の上に両膝をついて、川の中を覗いた。確かに深緑色を湛えた鉱石が川底であやしく光っているのが認められる。僕は深呼吸すると潜って川底に向かった。
 一つ二つ、翡翠を採って、川の中から手を伸ばして幸ちゃんに手渡すと、幸ちゃんは「きれい」と感激の声を上げて、岩に広げたハンカチの上に並べるのだった。
 僕の肩や胸が冷たい川の水で赤くなっているのを見て、雪ちゃんが「冷たいだろうな。可哀想に」と呟いた。「でもせっかくだから、たくさん採ってもらいなよ」と妹に言い、「ね、いいんですよね。チャコさんにやってもらって」とY美に胸の前で両手を合わせて、聞く。
「もちろんだよ。チャコはチャコだから呼び捨てでいいよ」とY美が答えると、雪ちゃんは「やったね。ついでに私のも採ってもらおう」と、嬉しそうに飛び上がって、一段向こうの岩に上がると、川底に目を光らせた。
 6個目の鉱石を幸ちゃんの手に届けると、岸からY美が「もういいよ。いったん上がって」と声を掛けた。
 岩陰で、びしょ濡れの体を小さなハンカチを使って拭いていた。足元に脱いだ物が一式揃っている。と、Y美が来て、「上がってもいいとは言ったけど、休んでもいいとは言ってないよ。まだまだ鉱石を採ってもらうから、服なんか着ないでこっちに来て」と言った。そして、向こうの岩の上に立つ雪ちゃんに手を振った。
 Y美に従って、パンツ一枚の裸で岩を越える。木が茂って、散歩道から見えにくくなっているのがありがたかった。ここから先は、散歩道と川がどんどん乖離する。それに従って川幅も短く、急激な流れになるのだった。
 岩の上から川底を見下ろしていた雪ちゃんは、Y美の後から僕がパンツ一枚のままここまで来たのを一瞥して、口に軽く手を当てた。雪ちゃんが「ね、いっぱいあるでしょ」と、川底を覗いているY美に同意を求めた。僕は岩の上から爪先を伸ばして、ゆっくりと川に浸かった。今度は先ほどよりも深く、足が付かない。僕は立ち泳ぎしながら、川底に沈んでいる大きな岩まで向かった。川幅が狭い分、流れが速い。岩に掴まって、特に流れが速い方角を確認すると、そちらに行かないように注意して潜った。
 翡翠を幾つか採って、川岸に這い上がり、岸からだいぶ離れた岩の上のハンカチに並べて行く。彼女たちは岸から鉱石を探しているから、採ったら自分で置きに行くように言われたのだった。「少なくとも20個は採ってね」とY美が言った。まだやっと半分だ、と僕は肩で息をしながら思った。
 潜ったが鉱石を見つけられず、水面から顔を出すと、Y美と姉妹が岸から僕を見下ろしていた。「もっと向うだよ」と、雪ちゃんが棒切れで指す。その方向は流れの速い箇所だった。「そっちは流れが速いから」と僕が言うと、これがY美にカチンときたようで、「生意気なこと言ってるんじゃない。とっとと行きなさい」と、怒鳴った。
 用心はしたものの、予想以上に速い流れで、潜ったまま僕はバランスを崩し、流されかかった。底に古木が沈んでいて、なんとかこれに掴まることができたものの、息をするためには古木から手を放し、水の外に顔を出さなければならない。しかし、古木から手を離したら最後、たちまち流されて、岩に激突するかもしれない。
 古木に掴まったまま僕は思案した。この古木は流れに対して縦向きに横たわっている。このまま古木を伝って端まで行けば岩に掴まることができるのではないか。しっかり岩をつかんで上がれば、流されずに水上に顔を出せるばかりか、そのまま岸に上がることも可能だ。Y美たちとは反対側の岸だが、流されて怪我をするよりも良い。
 僕は川底の古木をしっかり股で挟んで、少しずつ急激な流れの方向へ体を運んだ。古木に抱きついた形で、ちょうど木を攀じ登るように前進しながら、僕はこの古木に釣糸が何重にも巻きつけられていることに気づいた。そして、僕が進むと、パンツがずり下がるのだった。釣糸についた釣り針が僕のパンツに引っかかっていた。
 釣り針はしっかりパンツに食い込んでいて、とても簡単に取れる代物ではなかった。引っ張っても釣糸は切れない。僕は息が苦しくなっていた。僕は古木にしがみ付いて、前進を続けた。パンツがどんどん下がってゆく。ついに足首から抜けた。僕は予想通り岩に掴まることができ、そのまますいすいと上がって、川の外へ顔を出すことに成功した。
 岩に掴まったまま僕が顔を出すと、「大丈夫?」とY美の声が聞こえた。白い水しぶきのおかげで、彼女たちは僕のパンツが脱げてしまったことに気づいていないようだった。僕は取りあえず大きく頷いた。そして、全裸になってしまったこの事態をどう切り抜けばよいのか、頭をひねった。

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