酒の力が彼らをいつも以上に残酷にしたようだった。素っ裸の僕に手を後ろに組んで腰を前後に揺するように命じた。ためらう僕をEさんが急かす。裸んぼのままじゃ寒いだろうから少し運動させてやるのだと、ヘッドの彼女である、眼光鋭い女の人が言った。
彼らを喜ばせないと、この場から解放してもらえない。Eさんがじっと僕のおちんちんを隠す手の甲を見つめている。僕は言われた通り、腰を前後に揺すった。小さく縮んだおちんちんが揺れて、今の僕の惨めな状況を強調した。
中学生の彼らは、ビールを飲みながら話し合った。眼光鋭い彼女が腰振りにむなしく励む僕を指して、
「素っ裸のままいろんな踊りをさせることにしよう」
と言い、ヘッドの顔を見た。ヘッドはにこにこして頷いている。彼女の提案にヘッドが反対する筈のないことは、彼女が一番よく知っているようだった。
みんなが手拍子を打つ中、僕は盆踊りや泥鰌すくいを踊らされた。泥鰌すくいは手拭いも笊も無しだった。踊りの先生だと皆から呼ばれている女の人が僕に細かい指導をする。泥鰌すくいは初めてだったので、踊りの先生から一から教わった。おっとりした顔立ちに似ず短気な性格で、それはもしかするとアルコールの影響かもしれないが、少しでも間違えると、ビール瓶で背中やお尻を叩かれるのだった。
感情がこもっていない、もっと大きく表現して、と踊りの先生の叱声が飛ぶ。かなり激しい運動だった。おまけにビール瓶で叩かれるお尻が熱を帯びてじんじんと痛い。Eさんが妙に真面目な顔をして、僕の無理矢理踊らされている様子を見つめている。ヘッドの彼女がそれを指摘すると、
「だってすごく不思議なんだもん。小学一年生の頃からずっと知ってる同い年の男の子が、こんな風に真っ裸で、何もかも晒して踊ってるんだから」
と、視線を僕の方へ固定したまま、答える。
盆踊りでは両腕を高く上げる所作がある。Eさんだけは手拍子も打たずに、大きく見開いた目で、
「脇の下もツルツル、おちんちんもツルツル。全然毛が生えてくる感じがしないね」
と、呟く。ヘッドの彼女が「ほんとだね」と、相槌を打った。
過激な指導を受けながらの踊りでくたくたになった。
「体をかなり動かしたね。真っ裸でも寒くなくなったでしょ」
と、踊りの先生が言って、僕の肩に手を置いた。肌が汗ばんでいる。踊りの先生は手に付いた僕の汗を制服の紺のスカートで拭いた。
Eさんは、僕が月曜の夜にY美たちに素っ裸にされ、それ以来、木曜の今日まで、一度も衣類をまとうことなく野外で過ごしていることについて、興味しんしんの様子だった。次々と変な質問をする。忘れたい恥ずかしいことをたくさん思い出させるので、何も答えたくなかったが、適当に応えをはぐらかすと、Eさんは突然兇暴化して僕の乳首を抓るのだった。
「答えないと、次はおちんちんだよ」
「答える。答えるから許して」
どんな恥ずかしい目に遭ったか、仔細に報告させられた。ヘッドの彼女も踊りの先生も、ここ数日で僕が連続的に受けた性的ないじめについて、知りたがった。彼女たちは、僕の話に一々大袈裟に反応した。「信じられない」と口々に言い、同情を寄せる振りをして逆に僕の羞恥心を煽った。
ヘッドと二人の男の人たちは、話の輪に加わらなかったが、女子が僕の体験談を面白がっているのが許せないようだった。彼らは一斉に立ち上がり、僕のそばに来ると、女子たちに今からもっと実になる実験をしようと切り出した。そして、僕を力ずくで土の上に仰向けに寝かせた。両足を持ち上げ、耳の横に爪先を着地させる。
柔軟な体だとヘッドの仲間の男が口を尖らせながら感心した。お尻の穴からおちんちんの袋の裏側まで、全てを露わにされた僕は、もうこれ以上の性的ないじめには耐える自信がなく、力いっぱいに泣き叫んで、「やめてください。もう許して」と、哀願を繰り返した。が、ヘッドの彼女はもちろん、Eさんまでもが歓声と黄色い悲鳴を上げるので、男の人たちは、彼女たちを喜ばせた満足感に浸るばかりだった。
お尻の穴からおちんちんの袋にかけて、複数の指がまさぐる。おちんちんの皮を引っ張ったり剝いたりする手があった。女の人たちは、こうもじっくり男の子の下半身を観察したのは初めてだと口々に言い、お尻の穴とおちんちんの袋の間が女子と違っていることに改めて感動しているようだった。ヘッドと二人の男の人たちは、女子たちは妙なことに感心すると言って笑った。
乳首に強い刺激を感じて声を上げてしまうと、
「こいつ、感じてるよ」
と、ヘッドが嘲笑した。踊りの先生が僕の乳首に唇を付けて、吸うのだった。誰かの手がおちんちんの皮を剥いて、敏感な部分を乱暴に触った。僕の体が電流を流されたかのようにぴくぴくと跳ね上がった。
「もう一回、射精するところが見たい」
Eさんが恥ずかしそうにリクエストした。何本もの指におちんちんやおちんちんの袋をまさぐられて煩悶する僕は、「やめて」とだけ叫んだ。ぎゅっと握られたおちんちんの袋に鋭い痛みが走った。気が付くとヘッドがおちんちんの袋を握ったまま、僕を怖い目で睨み付けていた。
放してください、と哀願する僕にヘッドは冷たい声で条件を出した。Eさんの要望に答えることを承知したら、おちんちんの袋から手を放すというのだった。承知しない場合は、握りつぶすと言って、握力を加えた。苦痛に喘ぐ僕は、素っ裸のまま仰向けのまま両足を高く上げさせられた不自由な体を右に左に揺らして、許しを乞う。
女の人たちがどっと笑った。承知するかしないかを訊ねているのに、僕はひたすら許されることばかりを求めている。頭が悪い、と冷やかすのだった。おちんちんの袋がヘッドの握力で締めつけられて、悲鳴を上げる僕の目から涙がこぼれる。
四つん這いにさせられて、周囲を犬のように歩かされた。股の間に今度は踊りの先生が腕を入れて、おちんちんの袋を掴んでいる。しっかり四つん這いで歩かないと、おちんちんの袋に容赦のない力が加えられる。僕は必死になってEさんの手を叩く方へ向かった。ようやくEさんの膝元までたどり着くと、「いい子ね」と、頭を撫でてくれる。次はヘッドとその仲間たちが手を叩いた。
踊りの先生は動きが少しでも遅くなると、おちんちんの袋を潰す勢いでぎゅっと握り締めた。激痛に動きが更に遅くなる。と、今度は空いた手がお尻に振り下ろされた。お尻にくっきりと手形が残るような、乾いた音がした。泥鰌すくいを強制的に踊らされていた時も叩かれていたが、その時は命じられた通りにできないからという理由があったけど、今回のは極めて理不尽だった。おちんちんの袋に激痛を感じたまま四つん這いで歩き続けるのは不可能に近い。それでも踊りの先生は女の人だから、この種の痛みには理解が浅く、少しのためらいもなく、おちんちんの袋を握りながら、お尻を叩きつけるのだった。
お尻を高く上げるようにヘッドの彼女に命令される。変なモーターの音がする。ローターだとヘッドが笑いながら僕に教えてくれた。ホテルの販売機で面白半分に買って試したのだが、ヘッドの彼女は痛がるばかりだった。ヘッドは根気よく彼女の体の向きを変え、そっとパンツの上から当てたり、挿入を試みたりしたが、彼女が快感を得ることはなかった。ローターを彼女の通学鞄に押し込んで、それ以来、すっかり忘れていたのだが、今ここに僕の露わにされたお尻の穴を見ているうちに、不意に思い出した。そこで、彼女に取り出させたのだと語った。
何かぬるぬるした液体がお尻に塗られた。ヘッドの彼女の指が白いどろどろしたものにまみれているのを見て、それがマヨネーズだと分かった。この不良グループは酒を飲みながら弁当を開いていた。携帯用の小さなマヨネーズ容器がまるまる一つ残っていたから、容器ごとお尻の穴に押し込もうと、ヘッドの彼女は考えたようだった。
「いや、やめて。やめてください」
何本もの腕に押さえつけられて悶えながら哀願を繰り返す僕のお尻の中にチューブが少しずつ入ってゆく。途中でチューブからマヨネーズがぐいぐいと押し出された。冷たくて、どろりとした液体が腸の中に溜まる。
胸を土に付けてお尻を高く上げさせられたまま、お腹とお尻の気持ち悪さに耐える。何をされるのか分からない恐ろしさに一糸まとわぬ体がぶるぶると震えた。時折Eさんが横から手を伸ばしておちんちんを引っ張ったり、ぐるぐる回したりする。ヘッドが頻りに感嘆していた。ヘッドの彼女がマヨネーズをその携帯用の小型容器ごとお尻の穴に押し込むので、お尻の穴がぐいぐい広がるのだった。
マヨネーズが潤滑油になってゆっくり少しずつ拡張される。だから痛みはかなり抑えられていた。恐怖感はあったけど体を強張らせるとかえって痛くなるのを経験的に知らされていたので、恥ずかしくてたまらなかったけど、うんちを出すように軽く踏ん張った。と、激しい便意が突然襲ってきた。
「トイレに行かせてください、お願い」
喘ぎながら訴える僕の必死な思いは伝わらなかった。無情にも「もう少し我慢」とだけヘッドの彼女に返された。全身からどっと汗が噴き出る。マヨネーズの容器を引き抜いたら、同時にうんちが出てしまう。四つん這いの姿勢で悶える僕に酒盛りの人たちが冷たい笑い声を浴びせた。
「山の中に便所はないよ」
「出ちゃう。トイレに」
「だから、便所なんかねえんだよ」
ヘッドが怒鳴った。同級生のEさんが激しい便意に苦しむ僕を不思議そうに見ていた。踊りの先生が僕の髪の毛を掴んで広場の隅へに向かった。四つん這いのまま引き摺られる僕のお尻をヘッドの彼女がぴしゃりと叩いた。
「うんちするところ、見ててあげる」
そう言って、Eさんが涙で濡れた僕の頬を指で拭った。
お尻の穴に挿入されたマヨネーズの容器を引き抜くのはヘッドの役目だった。これを抜くとうんちが僕の意思とは関係なく出てくる。みんなが今か今かとお尻を囲んでいることが背後から感じられた。僕は相変わらず四つん這いの姿勢を取らされていた。カウントダウンの掛け声がして、ぬるぬるとお尻の中の異物が引き抜かれた。
女の人たちの黄色い悲鳴、ヘッドとその仲間の男たちの豪快な笑い声がごちゃ混ぜになって響いた。みんなが囃す中、うんちを出し切ってしまった僕は、両膝を曲げたまま上体を起こされ、犬がチンチンするポーズを取らされた。両手を頭の後ろで組んだ僕は、正面に回ったみんなの前でおしっこを命じられるのだった。
小さく縮んだおちんちんからおしっこをするには、まず皮から亀頭を出さなければならない。おちんちんの皮を剝こうとすると、いきなりヘッドの彼女に手の甲を叩かれた。僕のおちんちんなのに僕が触れてはいけないと言う。ヘッドの彼女がおちんちんの皮をめくりながら、
「皮かむりの男の子は、こうやって皮から出してからおしっこするの」
と、Eさんに説明した。露出させられた亀頭にEさんだけでなく、踊りの先生も目を大きくする。
「でも、今日は特別に皮をかむった状態でおしっこをしてもらうよ。どうなるか、私も見てみたいし」
と、ヘッドの彼女が亀頭を再び皮で包むと、皮の先っぽを引っ張った。象の鼻みたいだねとEさんがぼそりと呟くと、踊りの先生がくすくすと笑った。爪先立ちのチンチンのポーズを取らされている僕がよろめくたびに象の鼻が揺れるとEさんが指摘し、みんなの爆笑を誘った。
尿意も限界に近かったが、これ以上我慢しても晒し者にされている時間が長引くだけだった。うんと引っ張られたのでおちんちんの皮の先っぽがしなびている。大きく息を吐くと同時に覚悟を決めた。おちんちんがじわっと膨らみ、皮の先っぽからじょぼじょぼとおしっこが出た。爪先立ちの不安定な格好だったのと、皮をすっぽりと被ったままだったのが原因で、おしっこはいろんな方向に飛んだ。自分の踝にもおしっこがかかった。土に溜まったおしっこが流れて僕の爪先立ちする足の指を浸した。
四つん這いのまま歩かされ、山道を下る。横から押された僕は斜面を転がった。下の住宅地の路上から子どもの遊ぶ声が聞こえた。うんちをした僕のお尻をヘッドとその仲間たちが葉や蔦で拭いた。そばには雨水の溜まった窪みがあり、ヘッドの彼女が僕の頭髪を掴んでそこへ落した。窪みは僕の腰までの深さがあった。踊りの先生が木の枝で僕の背中を押したり頭を叩いたりして、体中を淀んだ水の中に沈める。
必死にもがいて、なんとか窪みから這い上がった僕をヘッドとその仲間たちが小突く。湿地の中を素っ裸のまま転がり回ったので、全身が泥まみれになった。山道に戻ると、四つん這い歩行を再び強いられた。ヘッドの彼女が時折「お尻を振りなさいよ」と、命じて木の枝でお尻を叩く。
羞恥に喘ぎながら海淵山に入った。山の中腹に住宅地と隣接した広い公園があった。山側から入ったところは人の気配がなかった。トイレの前の手洗い場までアスファルトの上を四つん這いで進むと、そこでもう一度、お尻やおちんちんを念入りに洗われた。周りを茂みに覆われていて、人に見られることはないのが災いした。不良学生たちは僕のお尻にローターを挿入しようと試みた。水道水でお尻を充分に濡らし、再びマヨネーズを用いて、いやがる僕の抵抗を封じながら、ローターを少しずつお尻に入れる。
半分ほど埋まったところで、スイッチが切り換えられた。お尻の中で固い異物が震動し始めた。力が入らない。腸が喘いでいる。
「あら、気持ち良さそうにお尻を振ってる」
「恥ずかしいでしょうね。お尻の穴にローター入れられて悶える姿を同級生に見られてしまうなんて」
ヘッドの彼女と踊りの先生が嘲笑する。
「もう抜いて。抜いてください。許して」
頭の中が真っ白になりながら、何度もお願いをする。
「うるさいな。私たちの前でオナニーするって約束したら言う通りにしてやるよ」
「します。しますから」
腸から電流が流れて、痺れる感覚が首筋、耳朶、指の先まで伝わる。体が焼けるように熱い。この頭が変になるような感覚は、おちんちんへの直接的な刺激と違って終わりがないような気がする。いつまでも果てしなく続く。直線的にクライマックスへ向かう射精の快楽とは種類が異なる。ずっとこの感じ、痺れたまま悶えているしかない。
「ほんとにオナニーすんのかよ」
「しますから、もうとめて、とめてください」
ヘッドの彼女に約束させられた僕は、ローターのスイッチをとりあえず一旦切ってもらったが、相変わらずお尻の中に挿入されたままだった。汗まみれの上体をコンクリートの床にへったりと付けて、うつ伏せになる。息の乱れがなかなか収まりそうもない。
立ち上がることを許された僕は両手でおちんちんを隠しながら、うなだれていた。
「お前はお尻の中のローターを抜きたいと思ってるでしょうけど、許さないから。ローターをお尻に入れたままオナニーするんだよ。彼女たちが見ている前で、精液を出すんだよ。分かったかな」
ヘッドがそう言い付けると、僕のおでこを人差し指で弾いた。仲間の男の人たちが僕を脂ぎった目で僕を睨む。
「そんな。落ちてしまいます」
実際、それは少しずつお尻からぬるぬると抜け落ちていた。このままでは、おちんちんをしごく間に抜け落ちてしまう。
「こいつ、俺たちのこと、馬鹿にしてる。むかつく野郎だな。素っ裸のくせによ」
顔を真っ赤にして男が怒りの感情を露わにし、僕の乳首を抓った。ヘッドがやめるように命じなければ、ローターがお尻から抜け落ちたと思う。男は渋々僕の乳首から指を放した。僕は痛みの残る乳首を撫でてから、そっと涙を拭いた。
「生意気なこと言うと、お前、こいつらに殺されるぞ」
ヘッドが連れの男たちを目で示して、言った。
「こいつらは、ちょっとおかしいからな。それより、お前のお尻の中のローターだけど、オナニーの途中で落としたら罰を与える。いいよな? しっかり挟むんだよ」
「おもしろいものが見られてよかったね、Eちゃん」
ヘッドの彼女が楽しそうにEさんに言った。Eさんはそれには答えず、異様に大きくなった目でじっと僕の体を頭の先からつま先まで、まるで今初めて見るかのように眺め回して、僕が一糸もまとっていないのを何度も確認していた。こんな風に見られながら、精液を出すまでおちんちんを自ら扱かなければならないのかと思うと、羞恥の念が一層強くなって、辛く、憂鬱な気持ちになる。
ローターを途中で落としたら、どんな罰を受けるか分からない。みんなの見ている前で立ったままオナニーをさせられる恥ずかしさと悔しさに恐怖が混じる。三本の指で支えたおちんちんを軽く前後に揺する。ついさっきEさんの手で射精させられたばかりなので、反応が鈍い。
「あと三分以内に出さなかったら、罰を与えるからね」
なかなかおちんちんが大きくならないので、ヘッドの彼女が苛立って、こう宣言した。僕は必死になって指を震わせ、意識を集中させる。いろんな人に裸の恥ずかしい姿を笑われ、射精の瞬間を見られてきた。今更恥ずかしがっても仕方がない、と自分に言い聞かせ、異物を落とさないようにお尻をきゅっと締め付ける。
射精までのラストスパートで激しく動いたので、お尻のローターがぬるぬると抜けて、落ちそうになった。思わず喘ぎ声を上げる僕を女の人たちが冷やかに見つめている。お尻をうんと締めたがローターが落ちるのはもはや時間の問題だった。そうなると、それよりも先に射精しなくてはならない。おちんちんの袋からせり上がってきた快楽の波がいよいよ高まってきた。しかし、いよいよ射精というその瞬間、コンクリートに物体の落ちる音がした。
「あ、落とした」
Eさんの鋭い叫び声がして、目の前が一瞬暗くなった。白い液体が飛んだのは、明らかにその後だった。
コンクリートに落ちた精液を腹這いになって拭わされた僕は、正座を強制され、射精よりも先にローターを落としたことに対する罰を待った。
「そうだね。公園の中央広場で土下座してもらうのはどう?」
少し考えてからヘッドの彼女が提案した。
「もちろん、素っ裸のままでね」
みんなはすぐに賛成した。海淵山の中腹からふもとまで広がる広い公園は、人のいる場所といない場所がはっきりしている。樹木に囲まれた今の場所とは違って、ふもと近くの中央広場ではたくさんの学生、子連れのお母さんたちで賑わう。不良学生たちは、いやがる僕を蹴ったり押したりしながら、人の集まる方へ連れて行った。
身に何も纏わない格好で、よろめきながら中央広場に辿り着いた。学生や小さな子どもを連れたお母さんたちが動きを止めてじっと僕を見つめる。
「何あの子、はだかじゃない」
「いじめられてるのかな。関わったらやばいかも」
「かわいそう。はだかんぼにしなくてもいいのに」
ひそひそと話す声が体に刺さる。ヘッドや仲間の男たちが怒声を発し、近寄りがたい恐ろしい雰囲気を殊更に醸しているので、誰も僕を助けることができない。だったらせめて見ない振りをしてくれたら僕の羞恥も少しは和らぐのに、周囲の人たちは、何かに憑かれたようにじっと視線をこちらに向けている。
中央広場の砂場と水飲み場の横のコンクリートに正座させられた僕は、ヘッドの彼女が教える謝罪の言葉を復唱し、砂の散らばるコンクリートへ何度も頭をこすり付けた。ふと頭を上げるとヘッドたちの姿が見えなくなっていた。素っ裸のまま置き去りにされた僕を周囲の人たちがじろじろ見ている。大学生風の男の人と女の人が来て、僕の裸の肩に手を置いて「大丈夫かい」と声を掛けてくれた。僕は正座の姿勢を崩さず、股間に手を当てたまま、頷いた。途端に涙がどっとこぼれた。と、出入り口にヘッドたちがいて、僕を手招きしているのが見えた。直線50メートルくらいの距離だった。手招きにして、僕に早く来るように指示している。
ヘッドの彼女がなかなか立ち上がろうとしない僕に苛立ちを覚えているのか、手招きの動作が乱暴になっていた。このまま愚図愚図していても、彼らの怒りが倍増するだけなのは明らかだった。彼らは正座する僕を立ち上がらせ、力ずくで歩かせ、引き続き僕を恥ずかしい目に遭わせるに違いない。
衣類の提供を申し出る大学生風の男の人と女の人の好意を断った僕は、おちんちんに手を当てて立ち上がると、二人の男女への挨拶もそこそこに、不良学生の待つ出入り口に向かって走った。
力ずくで公園の外に連れ出された僕は、おちんちんを両手で隠しながら訴えた。ヘッドとヘッドの彼女は、町の中を歩かせようと考えている。僕は、山道に戻ってみなみ川沿いを歩くコースで帰りたかった。人の圧倒的に少ない道を選ぶのは当然だと思う。一糸まとわぬ素っ裸の身を意識しながら、僕はヘッドに何度も懇願した。町の中を歩かされるのは勘弁して欲しかった。
「大丈夫だよ。私がそばにいるから」
Eさんが僕の横で励ましてくれた。結局、僕の願いは聞き入れてもらえず、おずおずと公道を歩き始める。速度を緩めると後ろからヘッドの彼女にお尻を蹴られた。
不良中学生たちに囲まれて歩かされる僕を、通行人たちは見て見ぬ振りをした。先導するヘッドが突然振り返って、言った。角を曲がると女子高生の集団が歩いてくる。一人で歩いてみろ、と命じるのだった。おちんちんは隠さず、普通に歩く。少しでも隠したら恥ずかしい目に遭う時間がそれだけ長引くだけだと脅かされた。ためらっていると、ヘッドの連れの男に頬をはたかれた。
「後ろで様子を見ているから、行ってらっしゃい」
ヘッドの彼女が陽気に手を振った。
頭の中が真っ白だった。部活動帰りの女子高生たちが二十人くらい、道いっぱいに広がって歩いてくる。楽器の黒いケースが夕日を反射していた。賑やかな話し声が水中に潜ったかのように遠くに聞こえる。僕は自分が素っ裸であることを意識から取り払って、一歩を踏み出した。
普通に、あたかも服を着ているかのように歩く。だけど、いきなり尖った石を踏んだ僕は、それだけで自分が裸足であることを意識してしまう。と、生暖かい風が吹いて、剥き出しの胸や背中、股間を通り抜ける。
女子高生たちの黄色い悲鳴の中には、短い笑い声もふんだんに混じっていた。僕は彼女たちに取り囲まれた。地面に楽器のケースが次々と置かれた。なんで裸なのかと問われた僕は、今までと同じ答えを繰り返した。川で泳いでいて服をなくした、と聞いて女子高生たちは僕に対する警戒を緩め、無遠慮に体を眺め回した。ここでも、僕は手でおちんちんを隠したい衝動を必死に抑える。
髪の長い女子高生が僕のことを知ってると言い、Y美とおば様の名前を出した。僕が昨夜から帰らないので心配しているそうだ。発見次第、すぐに連れて帰るように頼まれているとその女子高生が語った。
髪の長い女子高生は僕が逃げるのではないかと心配して、しっかり腕を掴んで放さないのだった。
「ちょっと、おちんちんぐらい隠してあげなよ」
ぐいぐいと僕を引っ張って歩く女子高生に友人たちが声を掛けたが、彼女は取り合わなかった。それよりも一刻も早く僕を家に帰そうと考えているらしかった。
彼らを喜ばせないと、この場から解放してもらえない。Eさんがじっと僕のおちんちんを隠す手の甲を見つめている。僕は言われた通り、腰を前後に揺すった。小さく縮んだおちんちんが揺れて、今の僕の惨めな状況を強調した。
中学生の彼らは、ビールを飲みながら話し合った。眼光鋭い彼女が腰振りにむなしく励む僕を指して、
「素っ裸のままいろんな踊りをさせることにしよう」
と言い、ヘッドの顔を見た。ヘッドはにこにこして頷いている。彼女の提案にヘッドが反対する筈のないことは、彼女が一番よく知っているようだった。
みんなが手拍子を打つ中、僕は盆踊りや泥鰌すくいを踊らされた。泥鰌すくいは手拭いも笊も無しだった。踊りの先生だと皆から呼ばれている女の人が僕に細かい指導をする。泥鰌すくいは初めてだったので、踊りの先生から一から教わった。おっとりした顔立ちに似ず短気な性格で、それはもしかするとアルコールの影響かもしれないが、少しでも間違えると、ビール瓶で背中やお尻を叩かれるのだった。
感情がこもっていない、もっと大きく表現して、と踊りの先生の叱声が飛ぶ。かなり激しい運動だった。おまけにビール瓶で叩かれるお尻が熱を帯びてじんじんと痛い。Eさんが妙に真面目な顔をして、僕の無理矢理踊らされている様子を見つめている。ヘッドの彼女がそれを指摘すると、
「だってすごく不思議なんだもん。小学一年生の頃からずっと知ってる同い年の男の子が、こんな風に真っ裸で、何もかも晒して踊ってるんだから」
と、視線を僕の方へ固定したまま、答える。
盆踊りでは両腕を高く上げる所作がある。Eさんだけは手拍子も打たずに、大きく見開いた目で、
「脇の下もツルツル、おちんちんもツルツル。全然毛が生えてくる感じがしないね」
と、呟く。ヘッドの彼女が「ほんとだね」と、相槌を打った。
過激な指導を受けながらの踊りでくたくたになった。
「体をかなり動かしたね。真っ裸でも寒くなくなったでしょ」
と、踊りの先生が言って、僕の肩に手を置いた。肌が汗ばんでいる。踊りの先生は手に付いた僕の汗を制服の紺のスカートで拭いた。
Eさんは、僕が月曜の夜にY美たちに素っ裸にされ、それ以来、木曜の今日まで、一度も衣類をまとうことなく野外で過ごしていることについて、興味しんしんの様子だった。次々と変な質問をする。忘れたい恥ずかしいことをたくさん思い出させるので、何も答えたくなかったが、適当に応えをはぐらかすと、Eさんは突然兇暴化して僕の乳首を抓るのだった。
「答えないと、次はおちんちんだよ」
「答える。答えるから許して」
どんな恥ずかしい目に遭ったか、仔細に報告させられた。ヘッドの彼女も踊りの先生も、ここ数日で僕が連続的に受けた性的ないじめについて、知りたがった。彼女たちは、僕の話に一々大袈裟に反応した。「信じられない」と口々に言い、同情を寄せる振りをして逆に僕の羞恥心を煽った。
ヘッドと二人の男の人たちは、話の輪に加わらなかったが、女子が僕の体験談を面白がっているのが許せないようだった。彼らは一斉に立ち上がり、僕のそばに来ると、女子たちに今からもっと実になる実験をしようと切り出した。そして、僕を力ずくで土の上に仰向けに寝かせた。両足を持ち上げ、耳の横に爪先を着地させる。
柔軟な体だとヘッドの仲間の男が口を尖らせながら感心した。お尻の穴からおちんちんの袋の裏側まで、全てを露わにされた僕は、もうこれ以上の性的ないじめには耐える自信がなく、力いっぱいに泣き叫んで、「やめてください。もう許して」と、哀願を繰り返した。が、ヘッドの彼女はもちろん、Eさんまでもが歓声と黄色い悲鳴を上げるので、男の人たちは、彼女たちを喜ばせた満足感に浸るばかりだった。
お尻の穴からおちんちんの袋にかけて、複数の指がまさぐる。おちんちんの皮を引っ張ったり剝いたりする手があった。女の人たちは、こうもじっくり男の子の下半身を観察したのは初めてだと口々に言い、お尻の穴とおちんちんの袋の間が女子と違っていることに改めて感動しているようだった。ヘッドと二人の男の人たちは、女子たちは妙なことに感心すると言って笑った。
乳首に強い刺激を感じて声を上げてしまうと、
「こいつ、感じてるよ」
と、ヘッドが嘲笑した。踊りの先生が僕の乳首に唇を付けて、吸うのだった。誰かの手がおちんちんの皮を剥いて、敏感な部分を乱暴に触った。僕の体が電流を流されたかのようにぴくぴくと跳ね上がった。
「もう一回、射精するところが見たい」
Eさんが恥ずかしそうにリクエストした。何本もの指におちんちんやおちんちんの袋をまさぐられて煩悶する僕は、「やめて」とだけ叫んだ。ぎゅっと握られたおちんちんの袋に鋭い痛みが走った。気が付くとヘッドがおちんちんの袋を握ったまま、僕を怖い目で睨み付けていた。
放してください、と哀願する僕にヘッドは冷たい声で条件を出した。Eさんの要望に答えることを承知したら、おちんちんの袋から手を放すというのだった。承知しない場合は、握りつぶすと言って、握力を加えた。苦痛に喘ぐ僕は、素っ裸のまま仰向けのまま両足を高く上げさせられた不自由な体を右に左に揺らして、許しを乞う。
女の人たちがどっと笑った。承知するかしないかを訊ねているのに、僕はひたすら許されることばかりを求めている。頭が悪い、と冷やかすのだった。おちんちんの袋がヘッドの握力で締めつけられて、悲鳴を上げる僕の目から涙がこぼれる。
四つん這いにさせられて、周囲を犬のように歩かされた。股の間に今度は踊りの先生が腕を入れて、おちんちんの袋を掴んでいる。しっかり四つん這いで歩かないと、おちんちんの袋に容赦のない力が加えられる。僕は必死になってEさんの手を叩く方へ向かった。ようやくEさんの膝元までたどり着くと、「いい子ね」と、頭を撫でてくれる。次はヘッドとその仲間たちが手を叩いた。
踊りの先生は動きが少しでも遅くなると、おちんちんの袋を潰す勢いでぎゅっと握り締めた。激痛に動きが更に遅くなる。と、今度は空いた手がお尻に振り下ろされた。お尻にくっきりと手形が残るような、乾いた音がした。泥鰌すくいを強制的に踊らされていた時も叩かれていたが、その時は命じられた通りにできないからという理由があったけど、今回のは極めて理不尽だった。おちんちんの袋に激痛を感じたまま四つん這いで歩き続けるのは不可能に近い。それでも踊りの先生は女の人だから、この種の痛みには理解が浅く、少しのためらいもなく、おちんちんの袋を握りながら、お尻を叩きつけるのだった。
お尻を高く上げるようにヘッドの彼女に命令される。変なモーターの音がする。ローターだとヘッドが笑いながら僕に教えてくれた。ホテルの販売機で面白半分に買って試したのだが、ヘッドの彼女は痛がるばかりだった。ヘッドは根気よく彼女の体の向きを変え、そっとパンツの上から当てたり、挿入を試みたりしたが、彼女が快感を得ることはなかった。ローターを彼女の通学鞄に押し込んで、それ以来、すっかり忘れていたのだが、今ここに僕の露わにされたお尻の穴を見ているうちに、不意に思い出した。そこで、彼女に取り出させたのだと語った。
何かぬるぬるした液体がお尻に塗られた。ヘッドの彼女の指が白いどろどろしたものにまみれているのを見て、それがマヨネーズだと分かった。この不良グループは酒を飲みながら弁当を開いていた。携帯用の小さなマヨネーズ容器がまるまる一つ残っていたから、容器ごとお尻の穴に押し込もうと、ヘッドの彼女は考えたようだった。
「いや、やめて。やめてください」
何本もの腕に押さえつけられて悶えながら哀願を繰り返す僕のお尻の中にチューブが少しずつ入ってゆく。途中でチューブからマヨネーズがぐいぐいと押し出された。冷たくて、どろりとした液体が腸の中に溜まる。
胸を土に付けてお尻を高く上げさせられたまま、お腹とお尻の気持ち悪さに耐える。何をされるのか分からない恐ろしさに一糸まとわぬ体がぶるぶると震えた。時折Eさんが横から手を伸ばしておちんちんを引っ張ったり、ぐるぐる回したりする。ヘッドが頻りに感嘆していた。ヘッドの彼女がマヨネーズをその携帯用の小型容器ごとお尻の穴に押し込むので、お尻の穴がぐいぐい広がるのだった。
マヨネーズが潤滑油になってゆっくり少しずつ拡張される。だから痛みはかなり抑えられていた。恐怖感はあったけど体を強張らせるとかえって痛くなるのを経験的に知らされていたので、恥ずかしくてたまらなかったけど、うんちを出すように軽く踏ん張った。と、激しい便意が突然襲ってきた。
「トイレに行かせてください、お願い」
喘ぎながら訴える僕の必死な思いは伝わらなかった。無情にも「もう少し我慢」とだけヘッドの彼女に返された。全身からどっと汗が噴き出る。マヨネーズの容器を引き抜いたら、同時にうんちが出てしまう。四つん這いの姿勢で悶える僕に酒盛りの人たちが冷たい笑い声を浴びせた。
「山の中に便所はないよ」
「出ちゃう。トイレに」
「だから、便所なんかねえんだよ」
ヘッドが怒鳴った。同級生のEさんが激しい便意に苦しむ僕を不思議そうに見ていた。踊りの先生が僕の髪の毛を掴んで広場の隅へに向かった。四つん這いのまま引き摺られる僕のお尻をヘッドの彼女がぴしゃりと叩いた。
「うんちするところ、見ててあげる」
そう言って、Eさんが涙で濡れた僕の頬を指で拭った。
お尻の穴に挿入されたマヨネーズの容器を引き抜くのはヘッドの役目だった。これを抜くとうんちが僕の意思とは関係なく出てくる。みんなが今か今かとお尻を囲んでいることが背後から感じられた。僕は相変わらず四つん這いの姿勢を取らされていた。カウントダウンの掛け声がして、ぬるぬるとお尻の中の異物が引き抜かれた。
女の人たちの黄色い悲鳴、ヘッドとその仲間の男たちの豪快な笑い声がごちゃ混ぜになって響いた。みんなが囃す中、うんちを出し切ってしまった僕は、両膝を曲げたまま上体を起こされ、犬がチンチンするポーズを取らされた。両手を頭の後ろで組んだ僕は、正面に回ったみんなの前でおしっこを命じられるのだった。
小さく縮んだおちんちんからおしっこをするには、まず皮から亀頭を出さなければならない。おちんちんの皮を剝こうとすると、いきなりヘッドの彼女に手の甲を叩かれた。僕のおちんちんなのに僕が触れてはいけないと言う。ヘッドの彼女がおちんちんの皮をめくりながら、
「皮かむりの男の子は、こうやって皮から出してからおしっこするの」
と、Eさんに説明した。露出させられた亀頭にEさんだけでなく、踊りの先生も目を大きくする。
「でも、今日は特別に皮をかむった状態でおしっこをしてもらうよ。どうなるか、私も見てみたいし」
と、ヘッドの彼女が亀頭を再び皮で包むと、皮の先っぽを引っ張った。象の鼻みたいだねとEさんがぼそりと呟くと、踊りの先生がくすくすと笑った。爪先立ちのチンチンのポーズを取らされている僕がよろめくたびに象の鼻が揺れるとEさんが指摘し、みんなの爆笑を誘った。
尿意も限界に近かったが、これ以上我慢しても晒し者にされている時間が長引くだけだった。うんと引っ張られたのでおちんちんの皮の先っぽがしなびている。大きく息を吐くと同時に覚悟を決めた。おちんちんがじわっと膨らみ、皮の先っぽからじょぼじょぼとおしっこが出た。爪先立ちの不安定な格好だったのと、皮をすっぽりと被ったままだったのが原因で、おしっこはいろんな方向に飛んだ。自分の踝にもおしっこがかかった。土に溜まったおしっこが流れて僕の爪先立ちする足の指を浸した。
四つん這いのまま歩かされ、山道を下る。横から押された僕は斜面を転がった。下の住宅地の路上から子どもの遊ぶ声が聞こえた。うんちをした僕のお尻をヘッドとその仲間たちが葉や蔦で拭いた。そばには雨水の溜まった窪みがあり、ヘッドの彼女が僕の頭髪を掴んでそこへ落した。窪みは僕の腰までの深さがあった。踊りの先生が木の枝で僕の背中を押したり頭を叩いたりして、体中を淀んだ水の中に沈める。
必死にもがいて、なんとか窪みから這い上がった僕をヘッドとその仲間たちが小突く。湿地の中を素っ裸のまま転がり回ったので、全身が泥まみれになった。山道に戻ると、四つん這い歩行を再び強いられた。ヘッドの彼女が時折「お尻を振りなさいよ」と、命じて木の枝でお尻を叩く。
羞恥に喘ぎながら海淵山に入った。山の中腹に住宅地と隣接した広い公園があった。山側から入ったところは人の気配がなかった。トイレの前の手洗い場までアスファルトの上を四つん這いで進むと、そこでもう一度、お尻やおちんちんを念入りに洗われた。周りを茂みに覆われていて、人に見られることはないのが災いした。不良学生たちは僕のお尻にローターを挿入しようと試みた。水道水でお尻を充分に濡らし、再びマヨネーズを用いて、いやがる僕の抵抗を封じながら、ローターを少しずつお尻に入れる。
半分ほど埋まったところで、スイッチが切り換えられた。お尻の中で固い異物が震動し始めた。力が入らない。腸が喘いでいる。
「あら、気持ち良さそうにお尻を振ってる」
「恥ずかしいでしょうね。お尻の穴にローター入れられて悶える姿を同級生に見られてしまうなんて」
ヘッドの彼女と踊りの先生が嘲笑する。
「もう抜いて。抜いてください。許して」
頭の中が真っ白になりながら、何度もお願いをする。
「うるさいな。私たちの前でオナニーするって約束したら言う通りにしてやるよ」
「します。しますから」
腸から電流が流れて、痺れる感覚が首筋、耳朶、指の先まで伝わる。体が焼けるように熱い。この頭が変になるような感覚は、おちんちんへの直接的な刺激と違って終わりがないような気がする。いつまでも果てしなく続く。直線的にクライマックスへ向かう射精の快楽とは種類が異なる。ずっとこの感じ、痺れたまま悶えているしかない。
「ほんとにオナニーすんのかよ」
「しますから、もうとめて、とめてください」
ヘッドの彼女に約束させられた僕は、ローターのスイッチをとりあえず一旦切ってもらったが、相変わらずお尻の中に挿入されたままだった。汗まみれの上体をコンクリートの床にへったりと付けて、うつ伏せになる。息の乱れがなかなか収まりそうもない。
立ち上がることを許された僕は両手でおちんちんを隠しながら、うなだれていた。
「お前はお尻の中のローターを抜きたいと思ってるでしょうけど、許さないから。ローターをお尻に入れたままオナニーするんだよ。彼女たちが見ている前で、精液を出すんだよ。分かったかな」
ヘッドがそう言い付けると、僕のおでこを人差し指で弾いた。仲間の男の人たちが僕を脂ぎった目で僕を睨む。
「そんな。落ちてしまいます」
実際、それは少しずつお尻からぬるぬると抜け落ちていた。このままでは、おちんちんをしごく間に抜け落ちてしまう。
「こいつ、俺たちのこと、馬鹿にしてる。むかつく野郎だな。素っ裸のくせによ」
顔を真っ赤にして男が怒りの感情を露わにし、僕の乳首を抓った。ヘッドがやめるように命じなければ、ローターがお尻から抜け落ちたと思う。男は渋々僕の乳首から指を放した。僕は痛みの残る乳首を撫でてから、そっと涙を拭いた。
「生意気なこと言うと、お前、こいつらに殺されるぞ」
ヘッドが連れの男たちを目で示して、言った。
「こいつらは、ちょっとおかしいからな。それより、お前のお尻の中のローターだけど、オナニーの途中で落としたら罰を与える。いいよな? しっかり挟むんだよ」
「おもしろいものが見られてよかったね、Eちゃん」
ヘッドの彼女が楽しそうにEさんに言った。Eさんはそれには答えず、異様に大きくなった目でじっと僕の体を頭の先からつま先まで、まるで今初めて見るかのように眺め回して、僕が一糸もまとっていないのを何度も確認していた。こんな風に見られながら、精液を出すまでおちんちんを自ら扱かなければならないのかと思うと、羞恥の念が一層強くなって、辛く、憂鬱な気持ちになる。
ローターを途中で落としたら、どんな罰を受けるか分からない。みんなの見ている前で立ったままオナニーをさせられる恥ずかしさと悔しさに恐怖が混じる。三本の指で支えたおちんちんを軽く前後に揺する。ついさっきEさんの手で射精させられたばかりなので、反応が鈍い。
「あと三分以内に出さなかったら、罰を与えるからね」
なかなかおちんちんが大きくならないので、ヘッドの彼女が苛立って、こう宣言した。僕は必死になって指を震わせ、意識を集中させる。いろんな人に裸の恥ずかしい姿を笑われ、射精の瞬間を見られてきた。今更恥ずかしがっても仕方がない、と自分に言い聞かせ、異物を落とさないようにお尻をきゅっと締め付ける。
射精までのラストスパートで激しく動いたので、お尻のローターがぬるぬると抜けて、落ちそうになった。思わず喘ぎ声を上げる僕を女の人たちが冷やかに見つめている。お尻をうんと締めたがローターが落ちるのはもはや時間の問題だった。そうなると、それよりも先に射精しなくてはならない。おちんちんの袋からせり上がってきた快楽の波がいよいよ高まってきた。しかし、いよいよ射精というその瞬間、コンクリートに物体の落ちる音がした。
「あ、落とした」
Eさんの鋭い叫び声がして、目の前が一瞬暗くなった。白い液体が飛んだのは、明らかにその後だった。
コンクリートに落ちた精液を腹這いになって拭わされた僕は、正座を強制され、射精よりも先にローターを落としたことに対する罰を待った。
「そうだね。公園の中央広場で土下座してもらうのはどう?」
少し考えてからヘッドの彼女が提案した。
「もちろん、素っ裸のままでね」
みんなはすぐに賛成した。海淵山の中腹からふもとまで広がる広い公園は、人のいる場所といない場所がはっきりしている。樹木に囲まれた今の場所とは違って、ふもと近くの中央広場ではたくさんの学生、子連れのお母さんたちで賑わう。不良学生たちは、いやがる僕を蹴ったり押したりしながら、人の集まる方へ連れて行った。
身に何も纏わない格好で、よろめきながら中央広場に辿り着いた。学生や小さな子どもを連れたお母さんたちが動きを止めてじっと僕を見つめる。
「何あの子、はだかじゃない」
「いじめられてるのかな。関わったらやばいかも」
「かわいそう。はだかんぼにしなくてもいいのに」
ひそひそと話す声が体に刺さる。ヘッドや仲間の男たちが怒声を発し、近寄りがたい恐ろしい雰囲気を殊更に醸しているので、誰も僕を助けることができない。だったらせめて見ない振りをしてくれたら僕の羞恥も少しは和らぐのに、周囲の人たちは、何かに憑かれたようにじっと視線をこちらに向けている。
中央広場の砂場と水飲み場の横のコンクリートに正座させられた僕は、ヘッドの彼女が教える謝罪の言葉を復唱し、砂の散らばるコンクリートへ何度も頭をこすり付けた。ふと頭を上げるとヘッドたちの姿が見えなくなっていた。素っ裸のまま置き去りにされた僕を周囲の人たちがじろじろ見ている。大学生風の男の人と女の人が来て、僕の裸の肩に手を置いて「大丈夫かい」と声を掛けてくれた。僕は正座の姿勢を崩さず、股間に手を当てたまま、頷いた。途端に涙がどっとこぼれた。と、出入り口にヘッドたちがいて、僕を手招きしているのが見えた。直線50メートルくらいの距離だった。手招きにして、僕に早く来るように指示している。
ヘッドの彼女がなかなか立ち上がろうとしない僕に苛立ちを覚えているのか、手招きの動作が乱暴になっていた。このまま愚図愚図していても、彼らの怒りが倍増するだけなのは明らかだった。彼らは正座する僕を立ち上がらせ、力ずくで歩かせ、引き続き僕を恥ずかしい目に遭わせるに違いない。
衣類の提供を申し出る大学生風の男の人と女の人の好意を断った僕は、おちんちんに手を当てて立ち上がると、二人の男女への挨拶もそこそこに、不良学生の待つ出入り口に向かって走った。
力ずくで公園の外に連れ出された僕は、おちんちんを両手で隠しながら訴えた。ヘッドとヘッドの彼女は、町の中を歩かせようと考えている。僕は、山道に戻ってみなみ川沿いを歩くコースで帰りたかった。人の圧倒的に少ない道を選ぶのは当然だと思う。一糸まとわぬ素っ裸の身を意識しながら、僕はヘッドに何度も懇願した。町の中を歩かされるのは勘弁して欲しかった。
「大丈夫だよ。私がそばにいるから」
Eさんが僕の横で励ましてくれた。結局、僕の願いは聞き入れてもらえず、おずおずと公道を歩き始める。速度を緩めると後ろからヘッドの彼女にお尻を蹴られた。
不良中学生たちに囲まれて歩かされる僕を、通行人たちは見て見ぬ振りをした。先導するヘッドが突然振り返って、言った。角を曲がると女子高生の集団が歩いてくる。一人で歩いてみろ、と命じるのだった。おちんちんは隠さず、普通に歩く。少しでも隠したら恥ずかしい目に遭う時間がそれだけ長引くだけだと脅かされた。ためらっていると、ヘッドの連れの男に頬をはたかれた。
「後ろで様子を見ているから、行ってらっしゃい」
ヘッドの彼女が陽気に手を振った。
頭の中が真っ白だった。部活動帰りの女子高生たちが二十人くらい、道いっぱいに広がって歩いてくる。楽器の黒いケースが夕日を反射していた。賑やかな話し声が水中に潜ったかのように遠くに聞こえる。僕は自分が素っ裸であることを意識から取り払って、一歩を踏み出した。
普通に、あたかも服を着ているかのように歩く。だけど、いきなり尖った石を踏んだ僕は、それだけで自分が裸足であることを意識してしまう。と、生暖かい風が吹いて、剥き出しの胸や背中、股間を通り抜ける。
女子高生たちの黄色い悲鳴の中には、短い笑い声もふんだんに混じっていた。僕は彼女たちに取り囲まれた。地面に楽器のケースが次々と置かれた。なんで裸なのかと問われた僕は、今までと同じ答えを繰り返した。川で泳いでいて服をなくした、と聞いて女子高生たちは僕に対する警戒を緩め、無遠慮に体を眺め回した。ここでも、僕は手でおちんちんを隠したい衝動を必死に抑える。
髪の長い女子高生が僕のことを知ってると言い、Y美とおば様の名前を出した。僕が昨夜から帰らないので心配しているそうだ。発見次第、すぐに連れて帰るように頼まれているとその女子高生が語った。
髪の長い女子高生は僕が逃げるのではないかと心配して、しっかり腕を掴んで放さないのだった。
「ちょっと、おちんちんぐらい隠してあげなよ」
ぐいぐいと僕を引っ張って歩く女子高生に友人たちが声を掛けたが、彼女は取り合わなかった。それよりも一刻も早く僕を家に帰そうと考えているらしかった。
全然戸塚ヨットスクールの方が甘い!この小説読んでみたらナオス君が戸塚ヨットスクールの何倍も辛い体験をしてることが分かります。
できたら1月1回を目標に頑張って頂けたら嬉しいです(*´∇`)