F-35B がアメリカのカリフォルニアで、空中給油中に接触して墜落した事故を受けて、一部報道で 「岩国配備の同型機の機体の安全性が云々・・・」 と言う論調の記事があった。
・・・・・・・、うん、この記事を書いた記者、よく調べもせずに書いたね。
何故なら、空中給油中の接触事故って機体云々はほぼ関係無いからだ。
先ず、前提となる知識として、米軍の空中給油には2種類の方法がある。
1つは "空軍式" と呼ばれる 「フライングブーム方式」。
これは給油を受ける側の機体の背面に給油口が有り、給油機側の下部から操作翼の付いたブームを伸ばしてブームを操作して位置を合わせ、給油口に接続する方法。
もう一つが "海軍式" の 「プローブアンドドローグ方式」。
こっちは先端にスリットの入った漏斗状の 「ドローグ」 と呼ばれるエアシュートが付いた給油ホースを給油機後方に伸ばし、それに受給機側機体のプローブを突っ込んで接続する方法。
空軍式は給油時、受給側の機体は給油機との相対位置をホールドするだけで良く、接続操作は給油機側で行ってくれる。
と言うか、給油口がパイロットから見えない位置にあるので、それしか出来ない。
まあ、これはこれでかなり難しい事ではあるんだけど、後述する理由で "海軍式" よりはかなり楽だと思う・・・。
海軍式はドローグとの位置合わせを受給機側のパイロットが行わなくてはいけない。
つまり、めっちゃ繊細な機体コントロールが求められるのだ。
更に、ドローグは給油ホースを後方に流しているだけだから、気流の影響を受けやすく、状況によっては動き回るので更に難易度が上がる。
メリットとしては、給油機側の操作が必要ない為、ホースさえ増設すれば複数機体への同時給油が可能である事。
但し、これが受給機側の難易度を更に上げる原因となっている。
複数機へ同時給油をするとなると、受給機同士の接触事故を避ける為、ホースとホースの間を十分に開けないといけない。
となるとホースの取り付け位置はどうしても翼端に近くなってしまう。
実際、今回事故を起こした給油機 "KC-130J" も左右の翼の先端近くに一本ずつ、計二本の給油ホースを備えている。
そこからホースを後ろに流すと、ドローグは "翼端流" と呼ばれる乱流の影響を受け、揺れ動いてしまうのである。
(空軍式はその影響を受けないよう、機体下方にブームを伸ばす様になっている。)
その揺れ動くドローグにプローブを突っ込まなければならないので、そりゃ鬼のように難しいのである。
で、F-35 の場合、A型は "空軍式" 、B・C型は "海軍式" を採用している。
これは納入先が主に A型は空軍、B型は海兵隊、C型は海軍であるからだ。(例外あり)
つまり、今回事故を起こした F-35B は海軍式の鬼難しい方だったのである。
だから、今回の接触事故は機体云々の問題じゃ無く、事故当時の気流の状態とパイロットの技量の問題であると思う。
まあ、給油システムの欠陥だと言われればそうかもしれないが・・・。
そうはいっても今更システムの変更は不可能だし、やれる事は A.I.制御での自動給油システムの開発ぐらいかなぁ。
NASAがそれに近いシステムの研究をしてるみたいだけど・・・。
おまけ
翼端流とは。
通常、翼の上は圧力が低く、下側は高くなっている。
この圧力差が揚力と成り、飛行機を持ち上げて飛ばしているんだけど、この圧力差が翼端が抜けていく事で乱流を発生させているんだね。
実際には渦巻き状に風が舞っていて、大型機の翼端流に小型機が巻き込まれると墜落しかねないほど大きく強い物らしい。
この渦は飛行抵抗となって燃費を悪化させる為、この渦を小さくして燃費を改善させる為に、最近の長距離を飛ぶ旅客機の翼端には "ウイングレット" と呼ばれる小さな翼が付けられている。
この "ウイングレット" で圧力差を分散させて渦を小さくしているんだね。
まあ、この辺の話は厳密に言えば結構難しので、大体そんな感じって事で理解して下さいな。
実際、俺もよく分かってないし・・・。(汗)