以前ふらりと近所のスコーピオさんへ寄った時にタカハシのV1赤道儀の中古品を見掛けた。
錆や傷から古さを感じさせるが何とも言えない金属の塊感と造形美に「いいなこれ!」とずっと気になっていて補修部品調査やレストア方法の検討に自分の用途と使い勝手の調査などしているうちに売れてしまった。
ベランダ観望ではハイランダーやFS60ならカメラ三脚とZERO経緯台で 何とかなるが105SDPやMAXIではうすうす無理を感じていた。カサイAZ-3でも導入しようか、小型の赤道儀にしようか、アイベルの微動付きHF経緯台にしようかくるくる考えが回っていたところ先日のTOA130がトドメとなり何とかしようとの思いが強くなった。
かなりAZ-3に傾いていたが、経緯台ではなく赤道儀であれば今買える中華製ではなくP2ZやNJPとか機関車のような重厚感や一つ一つ物づくりを感じさせる部品の塊のような機械ものの工業製品にはとてても魅力を感じる。とはいえ赤道儀はEM200を持ってはいる。しかしこれをちょっと星見したい時に設置・撤収をさらっと行えるイメージが全くわかない。事前に計画して時間を十分確保している遠征ならともかく。
そんな中でまたもふらりとスコーピオさんへ寄ったら中古の90S赤道儀を見つけた。
EM200より小柄でGP赤道儀より数段頑丈そうな筐体。ちょっと持たせてもらったら軽い!これなら組んだままベランダへ出し入れできそう。その日はちゃんと考えるためにそのまま帰った。売れてしまったら縁がなかっただけのこと。
数日後再度スコーピオさんへ注文していた部品を受け取りに行く。その時もまだ90Sは残っていた。
よーく観察してみる。三脚は少し短い。伸ばしても不動点は1200mmほどで、自宅ベランダでは子午線越えとか低高度の対象とか振り回すとあちこちぶつかりそうだし三脚の足の開きも大きく邪魔になりそう。
しかしこの金属の塊のしっかり感はオモチャではなくちゃんと使える赤道儀だとひしひしと感じる。
一度家へ戻ってEM200を組んでみてメタル三脚ごと持ち上げてみたが窓の段差を超えてベランダへ出るのはできないことは無いが危険だ。他にも色々考えてみた。大型バッテリやPCの接続は不要、乾電池でモータードライブを駆動できる、南向きだから極軸合わせは厳しくても経緯台よりは追尾は楽、本体も再塗装すれば綺麗になる、不動点はベランダの手摺より低いが夏ならトレミー星団くらいは向けられそう等々。
だが決定的だったのは手動で微動ができること。粗動も微動もハンド操作可能というのは実はとても使い勝手が良い。
翌日またもスコーピオさんへ行き駐車場も1台分空いていてスムーズに入店できたし90S赤道儀もまだあったので購入した。
家で組んでみると本当にちょうど良さを感じる。取扱に重すぎず、10センチクラスなら安定性から軽すぎない。
このままひょいっと持ち運びできる。
各部を操作してみて粗動のフリクションは多少重いもののガタ無くスムーズに動く。微動も同じく軽くはないがとてもスムーズ。車のステアリングも重いのが好きだからこのフィーリングは問題ない。
この重さはテーパーローラーベアリングへのテンションというよりグリスの粘度の影響かな?
大型の古い旋盤やフライス盤を触った時のようなガタや軟さのない機械工作精度の高さが感じられる。
当時のカタログには以下のような記載がある。
- 円錐コロ軸受を極軸に4個、赤緯軸に2個使用。
- 赤経はウォームギアによる全周微動、ウォームホイール歯数144。
- 赤緯は扇型ギアによる±25°の部分微動。
- 追尾誤差 P-Dモーターで対恒星時0.1%以下。
- 同架重量 8kg - MAX 12kg
モータドライブは純正品と思われるものが付いているが複数あるうちどのタイプのものかはよくわからない。
極軸望遠鏡のスケールは円のマークが2つで文字はない。もし外で使うのであればPolar2001がWindowsXPにインストールされた状態でまだ持っているので極軸合わせは何とかなるだろう。
アリ型アダプタを取り付けて試しに部屋の中でMAXIを載せてドローチューブあたりを指でツンツンしてみたが揺れはすぐ収まり実用十分な剛性はありそう。
画像で見るとのぺっとして見えるが実物は結構質感は高い。シリアル番号から1985年製のようで37年も経っているが機械的にはとてもしっかりしている。やっぱMade in Japanだよな。