またまたいい映画を見つけちゃいました。
「ガーンジー島の読書会の秘密」
(2018年 マイク・ニューウェル監督 フランスイギリス合作)
第2次世界大戦中にドイツ占領下にあったガーンジー島で行われた読書会をめぐるミステリー・・と紹介文にあったので、てっきりナチスドイツに関わる戦争ものかと思って見始めたのですが、
これがねえ、なかなかいいラブストーリーでした。
ミステリー要素は少なめかな。
「チャーリング・クロス街84番地」と少し似た雰囲気の、本好きな人たちのお話です。
主人公のジュリエット・アシュトンはユーモア小説を書いてベストセラー作家になりますが、本当に書きたいものはまだ書けていないと感じている。
そんな折に、彼女のところにガーンジー島の住人であるドーシー・アダムズという人から手紙が。
(ガーンジー島というのは、イギリス海峡にあるチャネル諸島の一つで、当時も今もイギリスの王室属領。独自の政府と議会を持っている)
彼が戦時中に手にいれた古本に、ジュリエットの名前と住所が書いてあった。戦争は終わり、ドイツ軍は去ったけど、ガーンジー島には本屋がない。そこでロンドンの本屋の住所を教えてもらえないだろうか、という趣旨の手紙でした。
しかも、その手紙には、第二次大戦中にドイツ軍から隠れるために読書会を開いていたという話が書いてありました。
ジュリエットは作家の好奇心からガーンジー島を訪れます。
第二次大戦中、ガーンジー島はドイツ占領下にあって、食糧もなく郵便も電信網も切られて人々は孤立状態でした。
そんな中でエリザベスという女性が一頭の豚を隠し持っていて、友人たちをパーティに招待します。
久しぶりに肉でお腹を満たした帰り道、彼らはドイツ軍に見つかり、咄嗟に「読書会をしていた」と答えます。その時、咄嗟に答えた読書会の名前が、
「読書とポテトピール・パイの会」
(The Guernsey Literary and Potato Peel Pie Society)
(ポテトピール・パイというのは、バターも小麦粉も使わずジャガイモとジャガイモの皮だけで作ったパイのこと)
ジュリエットはガーンジー島に滞在する間、読書会の面々と親しくなり、この読書会を思いついたエリザベスの存在を知りますが、彼女は島にはいません。そして、皆口が重く彼女のことを話したがりません。
エリザベスに何が起きたのか?
メインのストーリーはエリザベスの行方を追うミステリー。そして、ジュリエットとドーシーのラブロマンスです。
何しろ、読書会の面々はいずれも戦争で過酷な体験をしています。
「読書会は僕らの避難所でした。
闇の世界で手に入れた精神の自由、
新しい世界を照らすキャンドル、
それが読書でした・・」
とドーシーは書いています。
彼らは束の間、占領やドイツ軍を忘れて人間らしさを取り戻したのでした。
彼らを支えたのは、チャールズ・ラムの諧謔的なエッセイであり、シェークスピアであり、シャーロット・ブロンテの「嵐が丘」でした。
ジュリエットはエリザベスに何が起きたのかを探りながら、戦時中の厳しい島の生活を肌で感じ、次第に島の人たちに心を寄せていきます。
ドーシー(彼は豚飼いです)は、ジュリエットの婚約者(アメリカ人で金持ち)とは全くかけ離れた人物でしたが、互いに惹かれていきます。
最後に、エリザベスに起きた悲劇の全容も解明されます。
これは苦しい時代を仲間と共に本の力で乗り越えてきた勇気ある人々の物語。
とても素敵な物語です。
残念ながら、この小説をかいたメアリー・アン・シェイファーは、この本一冊しか残していないそうです。