しばらくのご無沙汰でした。
ちょっと風邪気味で熱も出たので、これはヤバいと思って近所の内科に行き、
抗体検査をしてもらった結果、
陰性。
ただの風邪ですね、といわれ、なんだ風邪なのね、とホッとしたものの、オミクロンが猛威を振るう中、ただの風邪といっても難しいところがあるので一週間自宅に閉じこもっていました。
もう完治したので大丈夫。
ちなみに、東京都では抗体検査は無料です。
で、久しぶりに中国の映画を見たので紹介します。
「フェアウェル」(ルル・ワン監督 2019年)
中国の映画はけっこう好きです。
なんだか、親戚の人の映像を見てるようで、ハリウッド映画とは違う親近感を感じます。
やっぱり私はアジア人なのねと、つくづく思います。
「フェアウェル」のストーリーはとてもわかりやすい。
主人公のビリー(女性)は幼い頃に中国から両親と共にNYにやって来た移民。
アメリカで育ったので、中国語はあまり堪能ではない。
ある日、ビリーの祖母ナイナイが末期ガンに侵され余命わずかと宣告され、両親は急遽中国に里帰りしますが、ビリーは来なくてよいと言われます。
ビリーはアメリカナイズされているので、祖母に真実を告げてしまう恐れがあったからです。
なぜなら、親戚一同はナイナイに余命わずかであることを隠し、ビリーの従兄弟の結婚式と称して、
親戚一同を集めて盛大な披露宴を開く計画をたてていたからです。
つまり、親戚一同はナイナイに嘘をつきとおすことを決意したわけです。
ビリーは両親が止めるのもかまわず、どうしても祖母に会いたくて両親の後から一人中国に行きます。
ビリーはナイナイに真実を伝えるべきだと言いますが、両親をはじめ親戚一同は最後まで嘘をつきとおすことをビリーに強要します。
「西洋では個人の命はその人のもの。でも、東洋では個人の命は全体の一部だ。家族や社会の一部さ」
とビリーの叔父は言います。
祖母の命は祖母だけのものではなく、家族や親戚一同に属している。だから親戚が真実を告げないという選択をしたのなら、それに従うしかないのだと。
いろんな場面でもう少しで嘘がバレそうになってハラハラするのだけど、ぎりぎりのところで回避され、
ナイナイは自分の病気について知らないまま、パーティを終える、というお話。
日本でも、最近は本人にガン宣告をするようになりましたが、私の母が亡くなった頃はガン宣告をすると死期が早くなるといわれ、父は母に嘘をつきとおしたものです。
でも、母は最期まで、もしかすると自分はガンなのではないかと疑心暗鬼になり、不安を抱いたまま亡くなっていきました。
この映画はもっとポジティブで親戚一同が何としても祖母に病気は快復しつつあると信じ込ませ、
結婚披露パーティを盛大に催すあたり、さすが中国、嘘も大きい。
そして、
「診断されて6年がたち・・
ナイナイは生きています。」
で、映画は終わります。
この盛大なパーティは功を奏したわけです。
でも、もしかすると、
祖母は気づいていて気づかないふりをしていたのかもしれない。
皆が自分をこんなに慕ってくれていることに感謝し、人生の最後の時間を大切に生きようと決意したのかもしれません。
それが祖母の気持ちを明るくポジティブに元気づけたので、寿命も延びたのかもしれない。
いずれにせよ、嘘は功を奏したわけで、めでたしめでたし。
また、ビリーが、中国とアメリカという二つの文化のはざまで、自分は一体どっちの文化圏の人間なのかと悩むシーンも度々あります。
アメリカの文化に染まったビリーは中国の親戚にはなじめないのですが、
ビリーにとって祖母はかけがえのない存在で、
それがまっすぐ伝わってくる映画でもありました。
もしかすると、ナイナイはビリーのこの気持ちに答えて、もうしばらく生きようと決意したのかもしれません。
私には、大家族の中で生きるというのがどういう感じなのか全くわからないのですが、
それはそれでけっこう大変そうでもあり、また、家族が助け合って生きるというのはこういうことなのか、と教えられた映画でもあります。
けっこう笑えるシーンもあって、中国映画、あまり見ない人にもお勧めです。