気分をかえて、今日はSFを。
amazonプライムで週末100円均一というのがあって、これもその一つです。
「移動都市/モータルエンジン」(クリスチャン・リバース監督 NZ・アメリカ合作 2018年)
あまり期待せずに観たのですが、最後まで一気見。掘り出し物です!
といっても、ほら、私は「スターウォーズ」の大ファンでSF大好き人間なので、誰にでもお勧めというわけにはいかないんですけど、SF好きならけっこうハマると思うな。
これ、過去のいろんなSFの要素が混じっていて、そのせいでつまらないと感じる人もいるようですが、私はかえって楽しめました。
ジブリっぽいところもあり、ターミネーターやスターウォーズやロード・オブ・ザ・リング的でもあり、これまでのSFの総集編みたいだけど、とにかく映像が斬新です。
脚本がピーター・ジャクソンで、そもそも彼が映画化に着手し、NZで撮影が行われたというピーター・ジャクソン肝入りの映画だもの。
原作はフィリップ・リーヴのSF小説「移動都市」
(英米で数々の賞を受賞している。全四部作の第一作)
ストーリーはシンプルな冒険もの。
かつて、60分戦争という量子エネルギー兵器を使った戦争があり、世界が60分で滅んでから千年後。世界は荒廃し、人々は移動都市で暮らしている。「ハウルの動く城」みたいに都市がまるごと巨大な車輪やキャタピラの上に乗って移動し、互いに捕食しあうという世界。
大小さまざまな移動都市があり、一番巨大な都市が「ロンドン」と呼ばれている。
「ロンドン」は小さな移動都市を呑み込み、資源と人を奪いながら生き延びる捕食者です。
これってまさに資本主義そのもの。移動都市が巨大なキャタピラで疾走しながら、小さな都市を呑み込む様子はまるでロンドンのシティが世界の金融を牛耳っている様子そのもの。キャタピラってキャピタリズムのシンボルかしら。
そう、この作品には、現代の弱肉強食の資本主義に対する批判と皮肉が込められているのですね。
しかも都市全体が中世のような階層社会で、下層民は奴隷のように扱われる。
主人公はヘスター・ショーという若い女性(原作では15歳なのだとか)。彼女は「ロンドン」の史学ギルド長であるヴァレンタインに母親を殺されたため、ヴァレンタインを殺そうとするが失敗。そこから物語は始まります。
ヴァレンタインは世界制覇を目論み、ヘスターがそれを阻止する鍵を握っている。
とまあ、よくあるストーリーではありますが、何しろ映像がすごい。
ヘスターを育てたのがシュライクという、かつて人間だったアンドロイド。このシュライクのエピソードがなかなか泣けます。
それにね、CGもこういう風に使うと生きてくるなあと感心します。
冒頭10分、ロンドンが小都市を呑み込む様子なんて、実写はもちろん、アニメでも表現できないすさまじい迫力で、釘付けになること請け合い。
しかも移動都市にしろ空飛ぶ飛行機のような乗り物にしろ、デザインが独創的で個性的。
宮崎アニメ+スチームパンクという感じかな。
SFも出尽くした感があり、アイデアもなかなか斬新なのがないなあと思っていたら、こう来たか。
スチームパンクといえば、ビッグフィッシュのゲーム「ザ・フール」に登場するスティームシティを思い出します(これはアイテム探しのゲームなので知ってる人は少ないと思うけど、私はこの種のゲームにずいぶんハマった)。
鉄や蒸気機関など機械が主役の産業革命時代のビクトリア朝スタイル、それをSFの世界に投入したのがスチームパンクというようですが、その結晶のような都市が、このモータル・エンジンなのです!
ちなみに、昔読んだSF小説クリストファー・プリーストの「逆転世界」も同じく移動都市についての物語で、この映画が出たとき、ついに「逆転世界」が映画化されたかと喜んだけど、残念ながら違った。
「逆転世界」もまた世界が滅んだ後の世界を描いていて、「移動都市」とは発想が違いますが、これまたユニークで面白かった。最後の最後、真相が明かされる場面では世界がひっくりかえったような気がしたものです。
本を読んだ後、あるいは映画を見た後で、世界がひっくり返るというのはあまりない経験ですが、その一つがこれでした。
映画版「移動都市」SF好きには超お勧めです。
久しぶりにワクワクしたなあ。
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