ついに26話(アニメの最終話)まで見てしまいました。
アニメ版「鬼滅の刃」
これは「ドラゴンボール」や「ワンピース」とは(似てるけど)一味違うアニメです。
何しろ日本的な情念がギュッと詰まった作品で、一話見るたびに次を見るのが辛くなってね。たぶん若い人たちはそうでもないのだろうけれど。
見ていない人のために簡単に説明すると、
これは日本版ヴァンパイアストーリーです。
時は大正時代。鬼と(呼ばれる一種のヴァンパイア)が出没し人を喰う。鬼に噛まれた人は鬼になる。
その鬼を退治するために、鬼殺隊という組織が作られます。猛烈な訓練の末に残った精鋭部隊が鬼殺隊となる。
その鬼殺隊の一員である、竈門丹次郎(かまどたんじろう)という若者が主人公。
丹次郎は鬼に家族を喰われてしまったのですが、妹の禰豆子(ねずこ)だけは生き延びます。ただし鬼になって。
丹次郎は禰豆子を人間に戻す方法を探すために禰豆子を背負って旅に出る。その途中で剣術使いに出会い猛特訓を受けて、鬼殺隊に入隊する、というのが序盤の立志編。
その鬼殺隊の隊員たち(それぞれユニーク)が遭遇する様々な鬼と戦うシーンが各エピソードになっています。
この鬼たちがすごくてね。
人を喰えば喰うほど強く大きくなっていく。
超高速で爆弾的破壊力のある毬の使い手とか、鼓を打つたびに空間が歪んで部屋が増殖する技の使い手とか、蜘蛛の糸を操って人を操り人形のようにしてしまう蜘蛛男とか、鬼のデザインもそれぞれ独特で面白い。
西洋のヴァンパイアと同じく無敵で傷を負ってもすぐに回復する。一度死んでいるので鬼を倒すのは容易なことではない。
この鬼たちの統領というか最後のボス的存在が鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)。
彼は人間のふりをして人間にまぎれて暮らしています。
彼は非情で邪悪なサイコパスでものすごく不気味。
(そもそも鬼になるとサイコパス的要素が増大するみたい)
この鬼舞辻無惨を倒して、禰豆子を人間に戻すのが最終目的。
でも、アニメ版は中盤まで。
丹次郎たちが蜘蛛男を倒して、鬼殺隊の司令部まで行き、柱と呼ばれる鬼殺隊の最強部隊と出会う。ここまで。
鬼舞辻無惨との対決が迫っているのだけど、
この続きは劇場版の映画で見てね、という感じかな。
鬼たちですが、日本的な情念がぎっしり詰まっていて、鬼ではあるけれど人間だった頃の記憶もあり、最後に鬼殺隊にとどめをさされる時に幼少時の出来事を回想したりします。
彼らには彼らの過酷な歴史がある。そういう歴史が鬼を生み出す、ということが明確に語られます。
どちらかというと「進撃の巨人」に近いかもしれない。かつては人間だったものが、人間を喰うようになる。
人を喰うのは人である、人の情念である、という設定からして日本的です。この世の理不尽さを余すところなく描いてみせるところ、幽霊譚に近いものがあるかもしれない。邪悪な鬼というより人の哀しさを凝縮した姿というか。
若い人たち、特に30~40代くらいの女性に受けているというのも納得です。
作者は女性であるという説もあり、なるほどなあ、と思いました。
殺戮シーンはかなり残虐で、血がドバっと飛び散るのだけど、通奏低音のように流れているのは、鬼を倒すというより彼らを成仏させてあげるといった慈悲の念なのかもしれない。だからバイオレンスよりも哀しみの方が勝っている。
そしてまた、女性の活躍も見事で、何より男性目線で描かれていない、というのも女性の人気の秘密かな。
女性の描き方は(時に少女漫画チックではあるけど)エロくない。これとても大事ね。男が描くと女は必ずエロくなるから。もう、ったく。
そして何より、ストーリーの幅広さかな。
まず言葉使いが非常にユニークで、登場人物の名前からして、よく考えたね、とうならされます。
鬼にしろ剣術にしろ変人たちの寄せ集めのような鬼殺隊の隊員たちにしろ、
世界をまるごと一つ創造するのは並大抵のことではなく(「ハリ・ポッター」の世界にも通じるところがある)、作者の力量は半端ないと思います。
漫画の方は完結したそうですが、これはぜひ漫画も読んでみたい。
最後はどうなるの、鬼舞辻無惨を倒すのだろうけれど、彼を倒しても世の中の理不尽さは変わらない。
日本の歴史を見てみても、第一次世界大戦、第二次世界大戦と、戦争の時代に突入していくわけで、第二、第三の鬼舞辻無惨が実際の歴史にも登場してきます。
鬼殺隊員自身が鬼にならねばいいが、と思います。
というわけで、まだ見ていない人は見てみるといいんじゃないかな。
見ていてけっこう辛いのだけど、でもやめられなくなるのよ、これ。
日本のアニメってすごいのね、と改めて思いました。
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