いやあ、毎日暑いですねえ。
もう脳味噌がゆだってスプーンですくって食べられそうなくらいの暑さですね。
今日は映画じゃなくて本を紹介します。
「エレノア・オリファントは今日も元気です」
(ゲイル・ハニーマン著 ハーパーコリンズジャパン)
発売後たちまちベストセラー入りし、35か国で翻訳。ブック・オブ・ザ・イヤー2017受賞。リース・ウェザースプーンが映画化に名乗りをあげたという本です。
しかも、これがデビュー作というから驚きます。
イギリスのグラスゴーに住んでいる30歳のエレノア・オリファントの物語。
彼女はごくありふれた会社の事務職員ですが、少々変わり者。
周囲の空気が読めず、会社でも浮いている。それでも仕事はきちんとこなすし、上司に認められ、昇進もする。
いわゆる発達障害、あるいはアスペルガー症候群の女性の話か、と思い読み進めていくうちに、
彼女の生い立ちが深く関係していることがわかってきます。
これ、ミステリーのジャンルには入っていないのだけど、けっこう謎が多く、
(たとえば、彼女は顔にやけどを負っているのだけど、いつどこで火事があった?
「私たち」とは誰のこと? 彼女の母はどこに住んでいる? 等々・・)
それらの謎が明かされるのが、ようやく、最後の数ページ。
大きなどんでん返しが来ます。
ここに来るまでが長い(全体で425ページ)。
途中で何度放り出しそうになったことか。どうでもいい日常が細々と描写されていて、こういうのが好きな人にはいいんだろうけれど、せっかちな私はかなり飛ばし読みしました。
大丈夫、飛ばし読みしてもストーリーはわかるから。
そして、最後に、
おお、そうだったのか!
おお、かわいそうなエレノア!
となるのですよ。
物語は、彼女自身の(空気読めない)目線で語られるので、その描写がユニークで面白い。所々笑える。
でも、エレノアの育った環境は決して生易しいものではありません。
彼女の母親の毒親ぶりは、とにかく凄まじい。
彼女は精神的にとことん追い詰められます。その虐待ぶりはハンパない。
彼女がまともに社会生活が出来ていることは、ほとんど奇跡に近いと思います。
これはフィクションだから語れる物語であって、現実はこうではありえないだろう、とも思います。
物語の中で、生き残り、サバイバルしたエレノアは、多くの若い女性たちに勇気を与えるだろうけれど、現実にそうした虐待を受けた人たちにとっては、
こんなの、嘘じゃん!
というストーリーでもあると思います。
実際に虐待を受けた人、今もなおそこからサバイバルするために苦悩している人たちにとって、これがどのような印象を与え、どのように受け止められるかは、私にはよくわかりません。
でも、現実に苦しんでいる人たちを確かに救える物語かというと、少々疑問に感じるところもあります。
特に、最後のどんでん返しはなかなかのもので、これを乗り越えたエレノアは凄いとしか言いようがない。
そういう本であることをあらかじめ知っておいてから読むのがいいかと思います。
それでも、一読の価値はあるし、多くの(普通の)女性たちに勇気を与える物語であるのは確かでしょう。