ないない島通信

「ポケットに愛と映画を!」改め。

「はやぶさ2最強ミッションの真実」津田雄一

2023-03-11 13:49:36 | 宇宙

「本日、人類の手が、新しい小さな星に届きました」

これは「はやぶさ2最強ミッションの真実」津田雄一著(NHK出版新書)の「プロローグ」にある文章です。

はやぶさ2が小惑星リュウグウに到達し、リュウグウの岩石のかけらを地球に持ち帰る、という壮大なミッションを成功させた、JAXAのプロジェクトマネージャー津田雄一氏が書いた本です。

専門的な言葉が多く、最初は全部読めるかなあと思いながら読み始めたのですが、

これが面白くてね。

惑星探査機開発チームのプロジェクトマネージャーでありながら、津田氏はまるで物語作者のような手腕で
はやぶさ2のプロジェクトを物語っていきます。

もちろん専門用語や難しい箇所はたくさんあるのですが、できるかぎり易しく解説しているし、何より時折はさまれるエピソードの数々がまさに「宇宙兄弟」と重なってきて、読み物として非常に面白くできています。

地球や火星などの惑星は球体なのに、リュウグウはなぜそろばん玉の形をしているのか、とか。

リュウグウはC型小惑星、一方、イトカワはS型小惑星と呼ばれている。違いは何か(望遠鏡で見えるスペクトルの違い)とか。

地球スイングバイとは何か(地球の重力を利用して速度や軌道を変えること)とか。

イオンエンジンとは何か、とか。

どうやって、はるか彼方の小惑星にクレーターを作り、地下物質を採取したのか、とか。

素人でもわかる小ネタ満載です。

しかも、登場人物たちがとてもユニークで、これまた「宇宙兄弟」を見ているかのよう。

たとえば、

「宇宙兄弟」に登場するNASAの日本人宇宙飛行士ムラサキさん、みたいなモヒカン刈りのシステムマネージャーがいたり、若い技術者たちがゲーム感覚で小惑星周回軌道の計算をしたり、マスコットチーム(マスコットはドイツの着陸探査機)のマネージャーである物静かで芯の強いドイツ人女性がいたり、はやぶさ2の打ち上げの際に「宇宙戦艦ヤマト」調の台詞で決めた種子島の職員がいたり・・

また、「リュウグウ」という名前はどのようにして決まったか、とか、リュウグウ上の各地点に命名された日本語の地名にはどんなものがあるか、とか・・

面白いエピソードが満載なのです。

後半は、はやぶさ2がリュウグウに到達してからのミッションになるのですが、もうワクワクしっぱなしでした。

映画「アポロ13」とか「アルマゲドン」とかを彷彿とさせます。

最初のタッチダウンでは、誤差1メートルというピンポイントでリュウグウに着陸したのです!

3億キロメートル彼方の人類未踏の天体に、たった1メートルの誤差でタッチダウンしたというのだから、ものすごい技術です。

1回目のタッチダウン成功の後、人工クレーターを穿つミッションを成功させ、このクレーターで舞い上がった地下物質を採取すべく、2回目のタッチダウンを試みるのですが、もうね、手に汗握る展開で面白かったなあ。

そして、技術力もさることながら、何よりモノを作るのは人間なのだ、ということを明確に表現していて実に爽快です。

チームあってのモノづくりなのだと。日本のモノづくりの原点がここにあるのだと。

ちょっと前に流行ったNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」みたいな雰囲気もあり、男たちの(女性もいますが)心意気というものを存分に感じさせてくれます。

男っていくつになっても少年(子ども)なんだねー。

そして、それを人生の中で存分に味わうことのできるJAXAの人たちは幸せな人たちだ。もちろん困難は山ほどあるだろうけど。

そう思ったのでした。そう思わせてくれる本です。

専門用語など難しいところも一杯あるけど、何とかこなしながら読み進めることをお勧めします。最後は、はやぶさ2プロジェクトに参加したJAXAの一員のような気持になること請け合いです。

津田雄一氏って、科学と文学の両刀使いなのですね。すごいなあ。

 

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「失敗を知って乗り越えたものなら、それはいいものだ」

2023-03-09 10:28:17 | 宇宙

H3ロケットは本当に残念でしたが、

アニメ「宇宙兄弟」を引き続き観ていたら、ムッタのこんな台詞に出会いました。

第56話、ムッタたちは宇宙飛行士候補生としてアメリカのヒューストンに渡り、宇宙飛行士の訓練を受けています。

その中に、小さなロケットに惑星探査機のようなローバーを搭載して打ち上げ、パラシュートで砂漠に降下し、目標地点にどのチームが先に到達するかを争う、チーム別の競争がありました。

ムッタたちは、低予算ながら砂漠の悪天候にも負けないローバーの開発に挑むのですが、その時のムッタの台詞がこれ。

「失敗して壊れるのを前提で、最低でも2機作れるくらいの余裕があった方がいい。

 モノ作りには、失敗することにかける金と労力が必要なんだよ。

 いい素材を使っているものがいいものとは限らない。だけど、失敗を知って乗り越えたものなら、それはいいものだ」

ちなみに、ムッタは宇宙飛行士になる前、自動車メーカーに勤めていたので、モノづくりには詳しいのです。

今回のH3ロケットの失敗は手痛いものだったと思いますが、

これにめげずにロケット開発に挑み続けてほしいと願っています。

ムッタたちのように、ねばり強く、どこまでもしぶとく、目標に向かってまっすぐに。

 

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H3ロケット打ち上げ

2023-03-07 17:57:21 | 宇宙

今朝、鹿児島県種子島宇宙センターからH3ロケットの打ち上げがあるというので、

固唾をのんで打ち上げ中継の画面を眺めていました。

先月、打ち上げ直前に中止になったH3ロケットですが、今日の種子島の空は青く澄みわたり、海もおだやかで、

絶好のロケット日和。

そして、10時37分55秒、

白い噴煙をあげながら、垂直に上昇していくH3ロケットの雄姿を眺めながら、

おお、すごいなあ、日本の技術は!

と感動していたのですが、5分ほどたって、発射中継をしていた人が、ロケットの速度が少しずつ落ちていってますねえ、と言うではありませんか。

やがて、第二エンジンに着火しないようだとの発表が。

そして、発射からまだ10分ほどしかたっていないのに、指令破壊が出されたという発表が出たのでした。

てっきり成功したと思ったのに、

あんなに堂々と空に向かって垂直に昇っていったのに、

なんてあっけない最期。

ロケットは地球周回軌道に乗らないと、予定されていない地点に落下する恐れがあるので、破壊指令を出して自爆するように設計されているそうです。

当然ながら、ロケットに搭載されていた「だいち3」という人工衛星も破壊されたのでした。

午後になって、JAXAの記者会見があり、その模様をずっと見ていたのですが、

なんかね、一生懸命記者たちの質問に答えている岡田匡史プロジェクトマネージャーの顔が「宇宙兄弟」に出てくるJAXAの職員と被ってきて、もう現実なのか、それとも「宇宙兄弟」の物語の中にいるのか、よくわからなくなってくるようでした。

本当に残念でしかたありません。

でも、これをバネに新たに改良を加え、いずれまた新しいロケットを完成させてくれることでしょう。

YouTubeにはロケットや衛星関連の動画がいっぱいあって、素人には難しいものが多いのですが、眺めているだけでも、日本の宇宙開発技術はすごいと思えてきます。

ただ、予算がねえ。

なんでもっとこの方面に予算を使わないんだろか、日本政府は。

防衛予算よりロケット開発だろ!
(ちょっと前までは、防衛予算より防災だろ、とか教育だろ、とか言ってたのですが)

ともあれ、今、JAXAでは皆が力を合わせて失敗の原因究明に当たっているようです。しばらく大変だろうなあ。職員たちの心痛やいかばかり。

何しろ高いからねえ、ロケットも衛星も。

失敗は痛手だけど、でも、失敗により進化することもできる。

そう信じてこれからも応援していきたいと思います。

そう遠くない未来に、日本の宇宙飛行士たちが、ヒビトたちのように月面に降り立つ日が来ると信じて。

 

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「宇宙兄弟」

2023-03-04 12:34:22 | 宇宙

前回「はやぶさ2」がリュウグウから採取した岩石のかけらを見てきた話を書きましたが、

今回はそれにまつわるちょっと不思議な偶然について書きたいと思います。

まずは、リュウグウの岩石の展示について教えてくれたのは、英語のミートアップで、たまたま私の向かいの席に座った男性でした。

「今、国分寺でリュウグウの岩石を展示してますよ」と言うので、ミートアップの後、さっそく行ってみました。

会場に入ったとたん、大きなスクリーンには、はやぶさ2が地球を出発し、はるかな宇宙空間を旅して、小惑星リュウグウに到達し、タッチダウンして岩石を回収し、そのサンプルケースを地球に送り届けるまでの映像が流れていました。

これを見た瞬間、私は目頭が熱くなって思わずこうつぶやいていました。

「これ、なんで忘れていたんだろう・・」

何が「これ」なのか、何を「忘れていた」のかもよくわからないのだけど、とにかくそう思ったのでした。

子どもの頃から夜空を見上げると不思議な気持ちになりました。おそらく誰もがある程度はそうなのだと思いますが。

人間はこの広い宇宙のどこかからやってきたに違いない、と私は確信しているのです。

じゃないと、あの夜空を見上げた時の不思議な胸の高まりや疼きは説明できない気がします。

翌日、日本語レッスンに来たA君にこのことを話すと、

「『宇宙兄弟』っていう漫画読んだことある?」

と言います。本のタイトルは知ってたんだけどね、有名なので。でも読んだことはなかった。

「今、Huluでアニメ版が配信されているから見てみるといいよ」

というわけで、さっそく見始めました。

そしてまた、ブログに「小惑星探査機はやぶさ2」を書いていたら、YouTubeでJAXA(宇宙航空研究開発機構)が日本人の宇宙飛行士を選抜したというニュースが流れ、記者会見の模様が中継されるところだったのです!

なんというタイミング。

しかも、A君が話していた「宇宙兄弟」はまさにこのJAXAによる宇宙飛行士の選抜試験とその後NASAから月面探査に派遣された日本人の宇宙飛行士の兄弟の話なのです。

なんかね、次々シンクロしていくこの不思議さと気持ちよさ。

で、今「宇宙兄弟」を見ているところです。

これ、99話もあるのよ。今30話目くらい。ヒビトがついに月面探査ロケットに乗り、ヒューストン宇宙センターから打ち上げられたところ。

JAXAの選抜試験って、本当にこうなのかどうかはわかりませんが、三次試験の様子が実にユニーク。

5人ずつ3チームに分けられた候補者たちが、2週間閉鎖空間で寝泊まりをして、その間に様々な課題をこなしつつ、突発的に起きる事態にどう対処するかを、試験官たちがカメラを通して見る、というもので、この閉鎖空間での2週間だけでもすごく面白い。

この2週間の後に、3チームがそれぞれ各2名ずつ、この人なら宇宙飛行士にふさわしいと思う人を、自分たちの中から選抜しなければならない、という過酷な試験です。

Aチームに配属された物語の主人公ムッタは二人の宇宙飛行士の選抜に思いがけない方法を提案するのですが、これがいかにもムッタらしく、おお、そうだよなあ、それしかないよね、と納得させられたのでした。

その後、ムッタは、ムッタより先に宇宙飛行士になった弟ヒビトが住むアメリカのヒューストン宇宙センターに赴くのですが、ここからはまた別の物語がスタートするようです。

いやあ、宇宙飛行士って大変なのね、というのが感想です。

現在、地球周回軌道を回っているISSと呼ばれる国際宇宙ステーションには、若田光一さんが搭乗していて(その前は野口聡一さんや土井さん星出さんなど日本の宇宙飛行士多数が搭乗した)、

世界各国からやってきた宇宙飛行士たちが同じ宇宙ステーションで仕事をしています。

宇宙から見たら、地球に国境なんてない。

この青い惑星で今、戦争が起きていること自体、信じられない気がします。

いずれ、人類はもっと目覚め、宇宙空間へ飛び立っていくことでしょう。

その頃にはもう、国境だの人種だの貧富の差だの政治的駆け引きだのといった人類特有のつまらない争いはすっかり消えていることでしょう。

そうであることを祈りつつ・・

「宇宙兄弟」残り60話以上を毎日楽しみに少しずつ見ていこうと思います。

 

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