越川芳明のカフェ・ノマド Cafe Nomad, Yoshiaki Koshikawa

世界と日本のボーダー文化

The Border Culture of the World and Japan

書評『エクスタシーの湖』

2009年12月09日 | 小説
『エクスタシーの湖』の書評がでました。共同通信から各地の新聞(信州新聞、山陽新聞、福井新聞ほか)に配信されたようです。
 佐々木暁さんの労作である装丁も、「装丁から文字組みまで、造本の美しさに惚れ惚れする」と、ベタ褒めでした。


一色こうき
「詩なのか、神話なのか、はたまた夢日記なのか」
 
 なにやら異様な小説だ。「マジックリアリズムとSFと純文学の境界域を越境する作家」と紹介されているが、本作ではもっと別の領域に入り込んでいる。詩なのか、神話なのか、はたまた夢日記なのか、とにかく規格外。

 文字列からして通常の小説の流れから外れ、あらぬ方向へとたゆたい目まぐるしいほど。しかし、豊穣なイメージが続き最後まで飽きることなく読んでしまう。小説はまだまだ進化しうる。そんな可能性さえ感じた。

 ロサンゼルスの街の中心部に突如として巨大な湖が出現する。主人公クリスティンは湖で息子を失い狂女へと変貌。そこに、天安門事件で戦車にひとり立ち向かった男の物語や、舟で湖を巡る女医の話が交差する。小説は無数のエピソードが重なりカオスと化す。

 湖が「レイク・ゼロ」と名付けられているように、舞台は9・11後のアメリカを想起させる。作品で描かれている混乱は、つまりテロ以降に同国で起こったことなのだ。

2009/12/07 10:51 【共同通信】http://www.47news.jp/EN/200912/EN2009120701000216.html

映画『第211監房』 隠れたゲイ映画?

2009年12月09日 | 映画
昨日、スペイン映画際(新宿バルト9)のオープニング上映で、『第211号監房』(ダニエル・モンソン監督)を見ました。

一種の監獄映画ですが、スペインなので、北のバスクの独立運動の政治性が加味されていて、見応えがありました。

看守(候補者)が、ひょんなことから鉄格子に象徴される境界を越えて囚人の側に立たされることで、囚人の視線を獲得していく展開が面白いと同時に、それがヘテロセクシュアル(異性愛)からホモセクシュアルへの「性の旅」の隠喩にもなっていて、これはすぐれたボーダー映画だと思いました。

バッドマザー役の俳優をはじめ、監獄の囚人たちが本物の「ワル」のように迫力があります。

筒井監督なら、この映画、きっと気にいると思います。

10日(木)午後9時よりもう一度だけ見られます。

(オフィシャル解説)
刑務所の職員として働くことになったファンは、予定の1日前に職場に赴き、そこでアクシデントに見舞われ、気を失ってしまう。その直後、凶悪犯が収容されている監獄で暴動が発生。慌てふためいた職員たちは、気を失ったファンを第211号監房に置き去りにする。目を覚したファンは、事態を理解し、身を守るために囚人として振る舞う。こうして嘘とずる賢さを駆使して危険を回避する日々が始まった。2009年/ドラマ/110分