越川芳明のカフェ・ノマド Cafe Nomad, Yoshiaki Koshikawa

世界と日本のボーダー文化

The Border Culture of the World and Japan

第1回 幻のキューバ  サンティアゴのブルへリア(16)

2011年11月23日 | キューバ紀行

 

 あるとき、ホルヘがさりげなくこう言った。 

 ホセっていう僕のお爺さんが山奥に住んでいるんだ。来年、一緒に会いに行ってみない? 

 私は木の枝に鳥の卵を見つけた大蛇ボアみたいに、その言葉に飛びついた。 

 それって、どこの山?

 ホルヘは、嬉しそうな顔をして言った。

 ちょっと遠いけど。椰子の葉を葺いた屋根だけの小屋にひとりで住んでいるんだ。

 どうして?

 ホルヘはいっそう嬉しそうな顔をして言った。

 この町、ごみごみしすぎてるって。

 私たちは、腹を抱えて笑った。エル・コブレには、そこかしこにプラタノと呼ばれる、料理に使う大型のバナナをはじめ、熱帯の木々が生い茂り、これ以上ないくらいに緑豊かなところだからだ。

 ホルヘが思い出したように付け加えた。

 爺さんに言わせると、アフリカみたいに空気がよいところに住みたいって。

(つづく) 


 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿