旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

青もみじと鞍馬天狗と貴船の川床と 叡電・鞍馬線を完乗!

2022-05-28 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

青もみじからの木漏れ日を浴びながら、展望列車「きらら」が急勾配を登ってきた。
紅葉をイメージした「メープルオレンジ」に彩られた900系電車に乗って、貴船・鞍馬を訪ねる呑み鉄の旅。

子どもたちが歓声をあげて飛び石を渡る。ドラマやアニメでお馴染みの風景だ。
鞍馬線の旅の前に、賀茂川と高野川に挟まれた新緑の鴨川デルタを歩いてみたいと思う。

12万4000平方メートルもの広さを持つ原生林「糺の森(ただすのもり)」、青もみじの参道が心地よい。
例年であれば、先週、紫の藤の房とカキツバタの花で飾りつけた牛車が「葵祭」の雅やかに演出したはずだ。

糺の森の緑の中に見えていた「朱」の点が徐々に大きくなって、東西に回廊を巡らせた立派な楼門に至る。
山城国一宮・下鴨神社は、賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)と玉依媛命(たまよりひめのみこと)を祀って
少なくとも2100年の時を超えてこの地にある。

初夏の日に照らされた叡山電車の始発駅・出町柳に戻って、これから鞍馬線の旅がスタートする。

叡山電鉄900系電車は「紅葉を観るために乗りに来ていただく車両」をコンセプトに製造された展望電車。
週末は30分ないしは45分毎に出町柳を発ち、貴船口へ鞍馬へと行楽客を運んでいる。

すべての電車は出町柳始発だけど鞍馬線の起点は宝ヶ池、ここで八瀬比叡山口へ行く叡山本線から分岐する。
途中の二軒茶屋までは複線で、山を降ってきた青もみじをイメージした「メープルグリーン」とすれ違う。

市原駅~二ノ瀬駅間のうち、およそ280本のイロハモミジ、オオモミジに囲まれた約250mの区間は
「もみじのトンネル」と呼ばれ、この時期の「きらら」は徐行運転して、車窓を楽しませてくれる。
初夏の日を浴びて眩しく揺れる瑞々しい「青もみじのトンネル」に、車内は清涼感に包まれる。

メープルオレンジの2両編成は急勾配をグイグイ登って、出町柳から約30分で貴船口駅に到着。
多くの乗客(若いカップルが多いかな)に続いて、呑み人も木漏れ日が差すホームに降り立つ。

貴船川を遡ること30分余、赤い春日灯篭が並ぶ石段の参道が現れる。浴衣姿のお嬢さんたちが彩を添える。
貴船神社本宮の御祭神・高龗神(たかおかみのかみ)は水の供給を司る神、社殿前の石垣からは御神水が
こんこんと湧き溢れ、参詣者は霊泉に浮かべると文字が浮かぶ「水占みくじ」に興じている。

貴船神社の中社である「結社」は、磐長姫命(いわながひめのみこと)をお祀りする縁結びの社だ。
女流歌人・和泉式部が参拝し、歌を捧げた祈り成就したことから、以来「恋の宮」とされている。
その辺りに関心が薄くなった呑み人は、むしろ川床に降りて涼風に身を委ねることを択ぶ。

 

岩を打つ水の瀬音に包まれながら、先附と八寸をアテに冷たいビールを呷る。すっと汗が引いていく。

 

少しだけ白ワインをいただきながら、お造りに箸を伸ばし、ゆるりと陶板で霜降りの牛を焼く、美味いね。

貴船口に戻って鞍馬までの最後の一区間を仕上げる。巡り合わせよくやはりメープルオレンジの2両編成だ。
鞍馬線の最大勾配は50‰とかなりの急勾配だが、2両とも動力車の編成は怯むことはない。

終点・鞍馬駅では1.3mの鼻を持った大天狗が迎えてくれる。
鞍馬の大天狗は源義経に厳しい武術の修行をつけ、後に平家討伐を達せられるよう兵法の秘伝を授けたと云う。

鯖街道ウルトラマラソンのランナーが駆け下る山道を少しだけ登ると、長い階段の先に立派な門が見えてくる。
新緑に「朱」が映える鞍馬寺の「仁王門」はパワースポットである鞍馬山の浄域への結界でもある。

仁王門を潜って普明殿の山門駅から宗教法人が運営しているケーブル、鞍馬山鋼索鉄道に乗車する。
運賃は無料、待合室の券売機で200円の諸堂・施設の維持のための寄進をし、その御寄進票で乗車する理屈だ。

『近うて遠きもの 鞍馬のつづらをりといふ道』と清少納言が「枕草子」で嘆いた九十九折(つづらおり)の
高低差90mを2分でバイパスしてくれる。最急勾配は499‰だから、角度にして26°にもなる急坂だ。

牛若號IVを降りるのは多宝塔駅、ここから本殿金堂までは弥勒堂を経て緩やかな参道を往く。

本殿金堂には、宇宙の大霊「尊天」を象徴する千手観音菩薩・毘沙門天王・護法魔王尊が祀られている。

ところで本殿金堂の左右には狛犬ならぬ「阿吽の虎」が睨みをきかす。虎は本尊毘沙門天のお使の神獣だと云う。

『何となく君にまたるるここちしていでし花野の夕月夜かな』與謝野晶子の歌碑から奥の院参道に入る。
牛若が兵法修行をしたと云う木の根道を経て不動堂、最澄が刻んだと伝えられる不動明王が安置されている。
鞍馬山の奥深く入り込んだ一帯は、僧正ガ谷と呼ばれる数々の牛若丸伝説が残る霊域なのだ。

そして奥の院、護法魔王尊が650万年前に地球救済のため、金星から降り立ったとされる鞍馬寺の中心的霊域だ。
ここからの急坂の谷底は先刻訪ねた貴船神社に至る。

呑み鉄旅と云いながら、ハイカーのように歩きに歩いた鞍馬線の旅、出町柳に戻ったらお疲れ様の一杯か。

叡山電鉄・鞍馬線 宝ケ池〜鞍馬 8.8km 完乗
 鞍馬山鋼索鉄道 山門〜多宝塔 0.2km 完乗

京都慕情 / 武田カオリ



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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ZUYA)
2022-05-29 22:12:39
へえ~、こんな綺麗な電車が走っているのですね。

私は笑福亭鶴瓶や堀内孝雄の後輩で京都○業大学に通ってました(数週間で辞めましたが...)

生きている間に、もう一度訪れてみたいものです、この沿線を😉
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叡電 (tsakae)
2022-05-30 08:32:00
4月末に ちょうど叡電の春もみじ
を見てきたので もう一度見た感じです。
私は きららも 比叡も乗りました。
https://blog.goo.ne.jp/tsakaegoo/d/20220511
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Unknown (呑み人)
2022-05-31 23:08:10
ZUYA さん、こんばんは。
沿線にはいくつもの大学がありますね。
今更ですが、京都での大学生活は憧れます。
私も某大学を受けましたが、ご縁はありませんでした。
まだお休みは続きますか?復活をお待ちしています。
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Unknown (呑み人)
2022-05-31 23:20:32
tsakae様、こんばんは。
ほんと写真の切り取りも被っていますね。
比叡にもご乗車とは、八瀬比叡山口にも行かれました?
私も瑠璃光院とか行きたかったのですが、
時間がなくて断念です。次回は必ずって思っています。
コメントありがとうございます。
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京都 (knsw0805)
2022-06-01 09:20:10
おはようございます。
今日も素敵な写真の数々ありがとうございなす。京都は40代の頃仕事で1年間位通い詰めました。ほぼ春夏秋冬行きました。懐かしいし暮らしてみたいところです。写真を見てて気がつきましたが、「ビールや酒、おつまみの肴」写真を期待している自分がいました(笑)私もやはり「のんべー」のようです。
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比叡 (tsakae)
2022-06-01 09:36:32
昨年 春にも訪れた 秋の瑠璃光院をみた帰りに、偶然 比叡に乗ることが出来ました。

https://blog.goo.ne.jp/tsakaegoo/d/20211206
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Unknown (呑み人)
2022-06-01 22:49:48
@knsw0805 けんちゃん様、こんばんは。
京都に通い詰めの1年って、なんと羨ましい。
オフは結構お楽しみになりましたか?
働き盛りの頃は、あとで考えると勿体なかったなぁと思うほど
仕事ばかりに前のめりですね。
けんちゃんの「のんべー」のエピソードも読みたいですね。
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Unknown (呑み人)
2022-06-01 22:57:32
tsakae 様、こんばんは。
なんと紅葉の頃にお出掛けでしたか。
なんとも羨ましい。
ベストシーズンなのに閑散としているのは
やはり流行り病のせいでしょうか。
参考にさせていただきます。
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