現地部隊の指揮官は「地雷除去作業は11月までに終える計画だ。冬には土地を掘れないので、遺骨発掘作業は来年4月から始まる」と話した。

2018-10-04 09:26:25 | 北朝鮮:国連の舞台へ
[ルポ] 地雷原、「ウィーン…」轟音の中の風景は不思議に平和だった
登録:2018-10-03 22:00 修正:2018-10-04 06:56


DMZの高地地雷除去作業 
11月まで地雷除去作業、その後に遺骨発掘 
20キロの装備が重く、10~15分で作業交代 
韓国軍200人、フランス・米軍100人の遺骨収集を推定


2日、江原道鉄原郡の第5師団近隣の非武装地帯で、軍人が地雷除去作業をしている。南北は軍事分野合意書で10月1日から20日まで板門店の地雷から除去することにした=共同取材団//ハンギョレ新聞社

 南北共同遺体発掘事業が本格的に幕を上げた翌日の2日午前、江原道鉄原郡(チョルウォングン)大馬里(テマリ)の非武装地帯(DMZ)内「矢じり高地」の頂上から北側に稜線が続く所。地雷探知装備で重武装した将兵7人が並んで立ち、周辺の土地を隅々まで探知していた。最前面に地雷探知装備の“ショーンスタッド”を持った将兵が周辺の地下をくまなく探知して通過すると、すぐ後には“草刈機”を持った将兵が生い茂った草を短く刈って視野を確保した。また、すぐに「地雷探知機」運用兵2人と「空気圧縮機」運用兵1人、また別の地雷探知機運用兵1人が後に従った。彼らは地雷と疑われる物体が探知されると標識だけを付けて、地雷の確認および除去は別の爆発物処理班が来て実施するという。

 ショーンスタッドは地中深く3メートル下までの金属を探知できる装備だ。現地部隊の指揮官は「ショーンスタッドには“M14対人地雷”が探知できないという短所がある。そこでショーンスタッドでまず探知した後に、敏感度がそれぞれ違うように設定された地雷探知機で2~3回再探知する」と説明した。別名「足首地雷」とも言われるM14対人地雷は、材質がプラスチックなので金属探知器に反応しない。空気圧縮機は地雷と疑われる物体が捉えられれば、その周辺に強風を噴射し安全に視野を確保する役割を果たす。

 これら地雷探知チームの行列の前方には、K-1またはK-2小銃で完全武装した警戒兵3人が配置され、万一の事態に備えていると聞いたが、稜線に隠れたのかその姿は見えなかった。代わりにこれらの行列の後方には、また別の警戒兵3人が小銃で武装し、警戒に立っている姿が見えた。

 軍当局が2日、非武装地帯内の矢じり高地で進めている地雷除去作業をメディアに初めて公開した。この日、陸軍第5師団所轄区域にある“57通門”を通過して上がった矢じり高地には“監視警戒所”(GP)がコンクリート要塞のように立っていた。そちらから北側の稜線に沿って眺めると、山を越えて北側の監視警戒所も自然に目に映った。文字どおり南北対峙の最前線であることが実感できた。こうしたところで危険千万な地雷を除去する作業をしているのに、緊張感は全く感じられなかった。空気圧縮機のポンプのモーターだけが「ウィ~ン」という轟音が耳を打っているだけで、暖かい秋の日差しとまだ緑陰あふれる周辺の風景がゆったりと平和に感じられ、かえって奇異だった。
2日、江原道鉄原郡の第5師団近隣の非武装地帯で、軍人が地雷除去作業をしている=共同取材団//ハンギョレ新聞社

 南北が共同遺体発掘場所にこの矢じり高地を選択したのは、ここが持つ象徴性のためだ。矢じり高地は海抜281メートルで、ソウルの南山(ナムサン、海抜270.9メートル)と似た高さの比較的小さな山だ。しかしこの日、矢じり高地に上がると、南に広く広がる鉄原平野が一望できた。ここが敵に制圧されれば、鉄原平野が危険になる戦略的要衝という現地部隊幹部の説明に自然とうなずいた。

 このような戦略的重要性のために、6・25戦争当時矢じり高地はその東側にある白馬(ペンマ)高地(海抜395メートル)とともに南北間で争奪戦が繰り返された所だ。当時、矢じり高地戦には韓国軍だけでなく米軍、フランス軍、中国軍も参戦した。軍当局は、矢じり高地に埋められている遺骨が韓国軍200人、米軍・フランス軍100人余りになると推定している。


2日、太極旗と国連旗が非武装地帯の矢じり高地GPにひるがえっている=共同取材団//ハンギョレ新聞社

 接戦地域であったため矢じり高地周辺には多くの地雷と不発弾も埋まっている。人の安全を脅かす地雷と不発弾を先に取り除いてこそ南北共同遺体発掘を進行できる。現地部隊の指揮官は「ここは計画埋設された地域ではない。味方と敵が互いに牽制するために多くの地雷をばらまいた未確認地雷地域だ。どこにどれほど埋設されているか、全く分からないので一つ一つ確認しなければならない」と話した。

 矢じり高地の地雷除去作業は、高地二カ所でなされる。1カ所はすでに将兵が非武装地帯監視のために利用した捜索路周辺だ。矢じり高地の北側稜線につながる捜索路800メートル区間から幅4メートルの範囲まで(800メートル×4メートル面積)の地雷を除去する作業だ。現地部隊の指揮官は「現在、安全に通ることができる捜索路の幅は1~2メートルだ。この幅を4メートルに広げていると見れば良い」と話した。また、山の下方に構築された交通壕周辺の地雷も除去される。交通壕500メートル区間から幅10メートルの範囲(500メートル×10メートル)が対象だ。現地部隊の指揮官は「今回の作業のために3カ月前からここの地形を熟知し偵察するなど、多くの準備をしてきた」として「作業は安全問題を優先的に考慮して進める」と話した。



 作業には地雷除去工兵80人が参加する。彼らはすべて1年以上地雷除去作業をしてきた経験豊富なベテランであり、投入される人員の40%が幹部だという。作業は午前2時間、午後2時間、一日4時間ずつ行う方針だ。作業時は安全のために保護衣と地雷靴・上履き、ヘルメット、防弾チョッキ、保護帯など20キロを超える装備を着用する。作業は非常につらいという。軍当局者は「非常に大変な作業なので、通常10~15分程度作業して他の組と交代する」と話した。

 地雷除去作業には彼ら工兵だけが参加するわけではない。地雷除去作業中に遺骨が見つかる可能性に備えて、遺体発掘TF13人が待機しており、爆発物処理専門担当EOD(Explosive Ordinance Disposal)チーム4人と、安全事故に備えた軍医官を含む医務チーム4人も常時待機する。また、第5師団捜索隊4チーム24人も警戒チームとして地雷除去作業を支援している。現地部隊の指揮官は「地雷除去作業は11月までに終える計画だ。冬には土地を掘れないので、遺骨発掘作業は来年4月から始まる」と話した。

 軍当局は、南北共同遺骨発掘場所のアクセシビリティ確保のための道路開設作業にもまもなく着手する計画だ。新しく作られる道路は、非武装地帯内の“駅谷(ヨッコク)川”を渡る橋の“ピマ橋”から出発し、矢じり高地の東側の麓を走り、軍事境界線(MDL)に至る幅12メートル×長さ1.7キロメートルの道路だ。メディア公開行事があった2日には、道路が始まるピマ橋近隣に赤い旗の標識だけが挙げられていた。

 道路開設作業も先に地雷除去が進められた後に推進される。地雷除去作業はまず掘削機で掘った後に地雷探知チームが投入される方式でなされる。現地部隊の指揮官は「防弾掘削機が掘削作業をするが、この掘削機の先は網になっている。地雷が埋まっているならば、ほとんどが掘削機の網に引っかかる」と話した。地雷の除去には工兵30人が投入され、遺体発掘TF、医務チーム、爆発物処理班、警戒チームが支援する。道路開設事業も今年末までに終える方針だ。

 南北は1日から各自の地域で地雷除去と道路開設作業をすることで合意した。したがって、北側も地雷除去作業を始めたと推定される。現地部隊の指揮官は「北側から非武装地帯に入ってくる通門地域は、山岳地形に隠れていてこちらから見えない。北側も作業を始めたと推定されるが、肉眼では確認されていない」と話した。
鉄原矢じり高地/パク・ビョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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今回の措置は、南北首脳の平壌共同宣言により江原道が境界地域の5つの郡と共に用意した「平和地域ツアー週間」の一環だ。

2018-10-02 06:46:23 | 北朝鮮:国連の舞台へ

金剛山展望台、2週間一般開放
登録:2018-09-30 22:19 修正:2018-10-01 07:28


韓国最北端の展望台、10月1~14日開放 
鑑湖、九仙峰、海金剛が望める


717観測所は、高城の統一展望台より2キロメートル北側にあり、「天女と木こり」伝説がある鑑湖と金剛山の端の九仙峰、海金剛がよく見える=高城郡庁提供//ハンギョレ新聞社

 江原道は軍と協議して10月1日から14日まで717観測所(OP)、別名「金剛山(クムガンサン)展望台」を一次的に一般開放すると30日明らかにした。今回の措置は、南北首脳の平壌共同宣言により江原道が境界地域の5つの郡と共に用意した「平和地域ツアー週間」の一環だ。717観測所は、高城(コソン)の統一展望台より2キロメートル北側にあり、「天女と木こり」伝説がある鑑湖(カムホ)と金剛山の端の九仙峰(クソンボン)、海金剛(ヘグムガン)などを見渡せる。1992年に新築された後、しばらく一般に開放されたが1994年以後一般人の出入りが禁止され、軍事施設としてのみ使われてきた。


717観測所は、高城の統一展望台より2キロメートル北側にあり、「天女と木こり」伝説がある鑑湖と金剛山の端の九仙峰、海金剛をよく見える=高城郡庁提供//ハンギョレ新聞社

 金剛山展望台訪問のためには、まず統一展望台(033-682-0088)に予約可能日を確認した後、訪問日と時間を選択しファックス(033-682-0899)を送れば良い。訪問可能人員は1回80人、1日160人で先着順で決められる。出入申請日の一日前の正午までの受け付けで、訪問時には身分証を持参しなければならない。車両は統一展望台出入申告所に置き、シャトルバスで移動しなければならない。

 チョン・イルソプ江原道庁観光マーケティング課長は「朝鮮半島に平和ムードが醸成され、平和地域(境界地域)に対する関心が大きく膨らんでいる。金剛山展望台のある高城だけでなく、鉄原(チョルウォン)、華川(ファチョン)、楊口(ヤング)、麟蹄(インジェ)などの境界隣接地域で多様な行事が開かれる」と話した。
パク・スヒョク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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米国に対しては「制裁が不信感を増幅させる」   終戦宣言の遅れにも不満示す 

2018-10-01 10:55:57 | 北朝鮮:国連の舞台へ
北朝鮮のリ外相「核実験中止から1年、制裁はそのまま」
登録:2018-10-01 06:03 修正:2018-10-01 07:33


「米国の相応措置」に触れたリ・ヨンホ外務相 
 
15分間の演説で「信頼」12回も言及 
「経済発展のための平和環境が必要」と力説 
 
米国に対しては「制裁が不信感を増幅させる」  
終戦宣言の遅れにも不満示す 
「韓国とだったら、非核化に膠着はなかっただろう」  
韓国には前例になく強い信頼感を表現 
安保理に制裁の緩和・解除を遠回しに圧迫


リ・ヨンホ北朝鮮外相が29日(現地時間)、ニューヨーク国連本部で国連総会演説をしている。リ外相は「(北朝鮮の)非核化の意志は確固たるものであるが、一方的な核武装解除はない」と述べた。ニューヨーク/ファン・ジュンボム特派員//ハンギョレ新聞社

 リ・ヨンホ北朝鮮外務相が29日(現地時間)の第73回国連総会で行った基調演説で、最も多く登場したキーワードは「信頼」と「平和」だった。「経済」や「非核化」、「制裁」も頻繁に取り上げられた。この5つの単語の連結網にリ外務相が強調しようとする「北朝鮮の対外戦略の基調」が盛り込まれている。

 1100単語余りの15分間の演説で、リ外務相は「信頼」を12回、「不信」を5回言及した。二つを合わせると、「平和」に触れた回数(17回)と同じだ。北朝鮮の対外戦略の基調で、(朝米間の)「信頼」は(朝鮮半島の)「平和」とほぼ同じ重さということだ。リ外務相が「経済」を7回も口にした事実も特記すべきだ。「非核化」に言及した回数(7回)と同じだ。

 まず、リ外務相は、4・20労働党中央委7期第3回全員会議で、(経済・核武力建設の並進路線の終了を宣言し)「社会主義経済建設への総力集中」を「新しい戦略路線」として採択した事実を想起させ、「経済的発展のためには、平和的環境が必要だ」と力説した。1978年に中国が改革開放路線を採択して以来、これまで固守してきた経済と安保の相関関係に対する認識と全く同じだ。北朝鮮が4・20労働党全員会議の前には一度も公開的に駆使したことがない論法だ。「(経済発展のために)直ちに平和が切実に必要である」というメッセージは、注目に値する。
駐中北朝鮮大使館の外部掲示板が文在寅大統領と北朝鮮の金正恩国務委員長の平壌首脳会談の写真で埋め尽くされている。30日、北京の北朝鮮大使館正門横の大型掲示板に掲示された25枚の平壌南北首脳会談の写真をある北京市民が注意深く見ている=北京/聯合ニュース

 さらに、リ外務相は「(6・12)朝米共同声明を徹底的に履行すること」に朝鮮半島の平和と安定がかかっていると強調した。また「朝米共同声明を徹底的に履行しようとする共和国政府の立場は確固」であるにもかかわらず、「それに相応する米国の肯定的な回答を私たちは(まだ)見ていない」とし、「(米国の)制裁が我々の不信感を増幅させることが問題」だと指摘した。

 彼は「朝鮮半島の非核化も、信頼形成を優先することに基本をおいて、平和体制の構築と同時行動原則で、段階的に実現していくべきというのが我々の立場」だと明らかにした。非核化と相応措置の「均衡・同時・段階的実践」という公式方針の再確認だ。「米国に対する信頼」と「わが国の安全に対する確信」がなくては「一方的に先に核武装を解除することは絶対にありえない」と強調したのも、このような認識の延長線上にある。

 これと関連し、「もし非核化問題の当事者が米国ではなく、南朝鮮(韓国)だったなら、朝鮮半島の非核化問題も今のような膠着状態に陥ることはなかっただろう」という言及が目を引く。70年間にわたる分断の歴史上前例のない発言だが、2回目の朝米首脳会談の架け橋になろうとする文在寅(ムン・ジェイン)大統領の涙ぐましい努力に対する感謝の表れであり、北朝鮮に対する米国の不信感を狙ったものと指摘されている。

 リ外務相は、北朝鮮が望む主な相応措置も、遠まわしに表明した。「米国は制裁と圧迫をさらに強めており、終戦宣言の発表まで反対している」という指摘がそれに当たる。「制裁」関連の言及は、6・12朝米首脳会談以降、金正恩国務委員長や対米交渉責任者の金英哲(キム・ヨンチョル)労働党中央委副委員長をはじめ、北朝鮮の高官がこれまで一度も表明していないという点で、異例のことだ。ただ、リ外務相は「米国は○○をしなければならない」という直接的な要求はしなかった。その代わり、「多くの制裁決議を行った国連安全保障理事会だが、その(核試験とロケット)実験(発射)が中止されてから1年になる今日まで、制裁決議は解除されたり緩和されることなく、少しも変わっていない」と不満を示した。国連安保理に制裁の緩和・解除の決議を進めることを促すための間接話法だ。

 元政府高官は「リ外務相の演説は、北朝鮮の対外戦略の基調を明らかにするものであり、水面下で進められている朝米交渉に直接的影響を与えるためのメッセージが込められているわけではない」としたうえで、「制裁に関する言及も、直ちにそれを解除すべきという主張として受け止めてはならない」と指摘した。
イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせjapan@hani.co.kr)
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