ウクライナのマリウポリ住民「すべてが破壊された。町が消えた」
「食料も間もなく底をつく…ニュースも情報も途絶」
脱出したギリシャの外交官「レニングラードやアレッポのよう」
ロシアが降伏要求…ウクライナは「徹底抗戦」
ウクライナとロシア軍の最大の交戦地である南東部の町マリウポリは、30万人以上の住民が20日近く孤立している中、消滅の危機に瀕している。第2次世界大戦で完全に破壊された旧ソ連のレニングラードや、2012年以降のシリア内戦で荒廃したアレッポに匹敵する惨状が繰り広げられているとの証言が相次いでいる。ロシアはこれ以上の人命被害を防ぐため、ウクライナ軍に対し降伏して町を去ることを要求しているが、ウクライナ軍はこれを拒否しているため、「マリウポリの悲劇」が止められるのか憂慮される。
マリウポリで街に放置されている遺体の回収を手伝っているアンドレイさんという住民は20日(現地時間)、ロイター通信に対し、ロシア軍の爆弾による直接の犠牲よりも、劣悪な環境において極度の緊張状態に耐え切れず死亡する人の方がはるかに多いと語った。アンドレイさんは「地下の避難所、体が動かせない状況、ストレス、寒さといった環境」が命を奪っていると訴えた。また「兵士たちには遺体をとりあえず冷たい地下室に保管しろと言うが、地下室はすでに避難してきた住民でいっぱいになっている」と述べた。
自宅の地下室に11日間とどまっている大学図書館の司書イリナ・チェルネンコさんは、1週間後には食料が底をつきそうだとし、あとどれほどこうして耐えていられるか分からないと語った。チェルネンコさんは「あらゆる建物が破壊されてしまったから、地下室以外どこにも行けない」とし「人間らしく生きたいというのが私たちの希望」だと述べた。幼稚園で働くナタリアさんは「ニュースも情報もすべて途絶えた。すべてが破壊され、どのように生きていけばいいか途方に暮れている」と打ち明けた。
AP通信はこの日、マリウポリから列車で西部リビウに脱出した住民たちが「町が消えてしまった」と嘆いたと報じた。マリウポリ文化宮殿の地下室に13歳の息子と3週間とどまっていたマリナ・ガーラさんは、母親と祖父母が現地に残っているとし「彼らがどんな状況なのか全く分からない」と語った。ガーラさんは「飲み水がなくなり、電気、通信がすべて途絶えた中で耐えた」とし、爆撃にあう中、野外で木を薪にし、たき火で料理をしたと語った。
マリウポリ周辺の都市メリトポリからマリウポリの住民と共に脱出したイェレナ・ソウチュクさんは、マリウポリの人々は荷物すらほとんど準備できず、身一つで脱出してきたと語った。ソウチュクさんはマリウポリから車で脱出する人を見たことがあるとし「車を見ただけでもマリウポリから脱出してきたことが分かる。マリウポリの車は窓がみな割れていた」と述べた。一部の脱出民たちは、ロシアが支配している地域の方が安全だから、そちらに待避するようにとロシア軍に言われたと語った。
最近マリウポリから脱出したギリシャの外交官は、現地の惨状は第2次世界大戦時のソ連のレニングラードや、2012年以降の内戦で破壊されたシリアのアレッポに似ていると語った。マリウポリ駐在のマノリス・アンドロラキス総領事はこの日ギリシャに到着し「マリウポリは戦争で完全に破壊された町のひとつになるだろう」と述べた。ロイターなどが報じた。同氏は「私が見た光景を、今後は誰も見ないで済むよう願う」と述べた。
ロシア軍も、マリウポリで人道主義的危機が起きていると異例にも強調した。ロシア参謀本部傘下の指揮センター「連邦国防管理センター」のミハイル・ミジンツェフ所長はこの日のブリーフィングで「むごたらしい人道主義的厄災が出現している」とし「マリウポリのウクライナ軍に降伏するよう最後通告を行った」と明かした。同氏は、マリウポリの東と西の2つの方向へと21日午前に人道回廊を作る予定だとし、ウクライナ軍は兵器を捨て、回廊を通って町を去れと通告した。ウクライナ政府は降伏要求を断固拒否した。イリナ・ベレシュチュク副首相は「武器を捨てて降伏することはできない。我々はすでにロシアにこれを通告した」と語った。
ロシア軍がマリウポリ市内に入ったことで市内のあちこちで交戦が続いており、400人あまりの住民が避難している芸術学校の建物が爆撃にあうなど、マリウポリの状況は悪化し続けている。