コロナ、なぜある人は症状がひどく、ある人は平気なのか
類例のないウイルス変異と感染者数が重なり
主な症状だけでも20以上…後遺症も200以上
同じ新型コロナウイルスに感染したにもかかわらず、症状が全くなかったり軽い風邪程度で済んだりする人がいる一方で、ある人は死と格闘する。また、回復した後も数カ月にわたり後遺症に苦しむ人もいる。なぜ同じウイルスに感染したにもかかわらず、症状は千差万別なのだろうか。
重症化を招く最も重要な要因は年齢
専門家は、症状の軽重を分ける最も重要な要因として年齢をあげる。年を取れば免疫システムも老化する。蔚山大学医学部のチュ・チョルヒョン教授(微生物学)は「免疫システムは、人が成長する中で様々な病原体の刺激を受け、概ね青少年期に完成される」とし「その後、60歳から機能が徐々に低下しはじめる」と語る。保健当局が60歳以上を高危険群として分類する理由がここにある。
一方、子どもの症状がひどくなるケースは多くない。理由は明確に解明されてはいないものの、一般的に遺伝を通じて受け継がれた先天的な免疫システムが速やかに反応しているためだと科学者たちは考えている。ごくわずかな病原体の浸入に対しても免疫システムが敏感に反応するため、ウイルスが体内深くに到達する前に力を失う可能性がより高いのだ。
コロナウイルスが感染する際に必要とする細胞の受容体タンパク質(ACE2)遺伝子の発現が子どもは少ないということも、一つの要因としてあげられる。また、成人に比べて血管内皮や凝固システムが健康なこと、呼吸器細胞の繊毛運動がより活発なことも、子どもの感染症状が弱い理由を説明する仮説が主張する要因だ。
性染色体や血液型の影響も?
感染比率のみを見れば男性と女性はほぼ同様だが、死亡率は男性の方が女性よりはるかに高い。科学者は、その要因の一つとして女性が2つのX染色体(性染色体)を持っていることに注目する。X染色体はY染色体よりはるかに大きい。X染色体にはタンパク質の生産に関与する遺伝子が1150個、男性であることを決定するY染色体には遺伝子が60~70個ある。オックスフォード大学のフィリップ・グルダー教授は「ウイルスを感知するタンパク質の遺伝子はX染色体にあり、したがって女性の免疫反応の方がより効率的に起きる」と語る。X染色体に関わる病気では、女性はもう一つのX染色体があるため、受ける影響がより少ない可能性がある。イェール大学医学部の岩崎明子教授は、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンがそれぞれ免疫反応を促進し、炎症を減らす役割を果たすと話す。
血液型との相関関係も科学者たちが注目していることの一つだ。A型がコロナに最も弱く、O型の危険性が最も低いとする中国の臨床研究と欧州のゲノム研究が相次いで発表されたのに続き、ハーバード大学の研究陣は、コロナウイルスがA型の人の細胞によりよく結合するという研究を発表している。最近では英国の研究陣が、これを裏付けるコロナ重症誘発タンパク質に関する研究を発表している。
症状の発現順序が変わった
コロナ感染者に最もよく見られる症状は発熱、頭痛、咳、のどの痛みの4つだ。これは変異株でもほとんど変わっていない。しかし症状の発現順序は変化している。コロナが初めて確認された時期には、典型的な症状は発熱ではじまり、咳と筋肉痛を経て吐き気や嘔吐、下痢と続いていた。一方、現在優勢となっているオミクロン株では喉の痛みからはじまり、咳と鼻づまり、そして発熱と続く。普通は、初期には喉がひりひりと痛む。1日ほど経ってから咳がはじまる。
デルタ株で猛威を振るった味覚と嗅覚の喪失症状は、オミクロン株では弱まっているという。全体的に鼻水、のどの痛み、くしゃみなどの、伝統的な風邪と類似した症状が多くなっている。
長期の後遺症を招く4つの要因
最近のコロナの主要課題の一つは「ロングコビッド(long covid)」と呼ばれる後遺症だ。治療が終わった後にも一部の症状が長期間続くことを言う。一般的に後遺症が2カ月以上続くケースを「ロングコビッド」とみなす。
世界保健機関(WHO)のジャネット・ディアス博士によると、最もよくある後遺症は呼吸困難、認知機能障害、倦怠感の3つだが、実際に報告された症状は200を超える。
米国の研究陣は、200人あまりのコロナ感染者を2~3カ月にわたって追跡し、症状の長期化を招く4つの要因を確認した。1つ目は、感染初期の血液内のウイルスの数値だ。感染初期のウイルス数値が高い人ほど後遺症に長く悩まされるケースが多かった。2つ目は長く休眠状態にあったエプスタイン・バー(EB)ウイルスが再活性化したケース、3つ目は2型糖尿病を患っているケースだ。EBウイルスはヘルペスウイルスの一種で、子ども時代に自分でも気づかぬうちに感染しているケースが多い。4つ目は特定の自己抗体を持つケースだ。我々の体の免疫システムは、普通は体内物質に対する抗体は作らないが、特殊なケースにおいては、自分の体を攻撃する抗体を作って疾患を引き起こす。研究陣は、4つの要因の中で最も影響力の大きな要因は自己抗体で、長期にわたりコロナ後遺症に苦しむ人の3分の2で発見されたと発表している。