レバノンの爆弾テロ惨劇…ポケベルはなぜ消えなかったのか
17日、ポケベルを利用するレバノン国民を対象にした無差別爆弾テロが発生し、反倫理的な犯罪に対する国際的な批判世論が強まっている。イスラエル情報当局が少なくとも15年前からダミー会社を設立して組織的に爆弾テロを準備してきたことが判明したことで、残酷な犯罪の謀議と実行に対する非難はさらに激しくなっている。
反倫理的な無差別爆弾テロに無線呼出器(ポケベル)や無線機(トランシーバー)のように個人が携帯する通信機器が計画的に使用されたという点が衝撃的だ。携帯用の通信機器を利用した「ポケベルテロ」は、事実上身体の一部になった生活必需品が遠隔制御の爆弾へと変わりうるという点で、日常における新たな恐怖と不安を広げている。これとあわせて、旧世代の通信技術であるポケベルに対する疑問も浮上している。「誰がなぜ今でもポケベルを使っているのか」という問いだ。
報道によると、レバノンの武装組織「ヒズボラ」の最高指導者のハッサン・ナスララ氏がイスラエルによる携帯電話を通じたハッキングや盗聴の可能性を懸念し、内部での通信手段としてポケベルを提案したと言及されているが、ヒズボラだけでなく、医療機関や工場、売り場などポケベルを使う場所は今でも少なくない。
1949年にカナダの発明家のアルフレッド・グロスが開発したポケベルは、1982年に韓国移動通信がサービスを開始し、韓国でも広く普及した。初期には特定の職種を中心に利用されたが、端末と機能が多様化すると1993年から一般に普及し、1997年には加入者が1500万人を超えるほど人気が高かった。しかし、1998年に携帯電話の普及が広がり料金が下がると、ポケベルの利用は減り始め、加入者は1999年は303万人、2000年は45万人、2001年には7万人と急減した。携帯電話が大衆化すると、事業者はポケベルの事業権を返却し、その後は「012」のポケベル識別番号はモノのインターネット用に活路を模索した。
■メッセージ受信のみ可能なポケベル、「犬の首輪」とも
「ポケベル」は現在のスマートフォンやSNSなどの超連結時代を予告した機器だ。ポケベルは事実上、人々が常に電源をつけたまま携帯を始めた最初のモバイル機器だ。こんにちのスマートフォンと機能は違うが、身体の一部のように常時持っているという点と、通信のための道具という点で共通する。
ポケベルは現在の多くの通信機器とは違い、「双方向」ではなく「単方向」である「古い」通信技術だ。メッセージの受信だけが可能で送信機能がなく、通信手段としての効率性が低い。初期のポケベルは、呼び出し番号を知っている誰かが送る呼出信号とメッセージを一方的に受信し、すぐにそれに反応しなければならないという点で、使用者から「犬の首輪」という自嘲的なニックネームでも呼ばれた。しかし、ポケベルをベルトに装着している人は、つねに組織の呼び出しを受け、連絡が可能である必要のある重要な人だということを示す装置と認識されると、イメージが変わった。医療関係者、ジャーナリスト、弁護士、警察、放送業界人などの専門職群の人たちの必需品だった。
■ポケベルは消えたが「無線呼び出しベル」として復活
こんにちではスマートフォンが大衆化しているが、特定の空間と職種では今でもポケベルが使われている。ポケベルはバッテリーと電波で作動するため、WiFi(無線LAN)のない死角地帯や通信網のない地下空間・鉱山などでも通信が可能だ。医療機関や救助隊では、ポケベルを使うところが今でもある。プライバシーやセキュリティーを重視する人にとってポケベルは、使用者を追跡する方法がないという点が魅力的だ。
スマートフォンのスパム公害が教えるように、スマートフォンは多種多様な形態の通知と電話にさらされており、利用者が選別的にメッセージを受け取ることは難しい。しかしポケベルは、呼び出し番号を知っている小規模な集団内で特定の用途でメッセージを送る際に使用されるため、固有の価値がある。
現在のポケベルは、韓国内では、新たな形態で使われることによって拡大している。飲食店やカフェなどの各種の売り場で使われる呼び出しベルが、まさに新種のポケベルだ。カフェや飲食店で使われる呼び出しベルの機能は、スマートフォンのショートメッセージやSNSの通知、アプリを通じていくらでも代替できるが、ますます広く使われている。注文した食事の調理が完了したり待機中の順序になった際には、呼び出しベルは非常に重要だ。文字メッセージ、電光掲示板、音声などでも案内できるが、呼び出しベルの使用が増えている。客が携帯電話の番号をあらかじめ登録する必要がないため個人情報露出の恐れがなく、情報入力の手続きがいらないことが長所だ。呼び出しベルのけたたましい振動と音は、スマートフォンの多くのメッセージや通知に混じらず、呼び出しメッセージを送る人と受ける人がすぐに連絡をとれるようにしてくれる。
■双方向通信の洪水のもとでの「低効率、古い技術」の使い道
スマートフォンやSNSのような双方向通信が普遍化した環境のもとで、単方向通信手段であるポケベルが今でも使用されているのは、利用者が単方向通信の特性を好む状況があることを示している。双方向コミュニケーションは即時応答とさらなる対話を要求し期待する通信手段であるのに比べ、ポケベルは受信者が通信ネットワークに留まりながらも、無差別的なメッセージにさらされる必要がなく、ある程度の自律性を保つことができる。通知とスパムがあふれ、それによるストレスが生じる双方向通信の環境で、ポケベルは効率性が低いため、むしろ価値が際立つという点が逆説的だ。