先週はどのチャンネルも島田紳助の引退のニュースばかり。それからワイドショーが休みになる土曜日まで、よくまあ色々と探し出してくるものだと感心もし、あきれもした。たかが芸能人の引退で、あれほど大騒ぎするとは、それも各局ともトップ扱いで何十分もの時間を割くという、見事なまでの横並び報道にはいい加減うんざりした。それにもまして、枝野官房長官にまで紳助の引退発表について質問したバカ記者がいたそうだが、報道姿勢のレベルの低さにもあきれた。
私も紳助は嫌いではない。日テレの『行列のできる法律相談所』が始まった頃は毎週欠かさず見ていた。紳助の話術の巧みさ、思わず笑ってしまう話芸には誰も敵うものはいないと、今でも思っている。が、なぜか最近の紳助には以前ほど魅力を感じなくなって、昨今は彼の出る番組はまったく見なくなった。
先日、毎年行われる「お笑い芸人人気調査」の「嫌いな芸人」ランキングで、今年初めて紳助が第1位となったそうだ。トップに上り詰めた者にありがちな傲慢な態度が目に余るという声もあったというし、週刊誌にも色々とダーティーな記事が掲載されたという。その挙句が、平家物語の冒頭文の一節「奢れるもの久しからず」「たけき者も遂には滅びぬ」のとおり、儚い結末となったのである。
歌手のやしきたかじんが、ツイッターで、紳助の引退会見について「歯切れ悪い」と斬り捨て、「刑事事件にしないという前提での引退」という意味深な言葉をつぶやいたところ大炎上し、あわてて謝罪したという。私は会見内容を聞いていて、言ってることが要領を得ない、きれいごと過ぎるという気がした。不思議に思うのは、紳助は「この程度」としか思っていないのになぜ引退するのか。また、金にシビアだと評判の吉本興業が、いとも簡単にドル箱の紳助を手放したのはなぜか、この2点をとっても、何やら切羽詰った裏事情があるのではないかと疑いたくなってくる。
この引退は事実上の解雇に等しいという。それだけ反社会的な行為なのだが、それを認識できなかったのは社会常識に欠けているからであり、「少々のことは許されるだろう」という奢り、甘えを許した吉本興業、芸能界にも責任がある。
ところで、紳助の引退会見を聞いていて、いい歳をした大人がおかしなことを言うなあと思ったのは、【暴力団だといわれるBさんから「会う必要はない、会ってはいけないんだ。人というのは心でつながっていたら、会う必要はないんだ。心でつながったら、心がひとつなんだ」と言われたんです。僕の人生の中でも、その言葉は重く残りました。ですから、弱った時にAさんを介して、「心はひとつですよね」と送りました。だから、それは「仲間です」という意味、「その組織と付き合っている」という意味ではなくて、そのおっしゃった言葉、「会うことはないけども、遊ぶことはないけども、心はひとつですよね」という意味で送ったメールです】というくだりである。
「心はひとつ」、まるで恋人へのラブコールみたいで、それを臆面もなくしゃべる紳助がおかしかった。よほどBさんに心酔していなければ言えないことで、「その程度」という言葉では片付けられない深い結びつきを想像する。まあ、すでに紳助が引退したのだから1件落着、今度は一般人となった紳助がどこの誰と付き合おうが、法に反しない限り誰も文句は付けられない。が、こういった繋がりはなかなか切れるものではないといわれるだけに、これからの紳助の良識が問われることになろう。
今日の朝刊に、警視庁組織犯罪対策3課が近く吉本興業の関係者を呼び、一連の経緯について説明を求めることが分かったという記事があった。まだまだ騒動は終わらないようである。
諸行無常は世の常であるが、てっぺんに上り詰めたらあとは下りるだけ…。が、よもやこうしたは無様な幕引きで消えることになろうとは、紳助自身、想像もしなかったであろう。紳助が司会を務めていた番組は代役を立てて次々と収録を始めているという。紳助の引退で、若手芸人の中には「自分たちの時代が来た」と内心ほくそ笑んでいる者もいるだろう。ここにも世代交代が始まったようである。
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