いろはにぴあの(Ver.3)

ピアノを趣味で弾いています。なかなか進歩しませんが少しでもうまくなりたいと思っています。ときどき小さな絵を描きます。

スコット・ロス氏

2012年03月04日 | ピアノ・音楽

 前回の記事で紹介した平均律第2巻13番についての話題が、他にはないだろうかと思い検索をかけていたところ、なんと、この第2巻13番を十八番にされていた方がいた、という衝撃的な事実が分かりました。そんな奇特な(ちょっと偏見のある観方かもしれませんが、第2巻13番というのは、平均律の中では、あまり採りあげられることが多くないような気がするので。)スコット・ロス、という方はだれだろう、と調べてみたところ、ますます衝撃的な事実が発覚しました。カリスマ性のあるチェンバリストだったのです。彼ことスコット・ロス氏は、1951年にアメリカのヒッツバーグで生まれ、フランスやカナダで活躍しました。楽譜を見ずに、自分自身が作曲したかのような演奏をするということで、まわりに衝撃を与えたものの、エイズにかかり38歳の若さで亡くなってしまいました。父、母も早く亡くし、本人も非常に個性が強く孤高な存在でした。しかしその演奏は非常に生き生きとのびやかで美しく、もし病気にかからずに長生きしていたら、もっと世の中に大きな影響を与えたに違いないです。クープランのチェンバロ作品全曲やスカルラッティのソナタ全集を録音しましたが、今も高く評価されています。CDは廃盤がほとんどで、手に入れるとなったら現在は中古でしか手に入らず、しかも平均律などはびっくりするほど高価なのですが、それでも、いや、それだからこそ、もっと知られていい演奏家だと思います。今日、運よく安く手に入れることのできたスカルラッティの中古のCDを聴いたのですが、セクシーでかっこよくてぞくぞくしました。音楽の神にあまりにも好かれすぎてしまったのかもしれませんね。熱烈なファンがいるというのもうなづけます。彼をあつく讃えるサイトもあります。熱烈なファン、とまではいかないかもしれませんが、私にとっても、大好きな演奏家の仲間にはいりました。

 Youtubeでもいくつか動画が紹介されています。まずバッハから紹介します。残念ながら平均律の第2巻13番はなかったのですが、この小プレリュードの演奏も素敵です。この低音を歌いこみ、和声もがっちりつかんだうえに躍動感のある演奏にほれぼれしました彼のCDが手に入れにくくなっている現在、本当に、Youtubeというものがあってよかったです。

バッハの小プレリュードBWV999(すみません。後ほど判明した情報ですが、この録音は、スコット・ロスご本人ではなくて、お弟子さんがロスの授業のために、録音したものだそうです(汗汗))

 

 

神様に祝福されたような悦びあふれたスカルラッティです。この演奏もですが、彼のスカルラッティの演奏は天からまいおりてきたようなはじけるような演奏だと思いました。生命力あふれるはつらつした演奏。なんだかスコット・ロス、ひげを生やしたモーツァルトにも思えてきました。(ちょっと大げさ?)

スカルラッティのソナタK209 

 

最後に紹介したこの演奏、おすすめ動画です!ドラマチックできびきびした演奏からは壮大なスケールが感じられます。勇気が湧いてきそうです。K21の深みのある哀愁には心動かされずにはいられません。引き立てる音の表現の仕方が素敵すぎます。強弱がないはずのチェンバロの表現力を底をつくまで生かしたような気がします。腕を交差させたり音を微妙に伸ばしたりタッチを工夫したりしているのでしょうね。見事な音楽性を感じ取れます。ここで初めて聴いた曲なのですが本当にすばらしい曲&演奏ですね。K141は他の演奏も聴いたことがありますが、こんなにかっこいい演奏を聴いたのは初めてです。彼はオルガニストでもあったそうですが、オルガンの演奏というのも聴いてみたいものです。(録音あるのかしらん)そして、ピアノには強弱やペダルという便利なものがありますが、その便利さにべったりと寄りかかりすぎてはいけないな、と思った次第です。

スカルラッティのソナタK21とK141