歯が綺麗に見えている状態がインプラントなんじゃないのか、と言う何処かずれている認識が患者さん達の間に広まっているのかもしれないな、と思われる出来事が増えて来ています。
Yahooの知恵袋でインプラント関連での質問で、知り合いが綺麗な歯をしているが奥歯と色が違うからインプラントでしょうか?とか、有名芸能人とかモデルさんが綺麗な歯をしているがインプラントじゃないでしょうか?と言う不思議系の質問が同時期に載せられているんです。
何かずれているなー、と思わされる出来事でした。
綺麗な歯ならインプラントなのかも知れない、と言う興味を持つ、高額治療だから美容整形的に美を人為的に創り出すのがインプラント、と言う勘違いが一部で広まっているようです。
しかし、勿論この認識、捉え方は全く間違っています。
そもそもインプラントとは人工歯根にしか過ぎないもので、骨や歯茎の中に埋もれている部分であり、それに接合させて人工の歯を装着させる大元にしか過ぎないモノなんですから。
又、重要な事なのですが、審美を語る場合、現時点では人工歯だけが綺麗なのでは解決ではなく、歯茎の綺麗な見え方、形、ボリュームも非常に重要な要件に成っているのです。
つまり、歯だけ綺麗に造られていても、支えている歯茎、骨が美しくないと、専門家的には審美ではないのです。
そして、それを達成するには歯周病治療が非常に重要な鍵を握っています。
歯が幾ら綺麗でも、歯茎がブヨブヨで腫れていて、膿んでいるような状況ならそれは審美ではないのです。
又、インプラントだけを使って歯を再創造しても歯茎の完璧な審美を得るのは非常にハイレベルな治療であり、現時点でもまだまだ相当に難しい、とされています。
更に言えば、インプラントはあくまでも最低限用いて、咬合負担を支える強力な助っ人であり、部分入歯とかブリッジとかで残っている自分の歯に負担を余計に掛けるのが避けられる、と言うのがインプラントの最大の利点なのです。
更に言えば、その方がその患者さんのお口元に自然で、綺麗に見えるのです。
だから、何でもかんでも簡単に抜歯してインプラントにするのではなく、天然歯とインプラントの入り混じった歯列弓をどう再構築するか、審美的かつ機能的に仕上げるのか、が歯科医の腕の見せ所に成るのです。
つまり、腕のある先生ほど、歯を助けながらインプラントを要所要所に用い、歯列を綺麗に整え、勿論歯も綺麗に仕上げる事を標榜しているのです。
もう一度繰り返しますが、鍵は歯周病治療です。
見栄え、人工歯だけ幾ら綺麗に造って見せていても、支えている組織、歯茎、骨が綺麗なのかどうかが真の審美なのです。
それは歯周病治療のかなりハイレベルな実力が必要です。
いつも例に出しますが、石川先生の爽やかに切る、と言い切れるだけの境地、そこに到る事が、目指す事が、凄く重要なのです。
最近、総義歯治療で熱くなっていて、それも重要ですが、現実の手術とかで関係するのは歯周外科なんです。
ここがたいして出来ない先生が、インプラントに手を出してはいけません。
逆に患者さん達は、そこを見抜いて先生を選ぶべきです。
全部抜いてAll-on-4にすれば歯周病は関係ないだろう、は全くの間違いです。
歯が1本もなくなっても、インプラントが入ってメインテナンスが悪ければ、インプラント周囲炎、要するにインプラント周囲の歯周病に成ってしまうのです。
歯がないから歯周病は関係ない、は絶対に有り得ないのです。
そういう勘違いをしだしている患者さんが出るのが嫌なので、強調して置きます。
歯を守る為にこそ使うのがインプラント。
だから、必要最小限で充分足りる介入が正しいのです。
やたらめたら沢山の本数植立している治療方法は間違っている、と言う事です。
歯周病から逃れられるのは総義歯患者さんだけです。
でもそれでは嫌でしょ。
ですから、歯周病治療が全ての歯科治療のベースにあるべきなんだ、その強力な助っ人がインプラントなんだ、と理解して下さい。