キツツキのドラミング

思い付くまま, 気が付くまま・・

『写真の題名』についてのお話

2011-09-18 19:02:13 | Weblog

写真がフィルムからデジタルに変わったのは革命的だった。業界の競争で機材の進歩も目覚しく子供でも写せる、カメラもピンからキリまで選り取り見取り価格も右に習えだ。性能の向上は価格以上で一昔前ならプロでも難しかった瞬間なども素人がいとも簡単に撮れる。寿命が延びて元気な年寄りが多くなり閑があるし小銭もある。機材は良くなりデジタルはフィルムと比較して安上りだから気軽に撮れる。お陰でカメラのサークルが雨後の竹の子よろしくいくつも出来てシロウト写真展が盛んだ。公共施設や駅の通路などに展示している。街のギャラリーで開催しているグループもある。風景写真の前田真三氏が20数年前の写真集に書いている。「現在風景写真は、ひとつのブームを迎えている。特に最近カメラと感材が発達してくると『撮った風景写真』より『撮れてしまった風景写真』の方が多くなっているのが実情のようである。風景写真がうまくなる秘訣などというものはないと思うが、ただ、自分なりの発見ということをいかなる場合にも大切にしたいと私は常々考えている。風景写真の原点は、単純に美しいと感じたものに素直にカメラを向けるということである」蓋し正鵠を射ている。熱心なアマチュアがカメラ誌に投稿した写真の題名は割合被写体対して素直に付けているのだが、それが写真展になると思い入れが強いのか、写真を題名で幾らかでも観客に印象付ける算段か、力(りき)を入れ過ぎて頓珍漢、オーバーな表現が多いと感じている。甚だ困るのは意味不明な用語や誤字、日本語の誤用が気付かず堂々と展示しているのには見る方が赤面したくなる。世間でよく誤用される言葉で『他山の石』『情けは人の為ならず』『小春日和』などがある。先日の写真展で4月撮影の作品に『○○は小春日和』の題名が付いていた。『小春日和』の小春は旧暦10月の別名で今の11月であって『日和』とは晴天を指す言葉だから『小春日和』は晩秋のよく晴れた日のことであって俳句の季語では『冬』である。小春は古い言葉で約1400年前に編纂された中国の『荊楚歳時記』の10月の記事に『天気和媛にして春に似たり、故に小春と曰う』とあり、中国伝来の言葉だそうだ。英語では『Indian summer』といい、突然出没するインディアンに例えたようだ。さて前田氏の題名を見ると『春の野』『春の道』『ボケ鮮やか』『桃花』などと気負いがなく被写体に素直な表現である。写真は見るが人がどう感じるかであるから題名の虚仮威しや感傷に浸っても何ら役に立たない。逆に撮影地が判る題名の方が親切だろう。写真はオシロイバナ、下は彼岸花