ロバート・ハリス 後藤安彦訳 (新潮文庫)
《あらすじ》
スターリンが遺した秘密文書がある。死の直前、個人用金庫の鍵を奪った側近のベリアが中身を持ち出し、ある場所に隠したのだ―――。モスクワ滞在中の英国人歴史学者ケルソーは、ベリアの警備員だったという老人ラパヴァの突然の訪問を受け、その話に強い興味を覚える。しかしラパヴァはすぐに姿を消してしまった。裏にはロシア情報機関の暗躍が………?
歴史の闇をえぐった長編サスペンス。
「君もたまには普通の本が読みたいんじゃない?」と言って、K氏がこの本を貸してくれました。
《普通の本》って……何だ? 私が普段読むのもいたって《普通の本》なのだが……。と困惑を隠せませんでしたが、言いたいことはうっすらと分かります。いいでしょう、読んでみようじゃないですか。
私はひとから勧められた本をあっさり読んでみるようなことは滅多にありません。ですが相手がK氏ならば、話は別です。
驚くべきことに、私とK氏の趣味の一致率は90パーセントにも達するでしょうか。彼の好むもののうちで私が絶対に受け入れられないのは、村上春樹のみ(もう、とにかくダメなのです。『ノルウェーの森』しか読んだことはないけれど、どうしてもそれ以上読む気がしません)。一方、私が熱列に情熱を注ぐもののなかで彼の守備範囲でないのは、おそらく南米文学。ふたりとも、ロシアが好きであり、ストルガツキイにハマり、エレンブルグの『トラストDE』に衝撃を受け、私が先日慟哭した『フリオ・フレニトの遍歴』も彼に貸してあるので、きっと彼も何かただならぬものをそこから感じ取ることでしょう。
要するに、ここには信頼関係があるのです。
K氏が「まあまあ面白かった」というなら、きっと「まあまあ面白い」だろうと思います。
そういうわけなので、とにかく読んでみることにしました。あらすじを読む限りでは、なかなか面白そうではないですか。スターリンね、秘密文書ね、いいね、興味深いですよ。私は読む暇がないから読まないだけで、サスペンスやミステリーは嫌いではありません。
さて、読んでみてどうだったかと言えば、「まあまあ面白かった」です。やっぱり。
まず《スターリンの秘密文書》という題材に興奮します。物語の展開もドラマチックであり、登場人物の設定もなかなか上手く、なんと言っても、ロシアの一時代の状況を感じさせてくれるリアルな描写や歴史的事実の挿入具合が良い感じです。
そして、読みやすい。上下巻に分かれており、そこそこの分量はありますが、あっさり読み終えることができます。私の普段の読書ならば、この量には3、4倍の時間がかかるだろうというページ数ですが、どうやら私は読むのが遅いわけではないようです。遅いのは理解するスピードでした。この本は、こういう読み物としては当然そうあるべきように、とても理解しやすいので、私にもすんなり読めたというわけです。
テレビドラマなんかにすると、結構面白くなるのではないかという感じでした。テレビをつけっぱなしにしていたら、そこでやってたドラマが結構面白かった……という読後感です(さり気なく、ひどい言い様です)。こういう読書は久しぶりです。
それにつけても、K氏があえて《普通の本》と言った理由が分かるというものです。このブログの、いったいどのカテゴリーにこれを分類してよいのやら、さっぱり見当もつきませんでした。【サスペンス】を新たに増設すべきだろうか……いや、一冊だけになる可能性が高いしな……。うーむ。とりあえず【英米】に入れておきましょうか……。ハリスさんは、だって英国人だし……。
この作者のほかの作品では、「もし第二次世界大戦にドイツが勝利していたら」を前提に大ナチ帝国を描いた『ファーザーランド』というのが面白そうなので、いつか読むかもしれません。つーか、こっちのほうが面白そうだったな……。まあ、お楽しみは、あとにとっておくものなのです。
《あらすじ》
スターリンが遺した秘密文書がある。死の直前、個人用金庫の鍵を奪った側近のベリアが中身を持ち出し、ある場所に隠したのだ―――。モスクワ滞在中の英国人歴史学者ケルソーは、ベリアの警備員だったという老人ラパヴァの突然の訪問を受け、その話に強い興味を覚える。しかしラパヴァはすぐに姿を消してしまった。裏にはロシア情報機関の暗躍が………?
歴史の闇をえぐった長編サスペンス。
「君もたまには普通の本が読みたいんじゃない?」と言って、K氏がこの本を貸してくれました。
《普通の本》って……何だ? 私が普段読むのもいたって《普通の本》なのだが……。と困惑を隠せませんでしたが、言いたいことはうっすらと分かります。いいでしょう、読んでみようじゃないですか。
私はひとから勧められた本をあっさり読んでみるようなことは滅多にありません。ですが相手がK氏ならば、話は別です。
驚くべきことに、私とK氏の趣味の一致率は90パーセントにも達するでしょうか。彼の好むもののうちで私が絶対に受け入れられないのは、村上春樹のみ(もう、とにかくダメなのです。『ノルウェーの森』しか読んだことはないけれど、どうしてもそれ以上読む気がしません)。一方、私が熱列に情熱を注ぐもののなかで彼の守備範囲でないのは、おそらく南米文学。ふたりとも、ロシアが好きであり、ストルガツキイにハマり、エレンブルグの『トラストDE』に衝撃を受け、私が先日慟哭した『フリオ・フレニトの遍歴』も彼に貸してあるので、きっと彼も何かただならぬものをそこから感じ取ることでしょう。
要するに、ここには信頼関係があるのです。
K氏が「まあまあ面白かった」というなら、きっと「まあまあ面白い」だろうと思います。
そういうわけなので、とにかく読んでみることにしました。あらすじを読む限りでは、なかなか面白そうではないですか。スターリンね、秘密文書ね、いいね、興味深いですよ。私は読む暇がないから読まないだけで、サスペンスやミステリーは嫌いではありません。
さて、読んでみてどうだったかと言えば、「まあまあ面白かった」です。やっぱり。
まず《スターリンの秘密文書》という題材に興奮します。物語の展開もドラマチックであり、登場人物の設定もなかなか上手く、なんと言っても、ロシアの一時代の状況を感じさせてくれるリアルな描写や歴史的事実の挿入具合が良い感じです。
そして、読みやすい。上下巻に分かれており、そこそこの分量はありますが、あっさり読み終えることができます。私の普段の読書ならば、この量には3、4倍の時間がかかるだろうというページ数ですが、どうやら私は読むのが遅いわけではないようです。遅いのは理解するスピードでした。この本は、こういう読み物としては当然そうあるべきように、とても理解しやすいので、私にもすんなり読めたというわけです。
テレビドラマなんかにすると、結構面白くなるのではないかという感じでした。テレビをつけっぱなしにしていたら、そこでやってたドラマが結構面白かった……という読後感です(さり気なく、ひどい言い様です)。こういう読書は久しぶりです。
それにつけても、K氏があえて《普通の本》と言った理由が分かるというものです。このブログの、いったいどのカテゴリーにこれを分類してよいのやら、さっぱり見当もつきませんでした。【サスペンス】を新たに増設すべきだろうか……いや、一冊だけになる可能性が高いしな……。うーむ。とりあえず【英米】に入れておきましょうか……。ハリスさんは、だって英国人だし……。
この作者のほかの作品では、「もし第二次世界大戦にドイツが勝利していたら」を前提に大ナチ帝国を描いた『ファーザーランド』というのが面白そうなので、いつか読むかもしれません。つーか、こっちのほうが面白そうだったな……。まあ、お楽しみは、あとにとっておくものなのです。