The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

『ウッドストック行き最終バス』コリン・デクスター著

2019-07-28 | ブックレヴュー&情報
『ウッドストック行最終バス』 (ハヤカワ・ミステリ文庫)‐ 1988/11
”Last Bus to Woodstock”

コリン・デクスター(著)、大庭忠男(訳)
1975年原作初版

内容(「BOOK」データベースより)
夕闇のせまるオックスフォード。なかなか来ないウッドストック行きのバスにしびれを切らして、
二人の娘がヒッチハイクを始めた。「明日の朝には笑い話になるわ」と言いながら。―その晩、ウッ
ドストツクの酒場の中庭で、ヒッチハイクをした娘の一人が死体となって発見された。もう一人の
娘はどこに消えたのか、なぜ乗名り出ないのか?次々と生じる謎にとりくむテムズ・バレイ警察の
モース主任警部の推理が導き出した解答とは…。 魅力的な謎、天才肌の探偵、論理のアクロバッ
トが華麗な謎解きの世界を構築する、現代本格ミステリの最高傑作。

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 

とんでもなく今更なのですが、突然思い付きまして”モース”の原点に戻ってみようと思いつき
ました。
『ウッドストック行き最終バス』”Last Bus to Woodstock” はコリン・デクスターによる
”Inspector Morse”『主任警部モース』の第一作です。
「読んだんだけど詳細は覚えていない」が得意のフレーズなのですが、この作品に限っては全
く覚えていないんです。読んだのは間違いないのですが 兎に角大昔の事で。
なので、初心に帰っての読み直しです。

ドラマ版では、第一作目ではなく、S2のE4(1988年3月初放送)になっています。

このエピソードも全く覚えていないんですね。見た筈ではあるものの随分昔の事ですから・・・
(又言い訳)



因みに、ドラマは1987年から2000年まで全8シリーズ(33エピソード)構成で放送され、シャー
ロック・ホームズを凌ぐと言われた国民的人気ドラマでした。
日本でも何度も再放送されてました。
言わずもがなですが、
モース主任警部をジョン・ソウ
ルイス部長刑事をケヴィン・ウェイトリー
が演じています。 (ルイス若いです)

原作でのこの作品はモース主任警部がルイス部長刑事と相棒として初めて行動を共にする物語
でもあります。
それにしても、ルイスがモースより年上であったんですね。 ドラマの印象が強かったので 
ジョン・ソウとケヴィン・ウェイトリーの姿を重ねてしまうので、ルイスの方が若干年下であ
ると思い込んでいました。
もう一点、この作品では ドラマでもモースの代名詞であった”真っ赤なジャガー”ではなく、
愛車はランチアでした。 これも意外でしたね。

一癖もふた癖もあるモースが机上の論理を組み立て、仮説と検証を繰り返す。 数学やクロス
ワードの手掛かりや、文法の誤り等様々な手がかりを元に試行錯誤を繰り返すモースとルイス
の絶妙な掛け合い。2人の仮説、推理、論理の展開が実に細やかに描かれています。

科学捜査ではなく、大胆な仮説を元に推理し、挫折を繰り返し二転三転しながら次第に結末に
辿り着くというのがデクスター独特の魅力になっていると感じます。

モースは一癖も二癖もある一風変わった性格ではあるものの、捜査力に関しては一目置かれ
ており、それであるからこそ相棒となったルイスも引っ張り回され時に戸惑いながらモース
と共に行動する。
そして、質疑応答を繰り返す2人の会話に笑わされ、暴走にも思えるモースが最後に辿り着
く結末に驚き、哀しみも感じさせられることになります。

この作品でモースは自宅で脚立から転落し足を挫き自宅静養を余儀なくされます。
そんな一人暮らしのモースをルイスは日に何度も様子を見に訪れ何くれとなく世話をする
姿が微笑ましいし、ルイスの良い人振りも好ましいのです。
良き家庭人であり、常識人でありながら決して凡庸ではなく モースとは全く異なるある
種の天才でもあるルイスのキャラクターが魅力的で、この作品を見る限りルイスの方がお
気に入りになりそう。
スピンオフドラマの「ルイス警部」は本当に大好きで、もう繰り返し何度観る事か。
(尤も、この場合はハサウェイが大好きだからって事もあり・・・)

生涯独身を通したモースもこの時既に後頭部を気にする中年に差し掛かっています。
それにもかかわらず、女性に惚れっぽいし又若い女性にもモテるのです。
他の作品も読み直してみなければ分かりませんが、ドラマを観る限りにおいてもこの傾向が
続きますね。

そして、エピローグでのスウの言葉、「とうとう貴方のクリスチャンネームを教えて下さい
ませんでしたね」。
これが最初ですね。 モースはドラマでもずっとクリスチャン・ネームの”エンデバー”を
誰にも教えたがりませんでした。 
「貴方のクリスチャン・ネームは?」とか、「何とお呼びしたら良いの?」とか問われる
と何時も、”Just Morse” で通していました。
何たって、”Endeavour” は気恥ずかしくて言いたくないでしょうからねぇ。
それが、スピンオフの若いモースでのタイトルになった時は感無量というか複雑な感じを
抱いたもんでした。

これを機会に、モースの原作を続けて読み直しするつもりですし、ドラマも何時も途中が
抜けて居たり忘れたりしているので、機会を見つけてじっくり観直そうと思っている所で
す。
(但し、最終話のモースが亡くなるエピソードだけは何度も観た事があり、その都度胸が
痛くなるのですが・・・)

現在大人気の若モースも大好きですが、モースの原点(時代的には逆ですが)に触れて観る
事もお薦めします。

尚DVDも出ていますので、こちらも参考になさって下さい。

Box1 & 2