【難航する自治体の仮置き場確保】 除染前進へ、苦肉の策より転載
2012年1月 7日 | 福島民報

石川町に設けられた仮置き場。写真奥の建物内に汚泥などが運び込まれている。
県内の多くの市町村が放射性廃棄物の仮置き場設置が難航する中、"苦肉の策"で除染をより推進する自治体が出てきた。郡山市は住民の理解を得やすいよう、小学校の61学区単位で市有地への仮置きを提案。石川町はスピードを優先して住民代表のみに説明し、町総合運動公園内に設置した。ただ、住民からは「中間貯蔵施設の見通しがはっきりせず、仮置きの長期化が心配」との不安も漏れる。
■試行錯誤
郡山市は原発事故発生から間もない昨年4月、校庭や園庭の除染による表土を他地区の埋め立て処分場に搬入しようとしたが、周辺住民が反発し断念した苦い経験がある。
しかし、市内の放射線量は比較的高い。除染活動を進めるには、速やかな仮置き場の確保が必要不可欠だ。「地区から出た土砂などは、同じ地区内で保管するしかない」。試行錯誤の結果、市有地を保管場所として、他地区に搬入しないことが住民理解を最も得やすいと判断した。
土砂などが入った専用袋に防水シートなどを三重に敷き、地表から深さ30センチ分の土をかぶせる。市はこれまでに設置した仮置き場の数を公表していないが、担当者は「他の自治体に比べかなりスムーズに進んでいる」と成果を強調する。
一方、石川町では昨年11月から行政区単位で除染作業が始まった。町は仮置き場を早急に設置する必要があったため、事前に大規模な住民説明会は開かず、行政区長らに説明するにとどめ、汚染物質を搬入する小屋の建設に踏み切った。
小屋は横幅約31メートル、奥行き約10メートルの平屋で、900立方メートル程度の搬入が可能。周辺の空間線量を定期的に測定し地元の行政区長に伝えているが、小屋から2メートル離れた場所では町内の空間線量と同程度だという。町の担当者は「小屋はすでに3割程度埋まっているが、新年度の除染作業で出る汚染物質には十分耐えられる」と、一層の除染の進捗(しんちょく)を期待する。
■懸念
郡山市、石川町とも懸念材料がなくなったわけではない。
郡山市では、依然として住民の反対が根強い地区もある。ある地区では住民から設置の同意が得られず、区長会の男性役員が、所有する田畑に除染で発生した汚泥を埋設した。男性役員は「住民の説得は難しい。もっと市が協力してくれるといいのだが...」と不満そうな表情を浮かべた。
仮置き場への理解が十分に浸透しなければ、市内に空間線量の高い地区と低い地区が混在することになりかねない。市の担当者は「住民の理解を得られるよう努力するしかない」と課題を口にする。
石川町でも、理解を示す住民がいる一方で懸念の声が聞かれる。「(仮置き場がある)公園では子どもたちが遊び、学生が運動している。心配になる」。公園付近に住む無職男性は本音を漏らした。
また、町は住民に対し仮置きの期間について、国が中間貯蔵施設を建設するまでの3年間と説明している。この住民との約束は守られるのか...。町の関係者の胸中は複雑だ。「国を信じて頑張ってもらうだけだ」
■予算あるのに...
放射性物質汚染対処特別措置法に基づき汚染状況重点調査地点に指定された県内40市町村の除染費用は、昨年の国の二次補正で予算化され、県の基金に1843億円が繰り入れられている。
財政支援の態勢は整ったものの、市町村によっては仮置き場問題が解決せず、除染が停滞している状況だという。多くの市町村が仮置き場選定で住民理解が得られていない状況に、環境省福島環境再生事務所の担当者は表情を曇らせた。「除染を進めるためには、仮置き場の設置が不可欠だ。われわれが出向いて住民に説明するには人手が足りない」
【背景】
放射性物質汚染対処特別措置法により、警戒区域と計画的避難区域の11市町村は国が直接除染する。年間の追加被ばく線量が1ミリシーベルト以上の地域を抱え、汚染状況重点調査地域に指定された40市町村は、国の財政支援を受け、除染実施計画を策定した上で作業に入る。国は計画に仮置き場設置を盛り込むよう求めている。福島民報社の調べによると6日現在、自治体が主体となって1カ所以上の仮置き場を確保できたのは40市町村のうち、福島、郡山、いわき、相馬、二本松、伊達、石川、大玉の八市町村。他の市町村では難航している。