【食品】在日フランス人向け公報・IRSN「引き続き、食品の汚染に注意」(12月12日発表)より転載
1. 食品汚染の状況
今日、放射能による汚染の可能性があるのは次の食品群である。
・ 放射性降下物が降った3月の時点で葉がついていた植物からなる食品類(例:茶をはじめとする常緑樹、柚子、および刺のある小低木になる果実類)、
・ 同じく、事故当時に花が付いていた果実類(例:桃などの早咲きの花をつける果実類)。
<参考>「刺のある小低木になる果実類」には、ブルーベリー、レモンなどが含まれます。参考写真はこちら:http://www.google.co.jp/search?q=arbuste+épineux&hl=ja&client=safari&rls=en&prmd=imvns&tbm=isch&tbo=u&source=univ&sa=X&ei=F7iFTrzzBoncmAXKyfUE&ved=0CB4QsAQ&biw=1259&bih=636
・ 汚染された土壌で生産された野菜類
・ 汚染された草や藁で育成された動物からなる食品(特に、牛乳および肉)
・ 海産物については、福島第一原発近郊の海底に蓄積した放射性物質により、海藻類や魚介類への汚染が継続している。
1.1 10月と11月の食品汚染 概況
土壌で生産される野菜類については、全般的に汚染度が下がる傾向が見られた。しかし下記のものについては、日本政府が設定した出荷基準、および摂取基準を超えるものが見つかっている。
(※がついたものは、該当県内の複数の地域において出荷制限の対象となっている)
・ 福島県において生産された柚子(※)、キウイフルーツ、柿、ザクロ
・ 東京都および埼玉県で生産された精製済み茶葉、および神奈川県で生産された茶の生葉(※)
・ 福島県で生産された乾燥ハーブ類(ドクダミ茶)
・ 福島県で生産されたわさび
・ 海・湖・川で取れた特定の魚介類(ワカサギ、エイ、メバル、マコガレイ、アイナメ、オヒョウなどの海の魚、および福島県・秋元湖で穫れた鮭)
・ 温室栽培・露地栽培・野生を問わず、福島県(※)、千葉県(※)、宮城県、茨城県(※)、栃木県(※)、神奈川県、長野県、静岡県の各県で栽培されたキノコ類
・ 福島県と宮城県産の牛(※)
・ 福島県と栃木県のイノシシ、鹿、および熊の肉
・ 福島県の米と宮城県産の糠(ぬか)
・ 以前、基準値を超える汚染が見つかったタケノコや梅についての検査結果は発表されなくなっているが、生、乾燥、缶詰などの形で市場に出回る可能性がある。
1.2 米への汚染に関する注意点
・ 日本政府は土壌におけるセシウムの汚染が1キロあたり5000ベクレル未満の場合にのみ稲作を認めている。国際的な文献によれば、このレベルの汚染がある 土壌から籾(もみ)に移行するセシウムの最大値は理論上1キロあたり300ベクレルとされている。(参考:前回は、以下に「しかし、事故が起きた原子力発 電所の近辺で栽培された籾に理論値以上の汚染度のものが現れる可能性は否定できない。」が追記されている)
・ 日本政府は、放射性セシウムによる土壌の汚染度が1キロ当たり1000ベクレル以上、もしくは土地の放射線量が毎時0.1マイクロシーベルト以上の主に東北と関東の自治体において、米の収穫1週間前と収穫後の二段階にわたる検査を義務づけている。
・ 収穫前に実施される米の抜き取り検査で放射性セシウムの含有量が1キロ当たり200ベクレルを超えた場合には、該当地域は検査の優先対象地域に指定され、 収穫後の米について比較的多くのサンプルの抜き取り検査が実施される。しかし1キロ当たり200ベクレルを下回った場合には少数のサンプルについてのみ収 穫後の検査が実施される。
・ こうした日本政府による検査体制には限界が見られる。福島市では、収穫前の検査で米1キロ当たりにつき136ベクレルの放射性セシウムしか検出されなかっ たのに対し、収穫後には検査の対象となった2つの田のうちの1つで、1キロ当たり630ベクレルの汚染が見つかった。収穫前と収穫後の検査の間に米が熟成 し米粒が乾燥することにより、自然と放射性セシウムの含有量が上昇することが考えられる。
・ 収穫前の検査では放射性セシウムによる汚染を十分に把握できないことから、こうした検査体制には不安が残る。(現在、)複数の自治体が日本政府に対し、全ての米を検査するよう求めている。
・ 米における放射能汚染は主に籾殻(もみがら)に溜まる。従って、白米への精製の過程で汚染度はより低くなる。逆に、糠(ぬか)については米に含まれる放射性セシウムの主要部分が含まれている。糠はそのまま食される、もしくは家畜の餌として使用されうる。
・ 一般に、米は精製の過程で種々のものが混ぜられるため、検査の対象となっている白米は異なる複数の田から収穫された米の混合物である可能性がある。このため米全体の汚染は薄められ、市販される米の汚染度は下がる可能性がある。
2. 日本に住むフランス人一般への食品汚染に関する勧告
日本で実施されている食品の放射能汚染に関する検査では、野菜に関する汚染度が全般的に低下しているように見える。しかし福島第一原発における事故 によって発生した放射性降下物の被害を強く受けた県の生産物については、引き続き厳重な注意が必要である。IRSNは下記を勧告する。(前回からの追加点 は下線で表示しています)
・ 3月11日以降、基準値を超える放射能汚染が見つかっている県(福島、栃木、茨城、宮城、群馬、埼玉、東京、神奈川、千葉の各県)で生産された、柚子、イチジク、柿、ざくろ、キウイフルーツなどの果物類、およびキノコ類を避ける。もしくは、汚染度が基準値を超えないことが確認されている食品のみを摂取する。
・ 缶詰や乾燥食品などの保存食のうち、特に茶、ハーブティー(注:ドクダミ茶等を指していると思われます)、タケノコ、梅、柿を含む食品については、生産日が原発事故の発生前であることを確認する、もしくは出荷制限のかかっている地域外で生産されたものであることを確認してから摂取する。
・ 米については、可能な限り特定の産地のものに偏らないよう注意し、福島、宮城、栃木、茨城の各県で生産された糠(ぬか)を摂取しないこと。
・ 生産地や放射線濃度が分からない食品については、日常的な摂取を控える。
・ 収穫されたばかりの生産物は、市場に出たばかりで汚染値に関する検査が発表されていないことから、摂取をさけること。
・ 海産物については、特にイカナゴ、ワカサギ、エイ、メバル、マコガレイなどの海魚、および鮎、鮭などの川魚、海藻、その他の魚介類について、汚染度が基準値を超えていないことを確認する、もしくは西日本の海でとれたものであることを確認してから摂取すること。
・ 牛肉については、検査を経たもののみを摂取する。また、可能な限り生産者が全ての製品について検査を行っている質の高い肉を選ぶこと。
・ 森林地帯に住む野生動物の肉(イノシシ、鹿)を摂取しない。
3. 放射性降下物の影響が最も高い地域(福島周辺の4県)に渡航する可能性のある者、および現地に居住する者への勧告(前回からほぼ変更無し)
・ IRSNは、宮城、茨城、栃木、そして特に福島県が福島原発事故による放射性降下物の深刻な被害を被ったと考えている。立ち入り禁止区域を除く福島、宮 城、茨城、栃木については、業務上の渡航および重要な所用がある場合には、下記の注意事項を全て遵守することを条件に渡航することができる。しかし不要に 放射能による被曝を受けることを避けるため、趣味や旅行などの重要な所用以外での渡航は控えること。
・ 日本政府が立ち入りを禁止している福島原発から半径20キロメートルの地域及び葛尾村、浪江町、飯舘村、川俣町の一部、南相馬市の一部には決して立ち入らないこと。
4. 宮城、茨城、栃木、福島の4県に居住するフランス人への勧告事項(前回からほぼ変更無し)
・ 汚染度に関する検査が実施されていない自宅の家庭菜園から収穫した野菜や、家庭で飼っている家畜動物を食用に用いるのを最大限に控える。
・ 土壌に触れた野菜や果物については、食べる前に注意してよく洗うこと。
外部から建物の内部に汚染物質を持ち込まないよう、家庭での衛生状態を良好に保つようつとめること。特に、下記に注意する。
・ 雨の日は靴を家の中に持ち込まない。
・ 濡れた雑巾で床を定期的に拭く。
・ 家具、カーペット、敷物の表面に定期的に掃除機をかける。掃除機の中袋を定期的に交換する。
・ 無意識に手が口に触れて汚染が起きないよう、ポンプ式容器に入った液体石けんで手を定期的に洗う。
・ 幼い子どもが遊んでいて戸外の土や砂の粒を口にいれないよう、常に見張っていること。
IRSN「福島第一原発事故に関する公報(8)」 12月12日号(仏文)
http://www.irsn.fr/FR/Actualites_presse/Actualites/Documents/IRSN_Residents-Japon_Bulletin8_12122011.pdf
(2011年12月25日 14:15)