2011年11月3日
放射能汚染水中のセシウムを安全に閉じ込めるナノ吸収剤を開発 ― 豪クイーンズランド工科大ら
カテゴリー: ナノテクノロジー, 原発・放射能, 新材料 ― SJN @ 2:24 PM
クイーンズランド工科大 化学教授 Huai-Yong Zhu氏 (Photo:QUT Marketing and Communication/Erika Fish)
クイーンズランド工科大学の研究チームが、汚染水から放射性物質を除去可能な新材料を開発したとのこと。原子力災害後の除染作業に役立つ技術として注目されます。数百万トン規模の大量の放射能汚染水をどのようにして浄化するのか、高濃度汚染物質をどうやって安全に保管するのかといった問題の解決の糸口になる可能性もあります。
研究リーダーの化学教授 Huai-Yong Zhu氏によると、新しく開発された材料は、チタン酸塩ナノファイバーおよびナノチューブを用いた世界初の吸収剤であり、現在の層状粘土やゼオライトによる浄化処理と異なり、汚染水に含まれる有害な放射性物質を効果的に閉じ込めることができるといいます。
使用後の吸収剤は、漏出のリスクがなく安全に廃棄可能。吸収剤が濡れた状態でも大丈夫だとしています。
「1グラムのナノファイバーで、少なくとも1トンの汚染水が浄化可能」とZhu氏。「これにより、貯蔵が必要な有害汚染水の量を大幅に減らすことが可能。また、汚染物質が土壌中へ漏出することを防ぐこともできる」と話しています。
チタン酸塩ナノチューブおよびナノファイバー (Photo:QUT Marketing and Communication/Erika Fish)
この技術は、クイーンズランド工科大、豪州核科学技術機構(ANSTO)、米国ペンシルバニア州立大が共同開発したもの。微細なナノチューブとナノファイバーで汚染水をろ過し、放射性セシウムイオン(Cs+)を捕捉するとしています。
研究チームは、この技術が鉱業や医薬品など、様々な産業にとっても有用であると考えています。例えば、酸化銀のナノ結晶を材料の外表面に添加することによって、ナノ構造が放射性ヨウ素イオンを捕捉し、固定化する能力を持つようになります。放射性ヨウ素は、原発事故による放射能漏れで検出されるだけでなく、甲状腺癌の治療や、医療診断用のプローブや標識としても使われています。
「放射性物質を吸収剤に取り込むだけでは不十分だ、というのが私たちの考えです。廃棄する前に安全なものにしておくべきなのです。同じことは、オーストラリアのウラン採掘場についても言えます。手遅れになってから処置方法を探すのではなく、問題が発生する前に解決策を用意しておく必要があるのです」
世界のエネルギー需要に対応するための代替手段を見つける必要性が高まっている中で、今こそ予防安全策の導入を進めるべき時だとZhu氏は言います。
「フランスでは、電力の75%を原発が賄っています。人口1000万人のベルギーにも、6基の原発があります。もしも私たちが原子力を選択しないと決めるとしても、すでに生成されてしまった放射性廃棄物を浄化し、安全に保管していく必要性は依然としてあるのです。オーストラリアは、チタン酸塩ナノファイバー/ナノチューブ吸収剤の原料であるチタンの世界有数の生産国です。今回新しい吸収剤の製造技術に関する知識を得たことで、私たちは、この世界を浄化するための技術を手にしたと言えます」
(発表資料)http://bit.ly/tCIA5Z
放射能汚染水中のセシウムを安全に閉じ込めるナノ吸収剤を開発 ― 豪クイーンズランド工科大ら
カテゴリー: ナノテクノロジー, 原発・放射能, 新材料 ― SJN @ 2:24 PM
クイーンズランド工科大 化学教授 Huai-Yong Zhu氏 (Photo:QUT Marketing and Communication/Erika Fish)
クイーンズランド工科大学の研究チームが、汚染水から放射性物質を除去可能な新材料を開発したとのこと。原子力災害後の除染作業に役立つ技術として注目されます。数百万トン規模の大量の放射能汚染水をどのようにして浄化するのか、高濃度汚染物質をどうやって安全に保管するのかといった問題の解決の糸口になる可能性もあります。
研究リーダーの化学教授 Huai-Yong Zhu氏によると、新しく開発された材料は、チタン酸塩ナノファイバーおよびナノチューブを用いた世界初の吸収剤であり、現在の層状粘土やゼオライトによる浄化処理と異なり、汚染水に含まれる有害な放射性物質を効果的に閉じ込めることができるといいます。
使用後の吸収剤は、漏出のリスクがなく安全に廃棄可能。吸収剤が濡れた状態でも大丈夫だとしています。
「1グラムのナノファイバーで、少なくとも1トンの汚染水が浄化可能」とZhu氏。「これにより、貯蔵が必要な有害汚染水の量を大幅に減らすことが可能。また、汚染物質が土壌中へ漏出することを防ぐこともできる」と話しています。
チタン酸塩ナノチューブおよびナノファイバー (Photo:QUT Marketing and Communication/Erika Fish)
この技術は、クイーンズランド工科大、豪州核科学技術機構(ANSTO)、米国ペンシルバニア州立大が共同開発したもの。微細なナノチューブとナノファイバーで汚染水をろ過し、放射性セシウムイオン(Cs+)を捕捉するとしています。
研究チームは、この技術が鉱業や医薬品など、様々な産業にとっても有用であると考えています。例えば、酸化銀のナノ結晶を材料の外表面に添加することによって、ナノ構造が放射性ヨウ素イオンを捕捉し、固定化する能力を持つようになります。放射性ヨウ素は、原発事故による放射能漏れで検出されるだけでなく、甲状腺癌の治療や、医療診断用のプローブや標識としても使われています。
「放射性物質を吸収剤に取り込むだけでは不十分だ、というのが私たちの考えです。廃棄する前に安全なものにしておくべきなのです。同じことは、オーストラリアのウラン採掘場についても言えます。手遅れになってから処置方法を探すのではなく、問題が発生する前に解決策を用意しておく必要があるのです」
世界のエネルギー需要に対応するための代替手段を見つける必要性が高まっている中で、今こそ予防安全策の導入を進めるべき時だとZhu氏は言います。
「フランスでは、電力の75%を原発が賄っています。人口1000万人のベルギーにも、6基の原発があります。もしも私たちが原子力を選択しないと決めるとしても、すでに生成されてしまった放射性廃棄物を浄化し、安全に保管していく必要性は依然としてあるのです。オーストラリアは、チタン酸塩ナノファイバー/ナノチューブ吸収剤の原料であるチタンの世界有数の生産国です。今回新しい吸収剤の製造技術に関する知識を得たことで、私たちは、この世界を浄化するための技術を手にしたと言えます」
(発表資料)http://bit.ly/tCIA5Z